5歳〜49歳男女3万1000人に聞く 「高校生と親世代の生殖や性に関する意識と実態調査」メルクバイオファーマ

YELLOW SPHERE PROJECT/YSP
YSPプロジェクト概要
妊娠を希望してもなかなか叶わないという“社会課題”に対し、製品やサービス提供にとどまらず、妊活や不妊治療をする人々を支援し応援するプロジェクトである。目指すところは、より多くの人に適切な情報を伝えて、サポートの輪を広げ、人々の充実した暮らしという未来をつくることへの貢献。新しい命を宿す為の努力を、皆が応援する社会へ。それが、YELLOW SPHERE PROJECTの先にある未来である。

親の9割が、自分の子どもへの「性教育をしたことがない」

 サイエンスとテクノロジーの企業であるメルクの日本法人、メルクバイオファーマは、日本における、生殖や性に関する意識と実態について、15~49歳の男女3万1000人を対象に実施した調査結果を公表した。
 調査では、親の9割が、自分の子どもへの「性教育をしたことがない」と答えており、生殖や性に関して子どもに正しく伝える「自信がない」親は73.0%に上った。女子高校生の8割が身体の悩みを抱えていても、「誰にも相談しない」が約6割であった。
 調査概要(ともにインターネット調査)、主な調査結果、櫻井裕子氏(思春期保健相談士、日本思春期学会性教育認定講師)のコメントは、次の通り。

【調査概要】
事前調査
◆実施時期 2024年3月15日(金)~3月17日(日)
◆調査対象 全国の15歳〜49歳男女3万1000人(人口動態に合わせてWB集計)

本調査
◆実施時期 2024年3月15日(金)~3月18日(月)
◆調査対象 全国の高校生の男女200人(男女各100人)、第1子が高校生の親400人(男子高校生の父・母各100人、女子高校生の父・母各100人)

【主な調査結果】
1、 10代では39.3%、20代では41.5%が「子どもを授かりたい」
 一方、子どもを望まない理由「国や自治体の支援が不足」「経済的に難しい」が上位を占める

・「子どもを授かりたい」10代39.3%、20代41.5%。

・子どもを授かりたくない理由の上位は、「国や自治体の制度などの出産・育児支援が不足」「経済的に難しい」。

2、 生殖や性について「小学校の授業」や「中学校の授業」で教わりたかった人がそれぞれ約4割

 親の約9割が、自分の子どもへの「性教育をしたことがない」

・生殖や性に関する教育を受けたかった理想の年齢は10代13.5歳、20代14.7歳、30代15.1歳、40代15.2歳。

・実際に正しい知識を得た年齢は10代13.8歳、20代15.0歳、30代15.2歳、40代15.5歳。

・妊孕性に関する知識

▶問.男性は精子の産生のみで受精能力がある(誤り):正答率10代25.8%、20代27.6%、30代30.5%、40代30.3%。

▶問.月経があれば妊娠することができる(誤り):正答率10代25.9%、20代27.5%、30代30.9%、40代32.2%。

▶問.夫婦5~6組のうち約1組は不妊(正しい):正答率10代22.7%、20代26.8%、30代29.3%、40代28.1%。

・生殖や性に関する知識を得たのは、「中学校の授業」「小学校の授業」「高校の授業」など学校の授業。

・教わった内容は「男女の身体の違い」「男女の身体の機能の違い」「妊娠の仕組み」「月経(排卵)が起きる仕組み」が多い。

・「ジェンダーの多様性やLGBTQ+」について10代は半数以上が学んでいるが、年代が上がるとともに教わっていない割合が高まる。

・自身の子どもに生殖や性に関する教育をした経験がある親は、20代8.0%、30代8.7%、40代8.6%。

  1. 生殖や性に関して、親の73.0%は子どもに正しく伝える「自信がない」

・生殖や性に関して親子で「十分話したことがある」高校生は男女とも8.0%、話したことがない理由の上位は「気まずい」「恥ずかしい」。

・親の25.3%が生殖や性に関する知識がなくて「困った経験あり」。

・親の73.0%は、自身の子どもに生殖や性に関する知識を正しく伝えられる「自信がない」。

4、 高校生にとって生殖や性に関して情報源にしている人や機関は「学校の先生」 および「友人」 が上位。
 一方、信頼できる情報源は「学校の先生」 (男子高校生28.0%、女子高校生43.0%)
 親は、信頼できる人や機関、メディアの情報源はいずれも、「特にない、わからない」が最多

・生殖や性に関して医学的に正しい情報が得られている男子高校生は48.0%、女子高校生は54.0%、男子高校生の父は19.0%。

・男子高校生にとっての生殖や性に関する情報源(人や機関)は「友人・知人」、女子高校生は「学校の先生」。一方、親にとっての生殖や性に関する情報源は、「特にない・わからない」が半数と最多。

・生殖や性に関する情報を得る際に信頼できるメディアは、高校生は男女とも「学校の教材」が一番多いものの「特に気にしていない、わからない」が最多。親も「特に気にしていない、わからない」が約半数と最多。

5、 女子高校生の8割が身体の悩みを抱えるも、約6割は「誰にも相談しない」

・男子高校生の52.0%、女子高校生の80.0%が身体の悩みを抱えている。

・身体の悩み、男子高校生は「睡眠不足」「体型」「ストレス過多」、女子高校生は「体型」「体毛」「生理痛」。

・身体の悩みを相談する相手、男子高校生は「友人・知人」「母親」「父親」、女子高校生は「母親」「友人・知人」「SNS」の順。

・身体の悩みを誰かに相談するのは、男子34.0%、女子43.0%で、男女とも相談しない人が多い。

【櫻井裕子氏のコメント】

性や生殖に関連する健康について考えるきっかけが重要

 2024年6月に発表された女性が生涯に産む子どもの平均数「合計特殊出生率」は1.20で過去最低となり、出生数も過去最少を更新するなど、子どもを産み育てる環境の改善は喫緊の課題である。数年前、複数の中学校で「将来子どもが欲しいか」「何歳で欲しいか」を聞き取ったことがあった。どの学校のどの学年でも性別にかかわらず「子どもが欲しい」とする生徒は半数以上、理想の結婚年齢は25歳、出産年齢も25歳がトップであった。個別のコメントでも結婚にも出産にも夢を持っているものが多かったと記憶している。 一方、ここ数年、講演や講義で同様に生徒や学生に尋ねると、結婚にも出産にも育児にも消極的になっていると感じる。今回の調査結果とリンクするものと考える。今回の調査の「その理由」では、全体的に育児を「一人で抱えるもの」とイメージしている傾向が読み取れる。
 妊娠した人しか出産できないが、出産した人しか育児ができない訳ではない。周囲を巻き込む力、関係性作りを学ぶ機会も必要である。まずは、現状で子どもを望む望まないにかかわらず、自身の健康について、特に性と生殖に関連する健康について気が付くこと、気がかりなことがあったら、誰かに話したり頼ったりする力を育成することが重要である。
 その上で自らのライフプランについて、早いうちから考えていくきっかけを創出するという、学びの機会、環境整備が求められているのではないだろうか。

10代では「13.5歳」で、生殖や性に関する十分な知識を得たかったと回答するも、性教育は未だに子どもたちの期待に応えられていないのが現状

 生殖や性に関する教育を「受けたくない」「わからない」を選択した人は、すでに性教育に良くないイメージを持っている可能性がある。苦手意識が育つ前、早めに学習の機会が提供されることが望まれる。さらに、「受けたい」という人はすべての年齢で「もっと早く知りたかった」ということが明らかになった。
 一方、学校現場では学習指導要領の関係で、学習内容に制限が加えられ、子どもたちの実態に見合った教育が行われにくいのが実情である。私は、すでに性的なトラブルが多数発生している高校においても生殖の仕組み、特に避妊について具体的な内容に触れることができないというもどかしい経験もしている。生殖の仕組みを知り、具体的な避妊の方法を知り、それを選択でき決定できる力はSRHR(性と生殖のための健康と権利)を保障するものであり、全ての人が等しく手に入れられるべきものと考える。
 また、今回の調査で明らかになった「妊孕性に関する正答率の低さ」や、子どもたちに性教育という生きる上で大切なことを伝えていく親側の「性教育を教える自信のなさ」からも、求められている性教育が実践できていない現状と、それによって困るのはいつの時代も当事者である若者だということを私たち大人は忘れてはならない。

高校生が生殖や性に関する信頼できる情報源として挙げる「学校」。そして親子間での性教育の重要性

 前述の理由で、中学校では性交や避妊や中絶を取り扱わない学校が多いのが実態である。授業での扱いもそうだが、外部講師に依頼しても制限が加わることがあるため、今回の調査では「避妊の重要性」「安全な避妊法」を学習したとなっていることに少々驚いている。
 扱う学校が増えたのであれば喜ばしい。一方、親世代では性と生殖に関する知識や正しい情報がなくて「困った経験がある」人は約25%、自分の子どもに正しく伝える「自信がない」が73%に上る。
 今は、スマートフォン一つでどこからでも情報が取れてしまう。不確かな情報に触れる前に、学校での教育と並行して、親子間でも気兼ねなく性の話ができる環境を整えていくことも必要である。そのためには親世代もアンテナを高くし、信頼できる情報源を探しておくことも重要と考える。

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