「たんぱく質を摂取したい気持ちが高まっている」人は約3割 めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会が意識調査

「めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会」は、今年もたんぱく質に関する意識調査を実施した。同調査はたんぱく質摂取に対する意識や実態を把握するために、全国の15〜74歳の男女2686名を対象に行ったもの。
 その結果、「たんぱく質を摂取したい気持ちが高まっている」人は約3割、「たんぱく質の“質”への興味は、摂取量や摂り方への興味に比べて低い」、「若年層や男性の方が、たんぱく質摂取が偏っている傾向がある」ことが判った。
 「めざせ1日80g! たんぱく摂ろう会」は、日本人のたんぱく質摂取量低下という問題に取り組むため、明治、伊藤ハム米久ホールディングス、マルハニチロが2022年6月17日に設立したコンソーシアム(共同事業体)だ。設立会社3社は連携し、日本人の低栄養という社会課題解決に向け、たんぱく質摂取の啓発を通じて全ての年代の方が心身ともに健康で安心して暮らせる「ウェルネス社会」の実現を目指して活動している。
 今回の調査概要、調査結果、宮地元彦早稲田大学 スポーツ科学学術院教授の考察は次の通り。

【調査概要】
調査対象者:全国在住15-74歳 男女 2686名

<年齢内訳>
15-19歳:168名、20-29歳:358名、30-39歳:411名、40-49歳:534名、50-59歳:487名、60-69歳:458名、70-74歳:270名

調査方法:インターネット調査

調査実施機関:電通マクロミルインサイト

調査時期:2024年3月22日~2024年3月23日

【調査結果】
◆「たんぱく質を摂取したい気持ちが高まっている」人は約3割
 5つの栄養素(たんぱく質、食物繊維、鉄分、カルシウム、ビタミン類)の中で「摂取したい気持ちが高まっている」人の割合がもっとも高かったのはたんぱく質であった。
 摂取したい気持ちが「若干高まっている」人が19.7%、「かなり高まっている」人が8.8%で合計28.5%。約3割の人が「たんぱく質を摂取したい気持ちが高まっている」と回答した。


「たんぱく質を摂取したい気持ちが高まっている」人の割合は、2022年調査では25.2%、2023年調査では29.6%(下グラフ参照)。昨年に続き約3割と、高い水準を維持している。

宮地教授のこの調査結果のコメント

宮地氏

 「たんぱく質に対する消費者の関心は年々高まっており、例えばスーパーマーケットなどでも『たんぱく質強化』をうたった商品が増え、関連する商品が並ぶ売り場が拡大している。
 また、厚労省が進める「健康日本21」などの健康づくり運動を通じて、フレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームが健康寿命の延伸を阻害する要因だということが広く知られてきた。
 たんぱく質摂取を意識し、実践する人が増えればフレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームの予防につながり、結果的に健康寿命の延伸が期待される。その意味で『たんぱく質を摂取したい』と思う人が増えるのは、望ましい傾向だと言える。

◆たんぱく質の“質”への興味は、摂取量や摂り方への興味に比べて低い
 「たんぱく質に関する次の4項目について、興味の度合いを選んでください」という問いに対して、「健康維持・増進に必要とされる自分の摂取量」に興味がある人は60.5%、「どのような食品にどれくらいたんぱく質が入っているのか」に興味がある人は63.3%、「たんぱく質の手軽な摂り方」に興味がある人は64.3%といずれも6割を超えていた。
 一方、「たんぱく質の種類による“質”の違い」に興味がある人は54.5%で、他の項目に比べて約5〜10%低いことが判った。


 また、たんぱく質の“質”という点では、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質で、イメージに違いがあることも判った。動物性たんぱく質については3割以上の人が「筋肉がつきやすい(36.0%)」、「カラダをつくるために効果的(35.2%)」というイメージがあると答えた。一方、植物性たんぱく質については「健康に良い(34.6%)」というイメージが多数であった。


宮地教授の同調査結果についてのコメント。
 「食品によってたんぱく質を構成するアミノ酸の量や種類、構成比には違いがある。肉や魚、乳、卵に含まれる動物性たんぱく質のメリットはBCAA(アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)が豊富なこと。BCAAは筋肉を作るのに有効なので、筋肉を増やしたいなら動物性たんぱく質がお薦めである。
 また、動物性たんぱく質は豆や雑穀に含まれる植物性たんぱく質に比べて吸収されやすく、筋肉や臓器などを作るのに利用されやすいという論文がある。ただし、動物性たんぱく質を含む食品には脂質が多いものもあるのでバランスの取れた食事を意識することが重要だ。
 植物性たんぱく質は、動物性に比べてアミノ酸バランスは劣るが、「摂取エネルギー量を低く抑えられる」、「食物繊維をあわせて摂れる」などのメリットがある。

◆たんぱく質の“質”を評価する指標「DIAAS」

 2013年に国連食糧農業機関(FAO)は、たんぱく質の新しい評価基準として「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」を提言した。これは、より正確な吸収率の測定をもとに、消化のされやすさ、体内での利用効率など、たんぱく質の“質”を総合的に評価するものだ。DIAASの数値が高いほど、体内で吸収されやすく、利用されやすいたんぱく源であるといえる。
 主な動物性たんぱく源5種類はいずれもDIAASが100を超えていてスコアが高いことから、良質なたんぱく源であると考えられる。

◆若年層や男性の方が、たんぱく質摂取が偏っている傾向がある
 アンケートの結果から、男女ともに若年層や、全体的に男性の方がたんぱく質摂取に偏りがあることが判った。一方で、70〜74歳の人は、主要なたんぱく源をバランスよく取り入れている。
宮地教授のコメント
 「多様な種類の食品からたんぱく質を摂ろうと意識することが重要である。なぜなら、食品によって、たんぱく質を構成するアミノ酸のバランスや、含まれているビタミンやミネラル、食物繊維など栄養素が異なるためだ。
 動物性たんぱく質と植物性たんぱく質をバランス良く摂ることが有効である。多様な食品を食べれば、それだけ多様な栄養を摂ることができる。

◆宮地教授のたんぱく質についての疑問への回答

 「たんぱく質に関する興味」への問いでは、「健康維持・増進に必要とされる自分の摂取量」、「どのような食品にどれくらいたんぱく質が入っているのか」、「たんぱく質の手軽な摂り方」と答えた人が6割を超えていた。そこで、この3つの疑問に対して宮地教授が回答した。

Q 健康維持・増進に必要とされる自分の摂取量は?

A 筋量や筋力の維持向上には、1日あたり、体重1kgに対して1.5gのたんぱく質を摂るのが目標である。例えば体重55kgの人なら55×1.5g=82.5gのたんぱく質を摂るのが目標。
 ところが現在、多くの日本人のたんぱく質摂取量は体重1kgあたり0.7〜0.8g程度と、目標の半分ほどにとどまっている。摂取量が1日あたり0.1g増えるだけでも筋肉量や筋力が増えることがわかっているので、普段の食事や間食で積極的にたんぱく質を摂るように意識しよう。
 ちなみに、筋肉量や筋力を増やすためにはたんぱく質摂取とともにジムなどで重いバーベルを持ち上げるようなハードな筋トレが必要だと思っていないか?実は、たんぱく質を十分摂取していれば、自宅で行う軽い筋トレはもちろん、通勤や通学、仕事や家事といった日常的な活動をするだけでも筋肉量・筋力を維持する効果が期待できそうだ。活動的な生活を送れば、たんぱく質をプラスするだけで筋肉を維持・増加が期待できる。

Q どのような食品にどれくらいたんぱく質が含まれていますか?

A 身近な食品のたんぱく質含有量を表にまとめた。

 魚や肉の場合、かまぼこやちくわ、魚肉ソーセージ、ハム、ソーセージなど、簡単に手を加えるだけで食べられる加工品にもたんぱく質が含まれている。卵は、生でも食べられる手軽なたんぱく源。豆製品にも、納豆や豆腐など身近な加工品がたくさんある。
 穀類では玄米や十割そばなど、精製されていない人がたんぱく質を多く含んでいる。牛乳や豆乳はたんぱく質を多く含む飲料の代表である。乳製品の中では、特にチーズにたんぱく質が多く含まれている。

Q たんぱく質の手軽な摂り方は?

A 健康維持、増進に向けて、日本人は1日+10ℊ程度のたんぱく質摂取が望ましいと言われている。ここでは、毎日の生活で+10ℊを実現するためのアイディアをいくつか紹介する。

(1)普段の食事に「ちょい足し」
 牛乳・乳製品、ソーセージやハムは手軽に摂れるたんぱく源。例えば朝食に牛乳を飲む、ソーセージやハムをプラスする、食後のデザートはヨーグルトにする、間食に魚肉ソーセージを食べる、など生活スタイルを変えずにちょい足ししてみては。
 また、うどんを食べるなら月見うどんや肉うどんにするなど、トッピングを工夫するだけでもたんぱく質摂取量を簡単に5〜10g程度増やせる。

(2)1品ものより定食を選ぶ
 丼もの、カレーライス、麺類など、1皿で完結するメニューよりも、定食のように主食、主菜、副菜が揃ったメニューのほうがたんぱく質を多く摂れることが研究結果からわかっている。たんぱく質摂取を意識するなら、分量よりも皿数を増やす意識を持とう。

(3)たんぱく質強化食品を活用する
 最近はヨーグルトや牛乳、サラダチキン、パスタ、お菓子にも「たんぱく質強化」をうたった食品が増えている。こうした食品を利用すると手軽にたんぱく質を補給できる。

(4)飲み物でたんぱく質を摂る
 コーヒーを飲むならカフェラテや豆乳ラテに、ジュースの代わりに牛乳や飲むヨーグルトを選ぶなど、水分補給の際にもたんぱく質を補給できる。

(5)「朝のたんぱく質」を意識する
 日本人の食事のなかでたんぱく質摂取が一番不足しがちなのが朝食である。1日に必要なたんぱく質を摂るなら、朝から牛乳や豆乳を飲んだり、朝食に(1)で紹介したようなアイディアを取り入れたりするなど、少しでもたんぱく質を補って健康な体をつくろう。
 朝のたんぱく質摂取は、長い睡眠で体内に枯渇したアミノ酸を再補充し、体温を上げて、体のスイッチを入れる役割も。朝から元気に生活するためにも、朝のたんぱく質摂取は欠かせない。
 「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」では、たんぱく質の上手な摂り方として、たんぱく質をかしこく、ムリなく、手軽に摂取する「かんたんぱく習慣」を提唱している。次の3つのポイントが重要である。
1.無理をしない 2.いつもの生活を変えない 3.ちょい足ししよう

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