塩野義製薬は22日、日立とデータや生成AIなどを活用した革新的な医薬品・ヘルスケア業界向けサービス創出に向けた業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した。
同提携は、両社が、他の企業との連携によるオープンイノベーションで、実証を通じて創出する新たなDXサービスを、幅広い医薬品・ヘルスケア業界の企業向けに提供していくことを目指さすもの。具体的には、両社の先進的なデジタル技術とドメインナレッジを融合して、①医薬品・ヘルスケア業界におけるマスターデータマネジメントの高度化と普及、②生成AIを活用した医薬品・ヘルスケア企業の業務効率化、③ヘルスデータを活用した健康経営やサステナブル経営を支援するサービスの開発に取り組む。同提携に基づき、2025年度中に一部のサービスの提供開始を目指す。
医薬品・ヘルスケア業界は、高齢化に伴う医療費増大に起因する薬価制度の改定、労働力不足といった複合的な課題に直面している。また、企業において健康経営の推進や従業員の健康維持・増進が重要視され、サステナブルな経営を実現するためには、従業員の健康管理と労働生産性向上を両立させる仕組みの構築が急務となっている。
一方、近年の生成AIやデータサイエンスなどの技術の進化は、業務効率化やデータ駆動型の意思決定の可能性を大きく広げており、これらの技術を活用した業界横断的な価値創出が期待されている。特に、生成AIをはじめとするAI技術は、タスク自動化や組織の労働生産性の向上などを目的に、業界・業務を問わず幅広く適用が進んでおり、イノベーションや企業の成長には欠かせない。
塩野義製薬は、2021年7月にデータサイエンス部をDX推進本部内に設立し、データベース基盤の整備、アルゴリズム開発、解析技術の獲得と適用を通じて、企業活動におけるデータ活用を強力に推し進めている。また、2030年度までの中期経営計画である「SHIONOGI Group Vision」で掲げる「HaaS企業への変革」に取り組み、「協創の核」として、生成AIを含めたデジタル技術やPHR(Personal Health Record)データなどの、ヘルスケア領域で着目されている先進的な領域技術やノウハウを活用したビジネス創出を目指している。
日立は、医薬・ヘルスケア業界向けの生産設備・機器からロボティクスSI、DCS、MES、ERPまでのプロダクト、OT(Operational Technology)、ITの実績やドメインナレッジを有しており、今後、市場成長が期待される同業界を注力分野の一つとしている。
また、Lumadaソリューションの開発・提供を通じて蓄積したDXのノウハウや、Generative AIセンター設立以降、日立全社で推進してきたAIトランスフォーメーションにおける生成AIのナレッジ・技術を活用し、フロントラインワーカーの働き方の革新や生産性向上などのお客さまの課題解決やイノベーションの創出に貢献している。
こうした中、2021年10月からの塩野義製薬のIT業務に関する中長期的かつ戦略的なパートナーシップにより協創の実績を積み上げてきた塩野義製薬と日立は、先進のデジタル技術や解析技術を活用したさらなる革新に向けて、今回の業務提携に関する基本合意書の締結に至った。
塩野義製薬と日立は同提携を通じて、社会により良いインパクトを与え、「医薬品・ヘルスケア業界全体がより効率的で持続可能な仕組みを持つ未来」を共通のビジョンとし、このビジョンに賛同する他の企業にも輪を広げて協創することで、サステナブルな社会の実現に貢献していく。