ジャイパーカ 慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫P3試験で好結果 リリー

 リリーは17日、非共有結合型(可逆的)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬「ジャイパーカ」(ピルトブルチニブ)について、慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫P3試験(BRUIN CLL-321試験)で好結果を得たと発表した。
 P3試験の対象は、共有結合型 BTK 阻害薬による治療歴のある慢性リンパ性白血病または小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)の成人患者。ピルトブルチニブは試験の主要解析において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成した。また、独立効果安全性評価委員会(IRC)の評価の結果、ピルトブルチニブは、治験医師が選択した治療法(イデラリシブ+リツキシマブ併用療法(IdelaR)またはベンダムスチン+リツキシマブ併用療法(BR))との比較で優越性を示した。
 今回発表した試験計画書に事前規定した最終解析の結果は、ピルトブルチニブ投与例において一貫した PFS 改善を示し、再発、病勢進行または死亡のリスクが IdelaR またはBRに比べて46%低下することを示している。これらの試験結果は、第 66回米国血液学会議年次総会(ASH 2024)で口頭発表された。
 BRUIN CLL-321 試験では、238名の患者が登録され、ピルトブルチニブの単剤療法(n=119)を受ける群と、IdelaRとBRのうち治験医師が選択した治療を受ける群(n=119)のいずれかに無作為に割り付けられた。
 両群とも前治療ライン数の中央値は3 で、いずれの患者も1剤以上の共有結合型BTK 阻害薬の使用経験があった。また、患者の約半数には、ベネトクラクス含有レジメンの治療歴があった。
 治験参加者はいずれも予後が不良で、参加例の多くで TP53 変異や17p欠失、IGHV変異なし、複雑核型などの悪性度の高い疾患であることを示すハイリスク例の特徴が認められた。
 有効性の結果は、Intent-to-treat(ITT)集団に対する IRC 評価に基づくもので、カットオフ日は 2024年8月29日であった。試験では、IRCが進行を確認した後は、ピルトブルチニブ群へのクロスオーバーが可能とされていた。追跡期間の中央値は約19カ月、PFSの中央値はピルトブルチニブ群で14.0カ月、対照群で8.7カ月であった(HR=0.54 [95% CI, 0.39-0.75])。
 PFSは、ベネトクラクスの治療歴がある患者、TP53変異または17p欠損がある患者、IGHV変異なしの患者、複雑核型がみられる患者など、予後不良要因別のサブグループのいずれにおいても一貫していた。
 ピルトブルチニブは、副次評価項目でも臨床上意義ある改善を示し、治験医師の判定による PFS(中央値:15.3vs.9.2カ月; HR=0.48 [95% CI, 0.34-0.67])、無イベント生存期間(EFS)(中央値:14.1 vs. 7.6カ月; HR=0.39[95% CI, 0.28-0.53])、次の治療または死亡までの時間(中央値:23.9 vs. 10.9 カ月; HR=0.37 [95% CI, 0.25-0.52])などの結果が得られた。
 クロスオーバーが可能となった対照群の患者のうち、76%(n=50/66)がピルトブルチニブ治療を受けた。クロスオーバーの影響について補正して全生存期間の複合解析を行ったところ、ピルトブルチニブが優れる傾向が認められた(Inverse Probability Censored Weighting methodology (IPCW 法): HR= 0.89 [95% CI, 0.52-1.53]; Two-stage Accelerated Failure Time methodology(2段階加速モデル法): HR=0.77 [95% CI, 0.45-1.26])。
 BRUIN CLL-321 試験でピルトブルチニブの投与を受けた患者の全体的な安全性プロファイルは、P1/2相 BRUIN試験の安全性データと一致し、注目すべき有害事象の発現状況も同様であった。P3試験では、ピルトブルチニブはIdelaRまたはBR に比べ、グレード 3 以上の試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)の発現率が低く、有害事象による治療中止率も低い結果となった。曝露量の影響を調整した TEAEsの発現率は、ピルトブルチニブ投与例の方が IdelaRまたはBRの投与例より低率であった。

◆BRUIN CLL-321 試験の治験医師の一人である Jeff Sharman氏(サラ・キャノン研究所リンパ腫研究実行委員会責任者、ウィラメットバレーがん研究所、医師)のコメント
 これらの結果は、共有結合型BTK阻害薬の治療後でも、ピルトブルチニブが臨床的に意義ある結果をもたらす能力があることを示すものである。また、BRUIN CLL-321 試験に参加した患者さんがいずれも予後不良であったことを踏まえると、注目すべき結果である。
 今回の結果は、ピルトブルチニブが次の治療までの期間を有意に延長し、中央値では約2年延長できたことを示している。BRUIN CLL-321で得られた安全性と有効性のデータは、治療の実施順序を考える際に重要といえる。

◆リリーのチーフメディカルオフィサーのDavid Hyman医師のコメント
 BRUIN CLL321 試験は、BTK阻害薬による治療歴のあるCLLまたはSLLの患者さんのみを対象とした無作為化試験としては、初めての試験である。これらの患者さんの新たな治療選択肢へのニーズは極めて高い。。
 今回得られたデータは、ピルトブルチニブが疾患の進行を遅らせ、次の治療までの期間を延長する力があることを示している。本試験は、ピルトブルチニブが実施している複数の無作為化P3試験の最初の試験である。
 我々は、B 細胞がんの治療の進歩に、ピルトブルチニブが役割を果たすことを裏づけるエビデンスがさらに積み上がっていくことを期待している。

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