経口オレキシン2受容体作動薬「TAK-861」 ナルコレプシータイプ1のP2b試験で好結果 武田薬品

 武田薬品は3日、開発中の経口オレキシン2受容体作動薬「TAK-861」について、ナルコレプシータイプ1においてプラセボと比較したP2b試験で、統計学的に優位かつ臨床的に意義ある改善を示したと発表した。
 TAK-861 は、経口オレキシン2受容体(OX2R)作動薬であり、同試験結果から、NT1 患者が抱える疾患による負担を包括的に軽減する画期的な効果をもたらす可能性が示された。これらの試験結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の第38回年次総会である SLEEP2024において報告された。
 NT1患者112名を対象とした無作為化、二重盲検、プラセボ対照、反復投与試験である TAK-861-2001試験(NCT05687903)では、主要評価項目と副次評価項目において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、有効性は8週間の投与期間にわたり持続した。
 NT1は、慢性的で希少な神経疾患の一種で、オレキシンニューロンが著しく減少し、神経ペプチドであるオレキシンの脳内濃度や脳脊髄液内濃度が低下するため、過度の眠気が生じる疾患である。
 これまでに、NT1の背景にある病態生理を標的とする治療薬として承認された医薬品はない。NT1の患者は、日中の過度の眠気(EDS)、情動脱力発作(カタプレキシー)、夜間の睡眠分断、入眠時や睡眠覚醒時の幻覚や、睡眠麻痺の症状に苦しんでいる。
 これらの深刻な影響を伴う症状はQOLを著しく低下させ、仕事、学業や人間関係に深刻な影響を及ぼしている。TAK-861は、OX2R を選択的に刺激することで、NT1で見られるオレキシン欠乏状態を補うよう設計された薬剤である。SLEEP2024で紹介された臨床P2b試験の結果は、次の通り。

◆主要評価項目の覚醒維持検査(MWT)では、プラセボと比較して本試験で評価した TAK-861 の全ての用量で統計学的に有意かつ臨床的に意味のある睡眠潜時の延長が認められた(プラセボとの LS 平均差はすべて p≤0.001)。改善は 8 週間にわたって持続した。

◆エプワース眠気尺度(ESS)および 1 週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)を含む主な副次評価項目でも一貫した結果が得られ、眠気およびカタプレキシー(筋緊張の突然の消失)の頻度に関する主観的評価項目がプラセボと比較して顕著に改善し、その改善は 8 週間にわたって持続した。

◆これらの持続的な改善の結果として、同試験のNT1 患者の大部分は、8週間の投与期間終了時までにMWTおよびESSが正常範囲内に収まった。

◆同試験を完了した被験者の大部分は長期継続投与(LTE)試験に登録され、一部の患者は投与期間が1 年に達した。

◆同試験で評価した探索的評価項目においても、大部分の被験者でナルコレプシーの症状および日常生活の機能に意味のある改善が認められた。これらのデータは、同発表および今後の医学学会等でのポスターセッションで発表する予定である。

◆TAK-861の安全性および忍容性は概ね良好であり、治験薬と関連のある重篤な有害事象または有害事象による投与中止はなかった。

◆P2b試験および現在実施中のLTEにおいて、肝毒性や視覚障害の事例は認められていない。主な有害事象は不眠症、尿意切迫、頻尿および唾液分泌過多であった。大部分の有害事象の重症度は軽度から中等度であり、そのほとんどが投与後 1~2 日以内に発現し、一過性であった。

 武田薬品は、同試験結果に基づき、世界各国の医薬品規制当局との協議によってNT1を対象とする TAK-861 の国際共同P3試験を2024年度上期に開始する予定である。米国FDAは、P2b試験データに基づき、TAK-861をNT1患者のEDS治療薬としてブレークスルーセラピーに指定した。
 ブレークスルーセラピー指定は、重篤または生命が脅かされる疾患の治療を目的とした医薬品であり、かつ臨床的に重要な少なくとも1つ以上のエンドポイントにおいて既存の治療法より大幅な改善を示唆する予備的な臨床成績が提示された医薬品に対して、開発および審査を促進するために構築された制度である。
 
◆Sarah Sheikh武田薬品ニューロサイエンス領域ユニットヘッド兼グローバルデベロップメントヘッド(MD M.Sc., B.M., B.Ch, MRCP)のコメント
 本試験において、TAK-861は、有効性と安全性のバランスがとれており、NT1 患者さんの新たな標準治療となる可能性がある。私たちは、オレキシンの生理作用がもつあらゆる可能性を研究し、TAK-861 を後期臨床開発へと進め、患者さんに意義ある変化をもたらす力をもつファースト・イン・クラス治療薬をお届けすることを目標として努力していく。

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