住友ファーマの野村博社長は5日、大阪市内で会見し、2023年度第3四半期の実績について「販売費及び一般管理費、研究開発費は、為替差を除けばほぼ予定通りであった。昨年7月に8つの会社を一つにする北米再編を行った中で、コストマネージメントは十分できた」と評価した上で、「売上高が大幅に下回ったことが今回の残念な結果に繋がった」と振り返った。
2024年度業績の黒字転換では、「北米でのさらなる効率的な組織運営、研究開発費の削減、いくつかの資産売却を行って実現する」考えを強調した。
昨年4月から限定出荷していたツイミーグ(糖尿病薬)は、「在庫が積み上がって昨年12月20日より通常出荷している。鈴鹿工場で3交代で製造しており、1カ月経過したが、十分な在庫を確保している」
会見で野村氏は、研究開発費の削減について「 抗がん剤のTP-3654(骨髄線維症)、DSP-5336(急性骨髄性白血病)など、 より可能性のある剤に配分していく」方針を示した。さらに、2023年度業績予想下方修正の主要因となった「オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の北米での基幹3製品についても改めて言及。「いずれも現状のままということはありえない。成長していく。一定の水準になれば再び十分な収益を稼ぎ出すことができる」と強調し、「そこからは、研究開発も含めて従来の活動をしていくことが可能になる」見通しを示した。そのタイミングについては、「中長期の事業計画をもう一度見直して、改めて発表したい」と述べた。
一方、開発の進捗が早い期待のパイプラインには、TP-3654とDSP-5336の2つの抗がん剤がある。
TP-3654は、単剤P1/2(日米豪伊英)を実施中で、骨髄線維症は治療オプションが無いため、2022年5月には骨髄線維症の適応でFDAからオーファンドラッグ指定を受領した。今後は、JAK阻害剤との併用試験開始を検討し、2027年度内に骨髄線維症を対象とした検証的試験結果の取得を目指している。
DSP-5336は、単剤P1/2(日米加、韓国、台湾、シンガポール)を実施中で、EU当局から治験実施が許可され、治験実施地域を拡大している。2022年6月に急性骨髄性白血病の適応で FDAからオーファンドラッグ指定を受領しており、急性骨髄性白血病を適応症として2026年度内に日本および米国での承認取得を目指している。
再生・細胞医薬事業では、木村徹代表取締役専務執行役員が、まず、「従来の医薬品は、細胞や組織、臓器の機能を調節することで疾患を治療するが、パーキンソン病(ドパミン神経)、脊髄損傷(脊髄神経)のように、細胞・組織・臓器が不可逆的に失われる疾患・傷害に対しては根本的な治療効果は期待できない」と指摘。
その上で、「再生医療・細胞医薬は、細胞や組織・臓器を補充、失われた機能の回復が期待できる」と有用性を訴求した。
同社は、2021年度にリサイミック(小児先天性無胸腺症の免疫再構築)を米国で上市し、2024年度にはDSP-1083(パーキンソン病治療用他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞)の国内上市を予定している。
2027年度には、日本での製品上市の成功を通じた再生医療領域(中枢神経、眼科、希少疾患)での国内リーディングポジションを確立し、グローバル売上100億円以上を掲げている。
2032年度には、高度な生産技術と最先端サイエンスを追求して領域(中枢神経、眼科、希少疾患、末梢臓器)・地域を拡大し、グローバル売上1000億円以上を目指す。
開発中のウロタロントについては野村氏が、「P2試験で有効な結果が出ているが、残念ながら統合失調症の2つのフェーズ3試験は失敗に終わった。まだ2本の試験が進行中である。失敗したP3試験は、提携している大塚製薬と今後の進め方を協議している」と報告し、「作用機序がユニークで、従来の向精神病薬のカテゴリーとは違うのでそのポテンシャルは高い」と期待を寄せた。