BofA証券の新株予約権行使を停止し、新たな資金調達実施 アンジェス

 アンジェスは19日、BofA証券に対して同日付けで第43回新株予約権の行使停止要請を通知し、4月5日付で残存する第 43回新株予約権の全てを取得し、取得後直ちに消却すると発表した。
 加えて、Cantor Fitzgerald Europeとの間で、新株予約権付社債発行プログラム設定に関する契約を締結し、新たに割当予定先に対して同プログラムに基づく第三者割当による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行及び、第三者割当による第44回新株予約権を発行して新たな資金調達を実施する。
 同新株予約権付社債及び新株予約権による資金調達は、アンジェスの事業基盤強化、安定した財務基盤の確保を目的としたもの。
 BofA証券に対する第43回新株予約権の行使停止要請は、2023年7月12日の同新株予約権発行後も同社株価は同年12月以降下限行使価格74円を度々下回る株価で推移しており、足元では行使が進んでいない状況が続いていることに起因する。
 当初は、54億1800万円を調達し、①慢性動脈閉塞症のHGF遺伝子治療薬の正式承認に向けた製造販売費用及びグローバルでの製品価値最大化のための研究開発費用(発行時における調達予定資金の額 32億18 00万円)、②早老症治療剤「ゾキンヴィ」の正式承認に向けた製造販売費用(発行時における調達予定資金の額15億円)、及び③慢性椎間板性腰痛症治療用 NF-kBデコイオリゴ DNA の国内におけるP2試験費用(発行時における調達予定資金の額7億円)の各使途に係る資金を調達することを目的としていた。
 だが、第43回新株予約権の発行及びその行使により現に調達した資金の金額は、本年3月19日時点で約12億0600万円で、発行時における調達予定資金の総額約54億1800万円を42億1200万円下回るものとなっている。
 こうした理由でアンジェスは、第43回新株予約権についてBofA証券に対し19日付で2024年3月21日以降の行使の停止を要請するとともに、2024年4月5日付で残存する第43回新株予約権の全てを取得し、取得後直ちに消却する。併せて新たに割当予定先に対して同新株予約権付社債及び同新株予約権の発行を行う。
 同新株予約権付社債及び本新株予約権は、現在の株価水準を踏まえて転換価額及び行使価額の設定を行うとともに、今後の株価水準の変動に合わせて転換価額または行使価額が修正されるよう、日次で転換価額または行使価額の修正が生じる転換価額修正条項及び行使価額修正条項を設け、転換または行使が進み易い設計となっている。
 今回Cantor Fitzgerald Europeと締結する新株予約権付社債発行プログラムは、アンジェスが割当予定先に対して、最大払込金額総額26億円の新株予約権付社債を第三者割当により発行することを可能とするもので、第1回新株予約権付社債第三者割当及び第2回新株予約権付社債第三者割当の合計2回の割当により発行される。
 同第三者割当による資金調達には、次の5つの目的がある。
◆1つ目は、慢性動脈閉塞症のHGF遺伝子治療薬「コラテジェン」のグローバルでの製品価値最大化のための研究開発費用である。主な使途は、HGF 遺伝子治療用製品の製剤の調達費用と米国での今後の臨床試験費用の一部であり、その他、グローバル展開に対応可能な製法、生産プロセスの効率化を企図する研究開発費用として用いる。
 アンジェスは、発売時より実施していた製造販売後承認条件評価の使用成績比較調査での集計結果において、従前申請の治験結果の再現性が確認できたと判断し、条件解除に向け2023 年5月31日厚労省に製造販売承認を申請した。
 また、2020年1月からは、米国において、閉塞性動脈硬化症を対象とした後期P2試験を実施しており、2022年末までに目標症例数の投与を完了し、経過観察を実施している。

◆2つ目は、早老症治療剤「ゾキンヴィ」の上市に向けた製剤の購入、その他販売関連費用及びEiger 社(米国)に支払うマイルストーン費用である。アンジェスは、2022 年5月10日にEiger社とハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチー(PL)の適応症の治療薬であるゾキンヴィについて、日本における独占販売契約を締結した。
 2023年3月に、ゾキンヴィは厚労省により希少疾病医薬品(オーファン・ドラッグ)に指定された。
 アンジェスは、2023 年5月12日にゾキンヴィの製造販売承認申請を行い、2024 年1月 18 日に厚労省より製造販売承認を取得し、上市に向けた活動をしている。

◆3つ目は、慢性椎間板性腰痛症治療用 NF-kB デコイオリゴDNAの国内におけるP2試験費用である。主な用途として、治験薬の製造費用、臨床試験費用があり、その他アカデミアとの共同研究費用として用いる。
 NF-κBデコイオリゴ DNAは、2023 年1月 30 日、日本国内においてP2試験実施を決定している。また、2023年3月20日、このP2試験への協力について、塩野義製薬との間で契約を締結し、塩野義製薬が臨床試験費用の一部を負担する予定だ。
 これにより、アンジェスの臨床試験の費用負担が軽減されており、当該臨床試験の費用は今回の調達で賄えるものと想定している。
 なお、これら3つの目的については、第43回新株予約権の発行による資金で充当する予定であったが、調達金額が予定金額に満たないため、今回の資金調達により取得した資金において実施する。

◆4つ目は、希少遺伝性疾患検査を主目的としたアンジェスが運営する衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)」の検査受託事業拡大のための資金だ。ACRLでは現在、希少疾患の医療と研究を推進する会(CReARID)が展開する拡大新生児スクリーニングである「オプショナルスクリーニング」を受託している。
 2023年度は、拡大新生児スクリーニングの受検者が前年度に比べ2倍程度増加したことに加え、こども家庭庁による脊髄性筋萎縮症(SMA)・重症複合免疫不全症(SCID)の2疾患を新生児マススクリーニングに追加する実証事業が発表されるなど希少遺伝性疾患のスクリーニング検査が注目された年となる。
 こうした状況のもと、いくつかの地方自治体から拡大新生児スクリーニングに関する相談を受けており、CReARID以外から2024年上期中の受託開始に向けた準備を進めている。
 加えて、希少遺伝性疾患の確定のための遺伝学的検査の技術対応を完了し、来年度から受託を開始する準備を進めている。
 さらに、治療効果をモニタリングするバイオマーカーの検査は、実施体制の構築を進めており、希少遺伝性疾患のスクリーニングから診断、治療に至るまでの包括的な検査体制の提供を目指していく。

◆5つ目は、運転資金。アンジェスは、依然として開発への先行投資の段階にあるため営業キャッシュ・フロー赤字の計上が継続している状況にある。また、今後もかかる状態が継続することが見込まれる。そのため、同社は、2024年4月以降の運転資金(人件費、支払報酬、旅費交通費、地代家賃等)の一部を調達することも同第三者割当による資金調達の目的としている。

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