アッヴィは12日、ベネトクラクスについて国内における再発または難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)に対する適応追加承認を、同日、厚労省に申請したと発表した。
ベネトクラクスは、B細胞リンパ腫2(BCL-2)と呼ばれる体内の特定タンパク質を標的とする経口BCL-2阻害剤で、がん細胞で失われてしまったアポトーシスというがん細胞の自然死または自己破壊の過程を回復させる作用がある。
日本においてベネトクラクスは、2019年9月に再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の適応症に対する治療薬として、製造販売承認を取得している。2020年6月には、急性骨髄性白血病(AML)に対する希少疾病用医薬品指定を厚生労働省より取得し、2021年3月にAMLの適応症に対する治療薬として製造販売承認を取得。また、2024年6月19日には、再発または難治性のMCLに対する希少疾病用医薬品指定を厚生労働省より取得した
今回の申請は、ベネトクラクスについて実施された海外P3試験(SYMPATICO試験)および国内P2試験(M20-075試験)の結果に基づくもの。SYMPATICO試験は、再発または難治性のMCL患者(267名)を対象に、ベネトクラクスおよびイブルチニブの併用療法をプラセボおよびイブルチニブの併用療法と比較するランダム化二重盲検P3試験である。一方のM20-075試験は、再発または難治性のMCLの日本人患者(13名)を対象に、ベネトクラクスおよびイブルチニブを併用投与した国内P2試験である。
MCLは悪性リンパ腫の非ホジキンリンパ腫(NHL)に分類され、リンパ節のマントル帯に由来するBリンパ球(白血球の一種)ががん化するB細胞リンパ腫の1つである。現在、欧米ではNHL症例全体の約6-9%で、増加傾向にある。
日本国内では、NHL症例全体の約3%で、MCL患者数は約2000人と報告されている。60歳代半ばの患者で多く発症し、男女比では女性よりも男性に多いとされている。約90%の患者は、初発時に病期III期又はIV期の進行期にある。また、多くの場合、MCLの初回治療後、高齢者では2-3年、若齢者では約5年で再発又は再燃に至ると報告されている。
現在、日本ではMCLに対する標準治療は確立されていない。自家造血幹細胞移植治療に適応のある患者は、強化型化学療法後に自家造血幹細胞移植を行うことを推奨されているが、大部分のMCL患者さんは高齢であり、強化型化学療法が適応とならないことが多いのが現状だ。
強化型化学療法が困難なMCL患者においては、推奨された複数の初期治療法がある一方で、これらの初期治療では高い全奏効率を示すことがあっても、大部分の患者は最終的には再発する。再発した場合、化学療法の効果は薬剤に関係なく一次治療の効果より劣るほか、急速な進行が認められ得るため、良好な忍容性を維持しつつ再発又は難治性のMCL患者の予後の改善を目指す新たな治療法の開発が求められている。
日本での再発または難治性のMCLに対するベネトクラクスの適応症については、現在開発中で、その安全性および有効性は確立されていない。