
第一三共ヘルスケアは、毎年、働く人の「健康とセルフケアの実態調査」を行っている。同調査は、自分自身で健康を守り対処する「セルフケア」という考え方が、健康寿命世界一の長寿国である日本において重要なテーマになることを見据えたもの。
今回は、現役ビジネスパーソンを対象としたセルフケアの定点調査に加え、4月から就職予定の学生(以下、新社会人)を対象にセルフケアに対する意識や新社会人生活への意欲や不安を調査した。
同調査結果から、ビジネスパーソンはセルフケアに関しての認知率、実践率、費用はいずれも前年より上昇し、ワークライフバランスがとれているビジネスパーソンは仕事も趣味も充実していることが分かった。また、新社会人には次のような“二刀流”傾向が見えてきた。健康とセルフケアの実態調査2025の調査概要、調査結果の詳細は次の通り。
【調査概要】
◆実施時期:2025年2月6日(木)~9日(日)
◆調査対象:ビジネスパーソン=全国の20〜60代の働く男女1,000人 新社会人=2025年4月に就職予定の学生(大学生・大学院生、短大生、専門学校生、高校生)男女100人
◆調査手法:インターネット調査
◆調査委託先:楽天インサイト
【調査結果の詳細】
1、新社会人のセルフケア実態
この春、新社会人となる学生100人に、「セルフケア」(自分自身で健康を守り対処すること)に関する調査を行った。あわせて、20〜60代の現役ビジネスパーソン男女1000人にも同様の質問を行っている。
自分自身で健康を守り対処するセルフケア、新社会人の81.0%が認知し、53.0%が実践。ビジネスパーソンに比べ、新社会人はセルフケアの認知率も実践率も高い。
新社会人にセルフケアという言葉の認知を聞くと、81.0%が「知っている」と答え、現役ビジネスパーソンの認知率77.5%と比べ3.5ポイント高くなっている[図1]。
また、「セルフケアとは、自分自身で健康を守り対処すること」と提示した上で、自身のセルフケアができているかを聞くと、新社会人の53.0%が「できている」と答え、ビジネスパーソンの実践率46.9%と比べ、6.1ポイント高くなっている。なお、新社会人がセルフケアにかけている1カ月の費用は平均で3126円でした[図2]


新社会人の約8割が「セルフケアの重要性が増す」「セルフケアのために市販薬は役立つ」と考え、「市販薬の知識をもっと増やしたい」と希望。社会人になったら「今以上にセルフケアに取り組みたい」。
セルフケアに対する意識を聞くと、新社会人の76.0%が「今後日本ではセルフケアの重要性が増すと思う」、78.0%が「セルフケアのために市販薬は役立つと思う」と答え、73.0%が「セルフケアのため、市販薬についてもっと知識を増やしていきたい」と答えている。
新社会人の多くがセルフケアの重要性や市販薬がセルフケアに役立つことを認識し、市販薬の知識をもっと身に付けたいと感じているようです[図3]。
さらに、社会人になってセルフケアをどうしたいかについては、79.0%が「今以上にセルフケアに取り組みたい」と答え、4月からの社会人生活でも今まで以上に積極的にセルフケアに取り組むことを望んでいまる[図4]。


2、4月以降の新社会人の仕事・生活予報
就職先選びは仕事内容よりワークライフバランスを重視、ライフとワークの“二刀流”に。
新社会人に仕事観について聞いた。まず、就職先を選ぶ際に重視したことを聞くと、「給与」(52.0%)、「勤務地」(47.0%)に次いで、「ワークライフバランス」(45.0%)と回答した人が3番目に多くなっている[図5]。
また、4月からの社会人生活で不安なことを聞くと、ワークライフバランスが保てるかどうか、自分のプライべート時間が減ることなどの「ワークライフバランス」(56.0%)を挙げた人が最も多くなっている[図6]。
一方、就職先を選ぶ際の重視点として、新社会人の43.0%が「仕事内容・仕事へのやりがい」を重視し[図5]、47.0%が 社会人生活で「仕事内容」に不安を感じている[図6]。


新社会人の約8割が自社に“ウェルビーイング企業”を熱望。現役ビジネスパーソンより約20ptも高い。“ウェルビーイング企業”として期待するのは、「ワークライフバランス推進」「働きやすい職場の雰囲気づくり」。
従業員の心身の健康や幸福、生活の質を重視し、働きやすい環境を提供する企業のことを“ウェルビーイング企業”と呼びます。自分の会社に“ウェルビーイング企業”であることを求めるかと聞くと、新社会人の81.0%が「求めている」と答え、現役ビジネスパーソン(62.2%)より18.8ポイントも高くなっている[図7]。就職先のウェルビーイング施策として期待することを聞くと、「ワークライフバランスの推進」(55.0%)、「働きやすい職場の雰囲気づくり」(50.0%)を期待する声が大きくなっている[図8]。


新社会人の理想の働き方は「コツコツ」「さくさく」がツートップに! 堅実、効率よく働きたい。
4月からの希望する働き方について、六つの擬態語の中から一つだけ選んでもらうと、「コツコツ」(40.0%)が最も多く、次いで「さくさく」(21.0%)となった。
「ばりばり」(10.0%)や「がつがつ」(5.0%)は少なく、かといって「ゆるゆる」(7.0%)でもない、真面目にコツコツと堅実に努力を続ける、あるいは、仕事をさくさくと効率的に進める働き方をしたいと思う人が多いようだ[図9]。

新社会人の4人に1人が初任給を「セルフケアに使いたい」と回答。
新社会人に初任給を生活費以外でどんなことに使いたいかと聞くと、「自分へのご褒美」(47.0%)や「親への感謝を示すなど親や家族のために使う」(46.0%)といった意見が多くなっているが、4人に1人は、自分自身の健康を守り対処する「セルフケア」(25.0%)に使いたいと答えている[図10]。
社会人になってからも、「今以上にセルフケアに取り組みたい」と考える今春の新社会人、初任給でセルフケア投資をする人も少なくないようだ。

3、ビジネスパーソンのセルフケア実態
ここからは20〜60代の現役ビジネスパーソン男女1,000人を対象とした調査結果です。これまでの結果と比較してみた。
ビジネスパーソンのセルフケア認知率は77.5%とさらに浸透。セルフケアの対象範囲として「からだ」を含めると回答したビジネスパーソンが約8割に。
セルフケアという言葉について聞くと、ビジネスパーソンの77.5%が「知っている」と答えた。2024年の認知率(75.8%)から微増となり、日本のビジネスパーソンのおよそ8割がセルフケアという言葉を認知している[図11]。
また、セルフケアの対象となる範囲を聞くと、「からだ」が81.1%、「こころ」が86.8%となり、「こころ」と回答した人の方が多くなっている。だが、経年で変化を見ると、「こころ」と答えた人は横ばいであるが、「からだ」と答えた人は増加している[図12]。


ビジネスパーソンのセルフケア実践率は46.9%、セルフケアにかける費用は月額平均4,428円。実践率もかける費用も増加傾向に。
「セルフケアとは、自分自身で健康を守り対処すること」と提示した上で、自身のセルフケアがどの程度できているかを聞いた。すると、ビジネスパーソンの46.9%が「セルフケアができている」と答え、2024年(44.4%)から2.5ポイント増えている。年代別に見ると、20代と60代は55.0%と、全体平均より8.1ポイント高くなっている[図13]。
また、セルフケアにかける1カ月の費用を聞くと平均で4428円となり、2024年(4,173円)と比べ255円増えている。年代別で見ると、60代が5732円と最も高く、次いで20代が4488円となっている。60代は昨年に比べ1392円も増えている[図14]。

ビジネスパーソンがセルフケアを意識して行うことTOP3は「睡眠」「朝食」「3食きちんと」。
ビジネスパーソンにセルフケアを意識して行っていることを聞くと、「十分な睡眠をとる」(40.8%)、「朝食をきちんと食べる」(40.1%)、「1日3食、きちんと食べる」(38.6%)、「野菜を多く摂取する」(37.0%)が上位となり、 新社会人もほぼ同様の傾向が見られた[図15]。

ワークライフバランスがとれているビジネスパーソンは仕事も趣味も充実、セルフケア実践度も高い。
今春の新社会人はワークライフバランスを重視する傾向が見られたが、現役ビジネスパーソンの実態はどうなのか、探ってみた。
ビジネスパーソンに現在のワークライフバランスを聞くと、ワークライフバランスが「とれている」59.9%、「とれていない」40.1%であった(①)。
このワークライフバランス別に仕事のやりがいや趣味について聞くと、どちらもワークライフバランスがとれていると答えた人の方がスコアが高くなっている。ワークライフバランスがとれている人の方が、仕事にやりがいを感じ、趣味も楽しめているようだ(②)。
また、セルフケアについてもワークライフバランスがとれている人は実践率が61.1%と高く、ワークライフバランスがとれていない人(25.7%)の2.4倍も高くなっている(③)。



◆新社会人の「グラグラワーク現象」と対処法
産業医・鄭理香氏

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和で相乗効果をもたらす働き方。
今回の調査結果から、今春の新社会人はワークライフバランスをとても重視していることが分かった。ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和」という意味で、ご自身が望むバランスで両者を充実させながら調和をとることで相乗効果が期待できる。
新社会人を襲う4月の「グラグラワーク現象」とは? 慣れない環境でバランスを崩してグラグラに。
新生活が始まる4月、新社会人にとってはさまざまな環境が大きく変わる時期である。学生時代には受動的で許されていたことも、社会人としてのルールに沿った上で能動的な時間の使い方が求められる。
さらに、新しい仕事や幅広い年齢層にまたがる新しい人間関係など、それまでに経験したことがない大きな変化に直面する。その変化に対し、新社会人の多くは頑張って乗り切ろうと努力する。今の自分がどうなっているのか、仕事と生活のバランスがとれているのかも分からないまま、試行錯誤しながらとにかくがむしゃらに頑張り続けてしまう。慣れない環境の中で仕事と生活のバランスがうまくつかめず、心身共に不安定でグラグラしてしまう「グラグラワーク現象」に陥りやすい時期である。
新社会人必携! 「グラグラワーク現象」を回避するための、セルフケアの「さ・し・す・せ・そ」。
適応しようと過剰に頑張り続ける状態を医学的には“過剰適応”と呼ぶが、グラグラのまま“過剰適応”を続けると、ゴールデンウィーク明けにいわゆる「五月病」に陥ってしまう場合もある。
そんなことにならないよう、この時期に心がけたいことがセルフケア。頑張り過ぎな「グラグラワーク現象」への対策として、セルフケアの「さ・し・す・せ・そ」をオススメしたい。 何か特別なことをするのではなく、毎日の生活の中で、プチ気晴らしを少しずつ意識して続けることがポイントである。
さしすせそ
新社会人を迎える先輩社会人もセルフケアマインドで! その心配りが“ウェルビーイング企業”へ。
今春の新社会人はセルフケアマインドが高いという調査結果も出ているが、彼らは学生時代にコロナ禍を経験しているので、自分で自分をケアしたり、大切にすることが身に付いているのかもしれない。それは現役社会人の方も同様で、効率的に働いて無駄な残業をしないとか、ちゃんと休むとか、自分で自分を大切にする意識が高まり、実践されているように感じる。
そんな先輩社員の人たちが新社会人を迎えるに当たり、気を付けていただきたいことは、まずは話しやすい雰囲気をつくること。仕事中になりがちなしかめっ面をやめて穏やかな表情にするだけでも、新社会人は仕事中に先輩に話しかけて大丈夫なんだとホッとできまる。その安心感が新社会人の緊張感をほぐし、自分をいたわるセルフケアへとつながる。
第一三共グループでは「ワークライフサイクル」、つまり、バランスを保った生活を循環させる・維持させることが重要と考え、取り組みを行っているが、今、生き生きと働きやすい“ウェルビーイング企業”が求められている。そんな職場になるためには、上司も部下も一人一人がセルフケアできる環境づくりが大切です。新社会人も現役ビジネスパーソンの皆さんも、職場全体がセルフケアをしていただき、誰もが生き生きと働きやすい・相談しやすい職場となることが、“ウェルビーイング企業”への第一歩につながる。