サノフィは20日、「サークリサ」(一般名:イサツキシマブ、遺伝子組換え)について、多発性骨髄腫一次治療における適応追加承認を、同日、取得したと発表した。
適応症は、未治療の多発性骨髄腫患者を対象としたボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(BLd)。
多発性骨髄腫は、血液腫瘍のなかでは世界で2番目(日本では3番目)に多い疾患である。多発性骨髄腫の治癒につながる治療法がなく、新たに多発性骨髄腫と診断された患者の5年生存率は推定52%といわれている。
がん治療において、骨髄腫の患者は後続ラインでの治療奏効を維持することが難しいケースが多く、ファーストラインの治療は特に重要となる。今回の承認により、サークリサは再発または難治性の患者に加え、未治療の多発性骨髄腫の患者に対する新たなファーストラインの治療選択肢となる。
サークリサは、多発性骨髄腫の腫瘍細胞表面に高頻度かつ一様に発現している CD38 受容体の特異的エピトープを標的とするモノクローナル抗体製剤だ。日本では2020年8月に発売し、現在、①再発又は難治性の多発性骨髄腫におけるポマリドミド・デキサメタゾン併用療法、②サークリサ単剤療法、③カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法、④デキサメタゾン併用療法ーの4種類の治療レジメンで承認を取得している。
今回承認されたIsaBLd について、日本で昨年5月14日に製造販売承認事項一部変更承認申請をした。IsaBLdは、米国、ブラジル、EU、中国では既に承認されている。
今回の承認は、ランダム化非盲検国際共同P3試験(IMROZ試験)の肯定的な結果に基づくもの。同試験は自家造血幹細胞移植が適応とならない未治療の多発性骨髄腫患者446例(日本人患者25 例を含む)を対象に、ボルテゾミブ、レナリドミド、及びデキサメタゾンの併用療法(BLd療法)とBLd療法にサークリサを上乗せしたIsaBLd 療法を、それぞれ 2:3 の割合で割付け、比較した。 その結果、主要評価項目である無増悪生存期間の中央値はIsaBLd群では到達せず、BLd群では54.34か月(95% CI:45.207~推定不能)であり、IsaBLd群で統計学的に有意な延長が示された(ハザード比:0.596、98.5154%信頼区間:0.406~0.876、p=0.0005[層別 log-rank 検定])。
同試験で認められたサークリサの安全性と忍容性は、サークリサとBLdで確立されている安全性プロファイルと同様で、新たな安全性の懸念は認められなかった。
◆鈴木憲史日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問のコメント
サークリサには直接的なアポトーシス誘導作用や細胞傷害活性、さらにはアデノシン産生抑制に伴う免疫抑制低減効果など、様々な相乗効果がおこることが考えられ、初発の患者さんこそ4剤併用療法を積極的に用いるべきと考えている。
また、MRD陰性が長期にわたって持続した場合は、多発性骨髄腫が原因で死亡することがなくなる、いわゆる「Functional Cure」を目指す時代が来たのではないだろうか。
◆若山晃二サノフィのスペシャリティケアビジネスユニット オンコロジーフランチャイズヘッドのコメント
サノフィは、サークリサを初発の患者さんにも処方できるように、開発を進めてきた。新たな治療選択肢の提供により、多発性骨髄腫の患者さんとそのご家族に貢献できることを誇りに思う。