岐阜大学大学院医学系研究科感染症寄附講座の手塚宜行特任教授らのグループは26日、同学の学生を対象とした研究で、新型コロナワクチンmRNA接種後の有害事象が、朝食の摂取と十分な睡眠時間をとる習慣のある大学生において発生率が低くなる検証結果を発表した。
岐阜大学の大学生における新型コロナワクチン接種後の有害事象は、高い頻度で発生したが、生命を脅かされるような重篤なものや入院を要するものはなかった。特に、接種回数の多さ、女性、BMIの低さが有害事象の発生率の高さと関連していた。
生活習慣では、朝食の定期的な摂取と睡眠時間を長くとる生活習慣のある大学生は、有害事象の発生率が低いことが明らかになった。健康的な食事と睡眠習慣、理想体重の維持が若年成人における新型コロナワクチン接種後の有害事象を減らすことが確認された。これらの研究成果は、22日にVaccine: X誌(Elsevier社)のオンライン版で発表された。今後、他の種類のワクチンにおいても、有害事象の減少に関与する要因に関する研究の推進が期待される。
新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス感染に伴う入院や死亡など重篤な合併症を予防する効果が示されているが、特に若年成人では新型コロナワクチン接種に伴う有害事象の発生率が高く、それに対する懸念からワクチン接種を躊躇う人が多いのが現状だ。
そこで、岐阜大学の大学生を対象に、新型コロナワクチンの接種を受けた後の有害事象の発生率とそれを予防する要因を明らかにするために健康診断での生活習慣に関する情報と照らし合わせる研究を行った。
岐阜大学の大学生では、ワクチン接種当日もしくは翌日にワクチンを接種した部位の症状が89.7%、全身的な症状が64.3%に認められた(表1)。
ワクチン接種に関連する要因を調べたところ、ワクチン接種回数が増えるほど、および女性であるほど、接種した部位と全身的な症状の発現率は高くなった。
またBMIが高いほど、全身的な症状の発生率が低いことが分かった。さらに、ワクチン接種後の症状に関連する生活習慣を調べたところ、朝食を摂る頻度が高いほど、ワクチン接種当日の全身的な症状の発生率が低いことが分かった(表2)
細かい症状をみていくと、BMIが高くなるにつれて、ワクチンを接種した部位の発赤や頭痛、発熱が起こりにくくなることが判明した。
朝食を少なくとも週に2回以上摂取していれば、ワクチンを接種した部位のかゆみが起こりにくくなり、朝食の摂取頻度が増えるほど、腹痛・下痢などの全身的な症状の発生率が低くなることが分かった(図1)。
また、睡眠時間が長いほど、腹痛・下痢の発生率が低くなることも判明している(図2)。
健康的な食事と睡眠習慣、理想体重の維持が若年成人におけるmRNAワクチンの接種後の有害事象を減らすことが分かった。今後は他のワクチンなどでも同様の研究を行うことで、科学的な根拠をもって健康的な生活習慣の維持がワクチンの有害事象への懸念を払拭し、ワクチン接種を躊躇う人に対して、より不安の少ない予防接種の提供につながるものと期待される。