保健薬局の後発品入手状況はさらに悪化 大阪府薬が第3回「医薬品の流通状況アンケート」調査結果公表

乾氏

 大阪府薬剤師会は8日、薬局会員を対象に慢性的に不足している医療用医薬品の実態を明らかにするために実施した第3回「医薬品の流通状況アンケート」調査結果を公表した。
 同調査は、2020年12月の小林化工の抗真菌薬への異成分混入事故に端を発した後発品を中心とする医薬品不足に伴い、昨年11月20日~30日まで実施されたもの。
 大阪府下3534薬局のうち1628 薬局(45.67%)が回答した今回のアンケート調査では、「希望通り医薬品が供給されている」と答えたのはわずか2薬局に過ぎなかった。「納品が滞り、調剤業務に影響が出る場合がある」が1128薬局、「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」が424薬局を占めた。

 また、後発医薬品の入手状況が「 改善している」と答えた薬局は僅か8%(131軒)にとどまり、「状況が悪くなった」、「変わらない」と答えた薬局の合計が92%(1497軒)に上り、羽尻昌功常務理事は、「状況は全く良くなっておらず、袪痰薬などむしろ悪くなっている品目も増えている」と分析する。
 乾英夫大阪府薬会長は、これらのアンケート調査結果を受けて「一日も早く、安心・安全に正常な医薬品供給ができる状態に戻し、国民の健康な生活を確保できるよう関係各位の迅速・適切な対応を切望する」と強いコメントを出している。
 2020年12月、小林化工の異成分混入事故に端を発し、各後発医薬品メーカーの GMP 遵守違反の結果、販売停止・回収等が頻繁に行われ、昨年12月現在、4271 品目にも及ぶ医薬品が出荷停止、限定出荷されており、後発医薬品以外の医薬品も1176 品目が出荷停止、限定出荷となっている(日本製薬団体連合会)。
 今回のアンケート結果においても、本来服薬治療のための医薬品を安定的に提供すべき薬局が、必要とする患者に安全・安心な医薬品供給ができていない状況を示す結果となった。
 具体的には、希望する後発医薬品が発注数通り納品されている薬局は1628件中わずか2件であり、95%以上(昨年調査では 90%)の薬局が供給不安定で調剤業務に支障が生じている。
 また、後発医薬品の入手について「改善していると感じている」と回答した薬局は僅か8%で、「状況が悪くなった」、「変わらない」の回答を合わせると 92%に上り、後発品の入手傾向はさらに悪化傾向にある。
 また、自由回答欄には、① 国の進めてきた後発医薬品使用促進の施策に対しての歪を感じる、② 国・都道府県から与える医薬品製造販売等許可の適否、③各後発医薬品メーカーの法令遵守、製造能力、備蓄能力等について一層の国の精査が必要、④ 薬価(中間年)改定による下落改定することによる製造業者の疲弊、⑤ 現状の医薬品供給の状況を少しでも解消すべく、地域連携を活用し薬局間で分譲し医薬品供給を何とか果たしてしのいでいるー等の意見が多くみられた。
 同アンケート調査結果から、処方を行う医師側と調剤を行う薬剤師側での医薬品の供給状況不足の認識の違いにより、「発生する患者への対応で疲弊する薬局薬剤」の現状が浮き彫りになった。薬局薬剤師の大多数は、異常な供給状態に真摯に向き合う中、状況の認識不足から処方されたケースにより、不本意な患者対応の繰り返しによりさらなる疲弊を来しているのが現状だ。
 後発医薬品については、長年その品質や安全性を説明し、使用を進めてきたにもかかわらず、こうした事態から、患者の不安をぬぐえず、使用の中断となる。引いては説明責任を果たしてきた薬剤師に向けての不信感にもつながり、結果として患者が不利益を被るので、早期の安定供給改善が望まれる。3回目の「医薬品の流通状況アンケート」調査の概要、結果の詳細は、次の通り。

回答した地域薬剤師会と回答者の役職

設問 13.現状の医薬品の流通及び医薬品に係わるご意見をお聞かせください。
メーカーに対して(907件)
安定供給要望に関する意見 582件
現状に対して患者、処方医、国民、薬局等に対しての説明不足に対する意見 122件
GMPの遵守に対する意見 89件
出荷調整による調剤に支障、入荷不可、説明が無い等に対する意見 81件
生産効率の上昇、製造ラインの確保等に対する意見 72件
新規発注、納入歴(実績)に対する意見 49件
安価の医薬品ほど欠品しているのではないかとの意見 45件
薬価改正の考え方の見直しを国に対して必要との意見 8件
・薬を作ってください!と言いたいが、現状の仕組みでは無理がある。
・一般用医薬品をテレビ CM で宣伝しているのに医療用が不足している点。
・必要性があるにも関わらず製造中止するのはやめていただきたい。
・生命の存続に関わる薬を製造販売しているという責務を持っていただきたい。
・処方元の病院への連絡は?現場の困っている現状が、メーカーには伝わっていない。
薬局・薬剤師・患者に対して(544件)
薬局、薬剤師、患者において相互に現状の理解が必要との意見 195件
患者様にご迷惑を(変更・供給不可・不足・ご心配等)かけた 148件
仕事量増大、薬局薬剤師の疲弊等を訴える意見 67件
医薬品の購入(買占め、不平等な納品等)に対する意見 44件
地域又は薬剤師会を通じて協力した(したい) 38件
・他薬局へ、苦しい中で分譲していただきありがとうございます。
・何がなんでも揃えるという気持ちを持ち続けて欲しい。
・今後の対応が薬局薬剤師の未来にかかわる。見せましょう。底力を。
・実績に応じた納品しか入って来ず、場合によっては全く手に入らないので、近隣の薬局、
医療機関との情報共有ができるような仕組みがあればいいなと思います。
・処方薬がない時に、患者が他局に行くと言ったときは、どこへ行くか聞いてその薬局に連
絡している。
国に対して(967件)
医療費抑制、施策等に対する意見 468件
後発医薬品の薬価等対する意見 393件
安定供給要望に対する意見 266件
薬局の現状の理解・周知等を求める意見 71件
状況下においての調剤報酬等に対する意見 66件

製造業者に対しての GMP 省令の遵守を求める意見 44件
安定供給できない薬剤の薬価収載削除等を要望する意見 7件
・風邪、インフルエンザの流行期になると、今以上のお薬不足になるのは、目に見えている。
不利益を被るのは、患者様で有ることを国は、真剣に考えるべきだ。
・GLP−1製剤など本当に必要としている患者様へ供給できないのは現場ではどうするこ
ともできないので自費処方の制限などを求めたい。
・メーカー、卸、医療機関、薬局、患者、行政、全体が負担と利益を分かち合って、うまく
回る仕組みをお願いします。
・薬剤師の本来の仕事にとても支障をきたしており、情報収集も必要だが早急に手立てを打
ってほしい。現在の状態は国が中心にならないと解決しない。企業努力だけではない。
・流通状況を理解いただき、適切な通達、一般名処方の義務化の実施をお願いします。また、
先発額差の患者様負担増についてはこのご時世クレーム増加に繋がるのでもう少し実情を
鑑みた取り組みをお願いします。
その他
・この状況がいったいいつまで続くのか?状況は以前より悪化している状態です。国民への
周知に関して薬局のみでの対応では限界があります。
・まずは一番大事なことは、患者に薬が適正に必要なだけ行き渡ることです。コロナで各所
それぞれが疲弊状態にあると思います。メーカー・病院・薬局・国がしっかりと連携して、
改善に向けて同じ方向を向いていかなければ、新たな感染症が流行した際に同様の問題やト
ラブル・危機が生じてくると思います。
・マスメディアにも正しい情報収集と提供を望む。
・医師に対して、供給不安定品目の多いなか、不足している医薬品について把握していただ
き、逼迫している品目については必要量以上処方しないよう協力をお願いします。
・医薬品の流通に対して、改善の見通しが立たないことが何よりつらいです。対人業務への
転換と言われていますが、対物業務に手間を取られておりそれどころではない印象です。
・卸、メーカーのできることは限られています。後発医薬品の推進、薬価の引き下げなど制
度上の問題にまずは薬剤師会として国に意見を述べるべきです。マスコミなどを使い情報を
発信し、今の状況を国民に理解してもらえるようにと考えます。
・後発医薬品がやっと入荷しても、薬価よりも高値で(1.6 倍以上の時も有る)納品される
事もあり、問屋に確認しても「仕方がない」と言われる。腑に落ちない。
・最近やっとニュースでこの問題が取り上げられてきたが、もっと国とメーカーが協力して、
特に医師、患者、一般市民に大々的に周知していって欲しい。
・薬局側は薬が入荷できない事に対し謝られることがあるが、本当に謝らないといけないの
は適切な治療ができない処方医とその治療を受けられない患者様であることを分かってほ
しい。


  

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