レチノールの有効性・安全性を両立する浸透コントロール技術発見 ロート製薬

図1:浸透をコントロールするイメージ図

 ロート製薬は19日、レチノールの有効性・安全性を両立する浸透コントロール技術を発見したと発表した。同技術は、レチノールによって生じるレチノイド反応(A反応)に着目して発見されたもの。
 ロートグループでは、総合経営ビジョン2030に掲げた「 Connect for Well being 」 の実現に向け、顧客が安心して使用し続けられるようにレチノールの研究を進めている。
 今回の研究では、レチノールの浸透をコントロールする技術を実現し、レチノールの有効性を保ちながら強いA反応が起こりにくく安全性を高めた成分の組み合わせを発見した。同研究成果により、効果を発揮しながら安全性が高く安心して使用できるレチノールを配合した製品への応用が期待される。
 近年、スキンケア市場では「効果」を重視するトレンドが強まり、いわゆる成分コスメが注目されている。その中でも、効果が高くエイジングケアや肌質改善が期待される「レチノール」は注目度が高く、国内外でレチノールやその誘導体を配合したスキンケア製品の市場が拡大している。
 その一方で、レチノールには課題があり、有効性が高い反面、その反応性の高さから肌の赤みや乾燥、皮むけのような「A反応」と呼ばれる反応が起こりやすく、使用時に注意が必要だ。
 配合量を減らすことで A反応を起こりにくくし、安全性を高める方法もあるが、有効性が低下する可能性があり、期待されている「効果」も得られにくくなる可能性がある。
 つまり、有効性と安全性の両立は、レチノール製品の市場を拡充するための重要なテーマの一つといえる。
 昨今、リポソームのような技術や容器の工夫でレチノールの安定性を向上させる研究が広く行われている。だが、同社ではこれまでのレチノール製品の知見からヒントを得て、従来とは異なるアプローチとして、浸透速度をコントロールすることで有効性を保ちながら皮膚への刺激を低減できるのではと考え、研究を推進した。
 今回の研究では、特定のIOB領域の成分を配合することでレチノールの浸透速度を緩和し、有効性と安全性を両立できることを三次元人工培養皮膚による浸透試験と人を用いた臨床試験で確認した。同臨床試験の詳細は次の通り。

1) 特定の IOB 領域の成分が三次元人工培養皮膚におけるレチノールの浸透速度を緩和することを確認

 三次元人工培養皮膚モデルを用いて、成分の IOB とレチノールの浸透速度についての評価を行った。シリコーンの浸透速度をコントロールとした場合、ステロールエステルや植物油などレチノールと極性の近い油はレチノールの浸透を緩和し、非極性油や両親媒性油などレチノールと極性の遠い油はレチノールの浸透を促進することが分かった。
 これらの結果により、油の極性、つまりIOBによってレチノールの浸透速度をコントロールできることが示された(図2)。

図2:成分のIOBとレチノール浸透速度の評価結果

 この知見をもとに、浸透をコントロールする技術を搭載し、レチノールと IOB 値が近い油を複数選択し配合した製剤で同様の評価を行ったところ、レチノールの浸透速度が緩和することが確認できた(図3)。

図3:製剤中のレチノール浸透速度の評価結果

2) ヒト試験においてレチノールの効果と安全性を実現

 浸透をコントロールする技術を搭載した試験品のクリームで8週間連用試験を実施した。シワのレプリカ評価の結果、塗布前後の比較で目回りのシワへの効果が認められました(図4)。

図4:シワのレプリカ評価 各項目の結果


 また、皮膚科医による医師所見の結果、試験期間中に所見スコア2(軽度)以上の症状はなく、試験品による重篤な皮膚トラブルはなかった(図5)。

図5:医師による所見観察項目・判定基準


 以上の結果から、効果と安全性を両立していることが示唆された。
同研究成果により、レチノールの浸透速度をコントロールすることで有効性と安全性を両立できる可能性が示唆された。この発見は、顧客が効果を感じながら安心して使用できるレチノール配合製剤の開発へつながるものと期待される。
 ロート製薬では今後も、レチノールに限らずさまざまな成分の効果と安全性を高めよりよい製品を開発できるよう、研究を続けていく。

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