能登半島地震被災地支援に関する記者説明会開催
大阪府薬剤師会は25日、能登半島地震被災地支援に関する記者説明会を開催し、乾英夫会長や伊藤憲一郎副会長ら被災地に派遣された5名の役員が出席。全国から派遣された支援薬剤師の出動拠点となっている日本薬剤師会柴垣本部(羽咋市)の業務を大阪府薬が一手に引き受けていることや、17日に派遣した門前町のモバイルファーマシーの現況などが報告された。
また、現地状況では、6日~10日の珠洲市の災害処方箋では、解熱剤、咳止め、抗生物質の処方が多く、能登半島に300箇所、輪島に150箇所ある避難所の中で、救護班に所在が確認されている避難所は医薬品の供給が充足している。
今後は、現地の医療機関の復活状況を鑑みながら、できるだけ災害処方箋から従来の保険調剤に戻していく施策が講じられている。大阪府薬における能登半島地震に関する時系列対応は次の通り。
1月1日石川県能登地方を震源とする地震が発生し、大阪府薬では3日に災害対策本部を設置。8日に児玉孝大阪府薬顧問(前日薬会長)が金沢市の石川県薬剤師会に出向き、2日間情報収集した。
9日に第1陣支援薬剤師として、伊藤副会長と山原大輝理事の2名が輪島市に入った(1月12日まで)。 10日に地域薬剤師会へ支援薬剤師の派遣依頼を実施。地域薬剤師会からの支援薬剤師の応募は21名(1月25日現在)に上る。
12日には、宮田憲一副会長、菱谷博次専務理事が、日薬のスキームにより全国から派遣されている支援薬剤師の被災地への出動拠点である日本薬剤師会柴垣本部(羽咋市)に派遣された。柴垣本部からは、珠洲市、能登町、穴水町、輪島市、門前町の5地域に支援薬剤師が派遣されている。
同本部は、当面、大阪府薬役員1名、職員1名が4泊5日を基本に、一切の業務を遂行するとともに継続支援する。
13日には、大阪府医師会JMAT(災害医療チーム)先駆隊の一員として薬剤師1名が帯同。同チームの医薬品は大阪府薬が手配した。
17日には、日薬の要請を受け、薬局機能を搭載した大阪府薬剤師会のモバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)が輪島市門前町に向けて出発した。同車両とともに、第4陣となる支援薬剤師として山原理事、有澤幸大氏が現地に派遣された。19日には、堀越博一常務理事が柴垣本部に派遣され、21日に帰阪した。
今後、1月末まで大阪府薬のモバイルファーマシーには延べ11人(地域の薬剤師7人)の支援薬剤師が派遣される。柴垣本部へは大阪府薬の役員・職員が延べ13人出動する。
全国からの支援薬剤師の派遣は、日本薬剤師会の災害対策本部のスキームに従って実施されている。現在、石川県珠洲市、輪島市、輪島市門前町、穴水町、宇出津町の5地域で、日薬から派遣された薬剤師がモバイルファーマシーで、災害処方箋を応需している。
乾会長は、モバイルファーマシーの現況について、「全国に20台装備されている。被災地には5地域に1台ずつ入っており、10日から2週間で交代するスケジュールが組まれている。大阪府薬のモバイルファーマシーは、2月3日を目途に門前町に滞在する」と説明した。
柴垣本部についても「支援薬剤師が、日薬・石川県薬の対策本部が設置されている金沢市に宿泊して、5地域に出向くにはかなり時間が掛かる」と述べ、5地域への宿泊拠点になっている羽咋市の国立能登青少年交流の家に日薬の柴垣本部が設置された経緯を話す。
柴垣本部は、「各支援地域へ向かう支援薬剤師の宿泊施設」、「必要な医薬品の搬送中継点」、「その他、情報収集・共有」の役割を担っている。
日薬から「大阪府薬に柴垣本部の業務を一手に引き受けてほしい」との依頼があり、「12日から大阪府薬の役員1名、事務局1名の2名体制を組んで、途切れないように派遣を行っている」(乾氏)。
菱谷氏(12日~15日、柴垣本部)は、「ちなみに、現地の道路交通事情から、柴垣本部から門前町まで片道1時間半、同じく輪島市まで3時間、珠洲市まで4時間半、能登町まで3時間、穴水町まで2時間の移動時間を要する」と説明した。
第一陣として輪島地区に派遣(9日~12日まで)された伊藤氏は、「災害診療所が立ち上がっておらず、様々な救護班が患者を診察していた。各救護班の災害処方箋をどのように受けるのかが課題であった」と地震発生当初の救護活動の状況を振り返った。
また、「道路が遮断され、季節も冬で、現地に薬剤師が常駐できないため、宿泊拠点の青少年の家と現地を効率良く連携していくかについても協議が重ねられた」
柴垣本部の立ち上げに携わった宮田憲一副会長(12日から15日)は、「各都道府県から入れ替わり立ち替わり派遣される支援薬剤師が現地にしっかり入れるように調整した」と強調する。さらに、「柴垣本部で珠洲市に派遣されている岐阜県のモバイルファーマシーの災害処方箋(6日~10日)を確認したところ、解熱剤、咳止め、抗生物質の処方が多かった」。
山原氏は、「能登半島に300箇所、輪島に150箇所の避難所がある。第一陣(9日~12日)として判る範囲で輪島市の避難所を回って情報を収集した。現在も救護班が存在を認知していない小さな避難所がある」と紹介し、「存在が確認されていない避難所を除けば、医薬品の供給は充足している」と語った。
門前町の大阪府薬のモバイルファーマシーの様子(17日~19日)についても「宮城県の車両を引き継いだ。今のところ落ち着いており、ここでも避難所を回りながら状況を確認した」
モバイルファーマシーへの医薬品供給は、「前の車両から引き継ぎ、不足品目は地元卸の明祥(アルフレッサグループ)に発注すれば2日~3日で配送される」
堀越氏(19日~21日)は、「門前町では、1医院と1薬局が1日180人の患者の診察と処方箋を応需していた。インフルエンザや新型コロナの感染者も出現した」と報告。
その上で、「今後は、現地の医療機関の復活状況も含めて、できるだけ災害処方箋から保険調剤へ戻すようにしている。この経験を活かして、災害時に被災地に派遣できる薬剤師の人材バンクを作っていくことも考えたい」と話した。
被災地の活動で困った点については全員異口同音に、「断水を原因とするトイレ」を挙げ、「Dマットの情報を繋ぎ合わせるのに苦労した」と話す役員もいた。また、アルコールなどの消毒薬は、「新型コロナの影響で被災地も充足しており、被災者も手洗いの励行を行っていたため、避難所の感染症対策は完全であった」
乾氏は最後に、「日薬のスキムに基づいて地元に石川県薬をしっかりとサポートしたい」と訴求し、「被災地の厳しい環境が一日でも早く復興に繋げられるように頑張っていく」考えを強調した。