小野薬品は9日、ヒト上皮細胞増殖因子受容体 2(HER2)を標的とする多重遺伝子編集キメラ抗原受容体(CAR)T細胞製品候補の「FT825/ONO-8250」について、提携先のFate がP1試験の患者登録を開始したと発表した。
Fateは、がんと自己免疫疾患の患者に人工多能性幹細胞(iPSC)由来の免疫細胞療法のファースト・イン・クラスのパイプライン提供に専念する臨床段階のベンチャー企業。
このiPSC由来のCAR T細胞製品候補には、新規のHER2標的抗原結合ドメインが組み込まれており、固形がんの治療における特有の課題を克服するように設計されている。FT825/ONO-8250のP1試験は、小野薬品との戦略的提携の下に実施されている。
ONO-8250/FT825は、FateのiPSC製品プラットフォームを用いて設計されたiPSC由来CAR T細胞製品候補である。HER2に標的化し、がん選択性を有する新規の抗原結合ドメイン、細胞移行を促進するCXCR2受容体、腫瘍微小環境における免疫抑制シグナルを再指向するキメラ型TGF-β受容体および抗体依存性細胞傷害活性を付与する高親和性/非開裂型のCD16a受容体を含む、細胞機能をコントロールする7つの新規遺伝子編集を組み込むことで、固形がんの治療における特有の課題を克服するように設計されている。
今回のP1試験は、治療歴を有する進行固形がんの患者を対象にFT825/ONO-8250の単剤療法およびモノクローナル抗体療法との併用療法としてFT825/ONO-8250の単回投与を評価するよう設計されている。同試験の用量漸増パートおよび用量拡大パートでは、安全性、忍容性および薬物動態、並びに奏効率、奏効期間と病勢コントロール率による抗腫瘍活性を評価する。
小野薬品は、2018年9 月にFateと締結したCAR-T細胞治療薬の創製を目的とする創薬提携契約に基づき、ONO-8250/FT825を共同開発・商業化するオプション権を2022年11月に行使している。
同オプション権行使により、小野薬品および Fate は、欧米において ONO-8250/FT825を共同開発・商業化するとともに、小野薬品は欧米以外の全テリトリーにおいて独占的に ONO-8250/FT825 を開発および商業化する権利を取得している。