新しいクオリティの人材を増やしながら着実に開発プロジェクトをステージアップ 塩野義製薬手代木会長兼社長CEO

肥満治療薬「S-309309」はGLP-1作動薬のアンメットニーズ解消目指してライセンス活動再開

 塩野義製薬は7日、「2024年度SHIONOGI R&D Day」を開催し、手代木功会長兼社長CEOが、特に興味深い開発プロジェクトとして「オロロヒム(侵襲性アスペルギルス症、P3)」、「レダセムチド(S-005151、急性期脳梗塞、P2)」、「S-151128(慢性疼痛、P1)」、「レジニフェラトキシン(変形性膝関節症、P3)」を指摘。
 これらを加えたR&Dトータルで「現在は、売上を伸ばすフェーズである。中期経営計画(STS2030ビジョン)で掲げている売上収益2025年度5500億円、最終年度8000億円に向かってまっすぐに進んでいる」と言い切った。
 また、「こうして成長していく中で、現行の研究開発の人員・予算では無理があるので、一定の先行投資も含めて研究開発を進めて行きたい」と明言。今年度の研究開発費は1200億円であるが、営業利益に影響を及ぼさない形でどのようなリソースを確保するかを考えながら進めていく。
 米国サンディエゴにおける細菌感染症治療薬の研究開発拠点設立が、「バイオロジー、ケミストリーの人材を確保に効果的な役割も担っている」と報告し、「新しいクオリティの人材を増やしながら着実に開発プロジェクトをステージアップしていく」考えを示した。
 一方、話題の肥満治療薬「S-309309」については、‟注力領域における取り組み”の中で上原健城医薬開発本部長が言及した。 開発中の「S-309309」は、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2(MGAT2)阻害剤で、 小腸からの中性脂肪 (TAG)の吸収過程を阻害し、小腸上皮に食事性脂肪酸を蓄積する。加えて、迷走神経を介して摂食抑制を惹起する作用メカニズムを有する。
 上原氏は、米国で実施しているP2試験の結果について、「安全性では、GLP-1製剤で知られる下痢は起こらず、プラセボと比較して良好な忍容性が確認できた」と報告。
 有効性では、「単剤開発の可否判断の基準として設定していた、ベースラインからの体重減少率(群平均)は5%を超えなかったものの、新たな作用機序による体重減少効果が確認できた」とP2試験の成果を強調した。
 その上で、「単剤ではP3試験は進められないであろう」との認識を示し、「S-309309がどのようなアンメットニーズを満たすかについて、非臨床試験でGLP-1作動薬へのAdd-on効果を検討してきた」と明かした。GLP-1作動薬発売後のアンメットニーズとしては、「長期に安心して服薬(価格、副作用)」、「リバウンドしない」、「筋肉量を落とさない」などが指摘されている。
 上原氏は、「非臨床のデータからは、GLP-1製剤とS-309309の併用や切り替えにより、ゆるやかに体重をコントロールしながら体重低下を維持でき、筋肉量も落とさないことが期待できる」と紹介し、「GLP-1作動薬のアンメットニーズ解消目指して、S-309309開発のためのライセンス活動を再開した」と訴求した。

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