ドクタートラストが、約5600人のデータをもとに平均睡眠時間とストレス度合の関係性を調査した結果、平均睡眠時間が「5時間未満」の群が最も悪く、「7時間以上9時間未満」の群が最も良かったことが判明した。
「低ストレス者」割合が最も多いのは、平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」で、「5時間未満」の約4倍であった。また、平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」の群は「疲労感」「不安感」が少なかった。
ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。
今回の結果は、2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、「平均睡眠時間」についての回答が得られた約5600人のデータをもとに、平均睡眠時間とストレス度合の関係性を調査したもの。
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックと同時に、生活習慣に関する6つの設問が追加できる。生活習慣設問の一つである「平均睡眠時間」と「総合健康リスク」、「高ストレス者率」の関係をそれぞれ分析した結果、平均睡眠時間が「5時間未満」の群が最も悪く、「7時間以上9時間未満」の群が最も良かったことが判明した。
今回は「5時間未満」と「7時間以上9時間未満」の群に着目し、ストレス度合の関係性を分析した。
図1は、平均睡眠時間の分布を示したものだ。最も多かったのは「5時間以上6時間未満」、以下「6時間以上7時間未満」、「5時間未満」と続く。
【調査結果】
1、 平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」の群は、低ストレス者が睡眠「5時間未満」の群の約4倍
ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、ストレスチェック受検者のストレスレベルをA~Eの5パターンで示している。A判定に近いほどストレスレベルが低く、E判定は高ストレス者を示す。
今回はA・B判定を「低ストレス者」、D・E判定を「ストレス保有者」とした。
図2のとおり、平均睡眠時間「5時間未満」の群では全体の62.4%が「ストレス保有者」であったのに対して、「7時間以上9時間未満」の群では26.5%にとどまった。「ストレス保有者」の割合について、約2.3倍の開きがあることがわかる。
また、平均睡眠時間「5時間未満」の群における「低ストレス者」は9.3%のみだったのに対して、「7時間以上9時間未満」の群では38.1%であった。「低ストレス者」の割合について、約4倍の開きがある結果となった。
つまり、平均睡眠時間が「5時間未満」の群では「ストレス保有者」が圧倒的に多く、「7時間以上9時間未満」の群では「低ストレス者」の割合が大きい。
2、平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」の群では睡眠不足で見られる、疲労感・不安感が少ない
ストレスチェックの中で、ストレス反応の各設問に対して「ほとんどなかった」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとんどいつもあった」の4択形式で回答した。
図3は尺度「疲労感」を構成する設問について、図4は尺度「不安感」を構成する設問について、平均睡眠時間が「5時間未満」の群と「7時間以上9時間未満」の群において良好な回答をした割合を示したものだ。
図3の尺度「疲労感」は「ひどく疲れた」「へとへとだ」「だるい」、図4の尺度「不安感」という尺度は「気がはりつめている」「不安だ」「落着かない」のそれぞれ3つの設問から構成されている。
どの設問も平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」の群は「5時間未満」の群より良好回答率が高い結果となった。睡眠には疲労回復や、心を整える効果が期待できるが、「7時間以上9時間未満」の群では、疲労感や不安感を覚えている人が少ない状況となっている。
さらに、図5では、「よく眠れない」という設問に対して、平均睡眠時間が「5時間未満」の群と「7時間以上9時間未満」の群において良好な回答をした割合を示した。
必要な睡眠時間は人によって異なるため、睡眠は長さだけでなく質も重要とされているが、質の良い睡眠がとれているかどうかは、「自覚症状としてよく眠れたと感じられるか」が目安となる。
図5のとおり、平均睡眠時間が「5時間未満」の群では「よく眠れている」と回答をしている割合が55.1%だったのに対し、「7時間以上9時間未満」の群では91.2%となり、よく眠れたと感じられている人が多い結果となった。
【考察】
平均睡眠時間が「5時間未満」と「7時間以上9時間未満」の群に着目し、ストレス度合の関係性を調査した結果、「7時間以上9時間未満」の群では「5時間未満」の群にくらべ、「低ストレス者」の割合が約4倍多かった。また、「ストレス保有者」の割合も半分以下となった。
さらに、「7時間以上9時間未満」の群では睡眠不足で見られる、疲労感・不安感が「5時間未満」の群よりも少なく、よく眠れたと感じている人が多い結果となった。
今回の調査だけでは、眠れているから心が安定しているのか、心が安定しているから眠れているのか、どちらが先かを言及することまではできないが、睡眠時間と心の安定には関係性があることがわかる。
睡眠時間を確保することの大切さを理解し、一人でも多くの人が生き生きとした毎日が送れるきっかけになれば幸いである。