早稲田大学理工学術院総合研究所 向井香瑛次席研究員、同大理工学術院 渡邊克巳教授らの研究グループは、親しい間柄にある他者の存在が、我々の生理的反応にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、親しい友人が目の前(パーソナルスペース内)にいるとき、副交感神経活動が活性化し心拍数が減少することが明らかになった。
同研究成果は、円滑なコミュニケーション確立のための介入法や臨床的な示唆という観点から、発達科学や社会科学、精神病理学等の関連領域への貢献が期待される。
他者の存在は、我々の主観的な気持ちを変化させると同時に、心拍数などの生理的な反応を変化させることが知られている。向井氏らは、友人ペアをさまざまな位置で配置したときの心電図データを記録したところ、正面に友人が存在するとき、副交感神経の活動が活性化することで、心拍数が減少することが明らかになった。
また、右手側に友人が存在するとき、副交感神経活動の活性化はみられないが、正面にいる時と同様に心拍数が減少することも分かった。
同研究成果は、Springer Nature社発行の『Scientific Reports』に2024年2月21日(現地時間)にオンラインで掲載された(論文名:Electrocardiographic activity depends on the relative position between intimate persons )。
◆向井香瑛次席研究員のコメント
目覚ましいデジタル技術の普及により、私たちは遠隔地にいる他者とも簡単に連絡やコミュケーションを取ることができる時代になった。本研究は、あえてそのような時代に“オフラインでのやりとりが私たちの身体にどのような変化を生み出すのか?”という問いをリサーチクエスチョンに据え、取り組んできた研究である。
今後も引き続き、人同士のオフラインのコミュニケーション場面に着目し、二者や集団内でのやりとりが私たち自身にどのような変化を生じさせているのかを調べていきたいと思う。