PKSHAと寄り添い型音声対話AIを共同開発 ロート製薬

孤立・孤独感を抱える人のウェルビーイングを支援

タブレットで対話しているイメージ

 ロート製薬は24日、コミュニケーション領域の AI に強みを持つ PKSHA と共に対話型AIを共同開発したと発表した。同対話型AIの開発は、孤独・孤立の問題を抱えやすい子ども・若者や高齢者のウェルビーイングのサポートを目的としたもの。
 同社は、「世界の人々に商品やサービスを通じて‟健康”を提供することを存在意義(パーパス)としている。同社を取り巻くすべての個人や社会をウェルビーイングに導き、「世の中を元気にする」を目標に、事業のコアバリューである健康を軸に、社会課題やお客様の変化を背景に、新たな領域にも厭わず挑戦を続けてきた。
 貧困、教育格差、虐待、いじめなど、日本の子どもたちを取り巻く社会課題は多様化・深刻化しており、OECD 加盟国の中で「孤独を感じる」と答えた子どもの割合は3割と、日本が他国に比べて突出しているという調査もある。
 また、日本は超高齢社会を迎え、高齢者の孤独・孤立感も課題となっており、これらの現状を受けて本年4月1日には「孤独・孤立対策推進法」が施行され、具体的な施策が求められている。
 こうした中、ロート製薬では、特に孤独・孤立の問題を抱えやすい子ども・若者や高齢者のウェルビーイングをサポートすべく、PKSHA と共に対話型 AI の開発を進めてきた。
 寄り添い型音声対話AIは、人の言葉に対して音声で回答を返すシステムで、パソコンやタブレット等のデバイスから利用できる。生成AIをベースにしつつ、より「傾聴」に特化した対話ができる点が特長だ。
 具体的には、利用者の質問に対してすぐに答えを導くのではなく、内容を理解した上で傾聴を行い、不安を煽る表現の削除や、自然な対話ができる適切な会話速度を実現している。こうした対話により、内省や、振り返りを通じた気づきを促すサポートを行う。
 また、特定のトピックを深掘りするための相談モードや、会話を楽しむためのおしゃべりモードも備えており、気軽に悩み相談をしたり、同年代の友達には話しにくいトピックについて会話したりすることで、心理的にポジティブな影響を得られることが期待できる。
 プロダクトの社会実装に向けて、何らかの理由で学校に行けない子どもたちを対象に検証を行った。その結果、実施後のアンケートでは回答者30名のうち 33%が「とても楽しかった」、66%が「楽しかった」という回答が得られた。
 「人間と話しているように悩みを聞いてもらい、心が軽くなった」「普段話せない半導体についてたくさん話ができた」などのコメントがあり、悩みそのものについて話さなくとも、興味のある話を共有することで気分が向上することが確認できた。また、AIだからこそ相手の気持ちを気にせず日常の悩みを話せたという声もあった。
 同製品は、治療目的ではなく、孤独・孤立感の解消を支援する目的で開発された。今後は、子ども・若者や高齢者だけでなく、孤独・孤立が課題となりやすい場所での活用も視野に入れ、多様なユースケースを探索していく企業や行政等のパートナーと協業し、サービスを展開していく。
 例えば、工場内で働く従業員が、忙しく働く中で周囲に話しかけづらい状況などを想定し、作業中の悩みや困りごとに寄り添うAI としても活用を検討中である。エッセンシャルワーカーのメンタルヘルスをサポートし、多様な人材が工場内で安心して働き、活躍できる職場環境の実現を目指す。

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