塩野義製薬は13日、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、日本、韓国、ベトナムで実施したP2/3試験(SCORPIO-SR試験) Phase 3 part結果がの結果が米国医師会雑誌「JAMA Network Open誌」に掲載されたと発表した。
同試験は、オミクロン株流行期に、ゾコーバ125mg、250mgの2用量(初日のみそれぞれ375mg、750mg)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果を検証することを主目的に、軽症/中等症患者を対象に実施した無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験。
日本、韓国、ベトナムにおいて重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず、発症から120時間以内の軽症/中等症患者1821例が登録された。
これらの患者は、約3割が重症化リスク因子を有しており、9割以上がワクチン接種済みであった。同試験においてゾコーバは、オミクロン株流行期に実施した臨床試験で、COVID-19症状の罹病期間を主要評価項目として、世界で初めてプラセボに対する優越性を検証し、日本において125 mg(初日のみ375 mg)の用量で2022年11月22日に緊急承認されている。
同論文では、新たな結果を含む同試験の結果が発表された。 主な試験結果(承認用量を中心とした概説)は、次の通り。
◆主要評価項目の主たる解析(既報)では、発症から72時間未満に割付けられた患者集団(1,030名)において、ゾコーバ125 mg投与により、オミクロン株感染時に特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))が消失するまでの時間をプラセボ群と比較して有意に短縮し、症状に対する改善効果が確認された(p=0.04)。
症状消失までの時間の中央値は、同薬125mg群では約7日間、プラセボ群では約8日間であった。
◆主要な副次評価項目(既報)では、ゾコーバ125 mg投与により、投与4日目におけるウイルスRNA量をプラセボ群と比較して有意に減少した(4日目におけるベースラインからのウイルスRNA変化量は、同薬125mg群では-2.48 log10 copies/mL、プラセボ群では-1.01 log10 copies/mL;p<0.0001)。
ゾコーバ125mg投与により、感染性を有するSARS-CoV-2ウイルス(ウイルス力価)の陰性化が最初に確認されるまでの時間を、プラセボ群と比較して有意に短縮した(p<0.001)。
ウイルス力価陰性化までの時間の中央値は、本薬125 mg群では36.2時間、プラセボ群では65.3時間であった。
同試験は、COVID-19に対する経口抗ウイルス薬の投与により、ウイルス力価の陰性化が最初に確認されるまでの時間をプラセボ群に対して統計学的に有意に短縮することを示した初めての試験である。
◆安全性(一部新規)については、忍容性は良好であり、ほとんどの有害事象は軽度で死亡例の報告はなかった。ゾコーバ125mg群で比較的高頻度に見られた副作用は、高比重リポ蛋白の減少および血中トリグリセリドの上昇であった。
2例で重篤な有害事象が報告されたが、いずれも同薬との因果関係はなかった。
ゾコーバは、海外では、シンガポールにおいて2023年11月にSAR(Special Access Route)申請に基づいた承認を受けたことにより、シンガポール国内の一部の施設において使用が可能となっている。
SAR申請は、未承認の治療薬を輸入・供給するためにシンガポールが独自に有する薬事システムで、医療機関に所属する各医師からの申請を必要とする。
米国では、開発の促進や審査の迅速化を目的とするファストトラック指定(Fast Track designation)を米国FDAから受領している。
COVID-19は、様々な急性および持続的な健康問題を引き起こす深刻な感染症であり、重症化して入院や死亡のリスクを伴う場合がある。また、流行予測が困難であり、世界的に人口、医療システム、経済に大きな影響が及んでいる。
さらに、新たな変異が出現し続けており、将来的な感染拡大も予想されている。現在、予防ワクチンや一部の治療法が利用可能であるものの、WHOはさらなるCOVID-19の治療オプションが必要であることを強調している。