近畿薬剤師学術大会ハイライト
第26回近畿薬剤師学術大会の日本薬剤師会会長特別講演で、岩月進新会長は「これからの薬剤師・薬局」をテーマに講演した。岩月氏は、社会保障費について、「高額医薬品に注視するよりも、たくさん使われている薬剤をどうやって上手く使用するかに重点を置く方が医療費抑制効果がある」と明言し、「そのために薬剤師が実践すべきことを考えねばならない」と訴求した。
さらに、「これからの薬剤師・薬局は地域社会に貢献することをベースに、やったことに対してどのような成果が出たかを示すことが重要になる」と訴えかけた。
岩月氏は、まず、近年の調剤報酬改定概要を振り返り、その時々のトピックスとして2016年=「掛かり付け薬剤師・薬局の評価」、「薬局における対人業務の評価」、「門前薬局の評価の見直し」、2018年=「掛かり付け薬剤師・地域医療に貢献する薬局の評価」、「薬局における対人業務における評価の充実」、「門前薬局の評価の見直し」、2020年=「掛かり付け機能の評価」、「対物業務から対人業務への構造的な転換」、「対人業務の評価の充実」、「対物業務等の評価の見直し」、2022年=「薬局薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進」、「薬局機能と効率性に応じた評価の見直し」、「在宅業務の推進」、「ICTの活用」、2024年度=「地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し」、「医療従事者の賃上げ」を列挙。
加えて、「薬中心から患者中心の業務へと移行してきた。門前から掛かり付け、そして地域で暮らす患者本位の医薬分業に向かっている」と分析。「これからの薬局・薬剤師は、薬が患者に渡って服用した後にどうなったかをきちんと見なければ医療は完結しない点に留意すべきである」と力説した。
さらに、「地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直しにおいては、最適でなければ点数を下げるという意味合いが潜んでいる」と指摘し、「やったことにどのような成果が出たかを示すことが重要になる。現場の薬剤師が成果を出していけば、次の調剤報酬改定で森昌平日薬副会長の中医協での発言の重みが変わって来る」と強調した。
社会保障費の将来の見通しについても、「高額医薬品に注視するよりも、たくさん使われている薬剤をどうやって上手く使用するかに重点を置く方が医療費抑制効果がある」との考えを示した。その上で、「薬剤師職能をそこに発揮すべきで、患者のために実践している姿を見せる必要がある」と訴求した。
OTC類似薬のみの処方にも言及し、「患者にとって1回だけならOTCの方が安く、長期に使うなら保険の方が安くなる」と説明した上で、「こうした場合、診断が付けば、OTCで治すとい患者の自己決定権があっても良いと思っている。その時に我々はどんなサービスを提供して行けば良いかを考えねばならない」と強調した。
最後に、岩月氏は「私見である」とした上で、これからの調剤として、「調剤した薬剤師の責任の明確化」、「地域の医薬品情報の収集と管理」、「地域フォーミュラリの作成と維持管理」、「標準化(箱出し)調剤の検討」、「調剤室の温度管理ログや分包機使用ログの必要性」、「オンライン診療に伴う地理的・時間的な‟掛かり付け薬局”への変化への対応」、「時間外受付可能な処方箋受付ポスト」を指摘した。