アッヴィとジェンマブ社は26日、 エプコリタマブについて、新データが治療困難な再発又は難治性の濾胞性リンパ腫を対象としたP1/2試験(EPCORE NHL-1臨床試験)の用量拡大コホートにおいて強力かつ持続的な奏効を示したと発表した。
2つ以上の前治療を受けた再発又は難治性(R/R)の濾胞性リンパ腫(FL)の成人患者が、開発中の皮下投与によるT細胞誘導二重特異性抗体であるエプコリタマブ(DuoBody(R) CD3xCD20)による治療を受けた場合、強力かつ持続的な奏効がみられ、高い全奏効率(ORR)および完全奏効(CR)率が示されたもの。
同試験において、奏効が認められた患者の半数以上は、データ解析時点でも奏効が持続していた(すなわち、奏効期間の中央値に到達しなかった)。
EPCORE NHL-1試験の用量拡大コホートから得られたデータは、9日にカリフォルニア州サンディエゴで開催されたASH総会のポスター発表で報告された。同試験から得られた最新データには、最適化されたステップアップ用量スケジュールが含まれており、免疫介在性のがん治療の特徴的な副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)の発生率と重症度の減少が示された。
128名の成人患者からなるこのコホートから得られた結果は、次の通り。
・追跡期間中央値17.4カ月において、同試験の主要評価項目であるORRは82%、CR率は63%、奏効までの期間中央値は1.4カ月、CRまでの期間中央値は1.5カ月であった。
・前治療に不応であった(リツキシマブとアルキル化剤の両剤に不応(70%)、または直前の治療に不応(69%))など特定された高リスクグループのサブグループ解析では、ORRとCR率は、全解析対象集団と概ね一致していた。
・奏効期間およびCR期間の中央値は未到達であった。
・CRを経験した患者のうち、推定で85%と74%は、それぞれ12カ月と18カ月の時点でも奏効を維持していた。
・追加の試験データは、要旨#1655から入手できる。
新たな安全性シグナルは検出されなかった。高頻度に治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)はCRSで67%に発生した(グレード1が40%、グレード2が25%、グレード3が2%)。
CRSのリスクと重症度を軽減するために、個別コホートに対して、最適化されたステップアップ用量レジメンを実施したところ、50名の患者のうち24名(48%)にグレード1~2のCRSが認められた(グレード1が40%、グレード2が8%、グレード3が0%)。
さらに、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)も報告されなかった。このデータは、検証中である外来患者への最適化されたステップアップ用量を裏付ける可能性がある。
比較的高い頻度(20%超)でみられたその他のTEAEは、注射部位反応(57%)、新型コロナウイルス感染症(40%)、疲労(30%)、好中球減少(29%)、下痢(27%)および発熱(25%)であった。
治療中止に至ったTEAEは患者の19%で生じており、TEAEに関連した死亡が13名の患者(10%)で確認された。
最近、アッヴィとジェンマブ社は、米国FDAから、2つ以上の治療を受けたR/R FL成人患者に対する治療薬として、エプコリタマブを画期的治療薬(BTD)とする指定を受けたと発表した。
さらに、欧州医薬品庁(EMA)は、同じ適応に関するエプコリタマブのタイプII申請を認証した。承認された場合、R/R FLは、エプコリタマブに関して、欧州連合において条件付きで承認された2番目の適応となると考えられる。
◆Catherine Thieblemontパリ大学・パリ公立病院連合(APHP)サン・ルイ 病院 血液腫瘍科部長(M.D., Ph.D.)のコメント
不幸にも病勢進行した濾胞性リンパ腫の患者さんに対する治療は進歩しているが、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫の治療は、特に3次以降の治療において、依然として非常に困難である。
本試験の患者さんは、これまで治療が困難であった患者集団で、今回発表されたデータは、この開発中の濾胞性リンパ腫治療薬の高い全奏効率と完全奏効率を実証し、代替治療の選択肢としての可能性を予感させるものであるため、特に注目される。
◆Mariana Cota Stirnerアッヴィvice president, therapeutic area head for hematology(M.D., Ph.D.)のコメント
濾胞性リンパ腫を含むB細胞悪性腫瘍のより多くの患者さんを治療するため、中核となりうる治療法の1つとして、エプコリタマブの開発を進めることが、私たちのパートナー企業であるジェンマブ社と共に目指す重要な目標となっている。
今年のASHで発表されたこれらのデータは、エプコリタマブによる治療の可能性と、患者さんの早期治療に向けた治療薬開発に対する私たちの自信をさらに高めるものといえる。