オムロンヘルスケアは、12月2日、同社(京都府向日市)で「血圧変動と高血圧管理」をテーマに第35回血圧管理研究会を開催する。
同研究会は、血圧管理に関する最新の知見を討議し、広くその研究成果の啓発をはかることを目的としたもの。日野原重明元聖路加国際病院理事長を代表世話人として1988年に発足し、以後、毎年開催されており、今年で35回目を迎える。
世界の死因第一位は、心不全や脳卒中などの循環器疾患といわれている。その要因のひとつが「高血圧」で、同社は、家庭で計測したデータを個人の健康管理から診療まで活用することを目指し、家庭で簡便に測定できる血圧計の開発に着手。1973年に血圧計の第一号機を発売した。
だが、当時は「血圧測定は病院で行うもの」とされており、家庭での血圧測定は一般的ではなかった。
一方で、日野原氏は「家庭での血圧測定により自身の健康への関心が高まり、脳卒中などの重篤な病気の予防に役立つ」という予防医学の考えのもと、1970年代から血圧の自己測定について講演活動を展開していた。
1980年代に入ると生活習慣病への関心が集まるとともに高血圧研究の重要性も高まった。同社は血圧計の開発に加え、家庭血圧の普及と管理に関する研究を推進するために、日野原氏協力のもと1988年に血圧管理研究会を設立した。
血圧管理研究会は、家庭血圧普及の啓発活動に欠かせない医師や研究者の交流の場として、2023年の現在まで毎年1回の研究会を開催。様々な研究で家庭血圧の有用性が立証された結果、2014年に発行された高血圧治療ガイドラインに「診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は家庭血圧を優先して高血圧治療を行なう」と記載され、家庭血圧は高血圧診療において重要な指標となった。
だが、残念ながら現在日本に4300万人いるといわれている高血圧者のうち、血圧管理が適切にできている人が1200万人に留まると推計されている。
オムロンヘルスケアは、脳・心血管疾患発症ゼロ(ゼロイベント)の実現に向けて、これからも血圧管理研究会を通じてより多くの医師や研究者に向けて血圧管理の重要性を伝えていくとともに、高血圧診療に向けた新たな機器やサービスを開発していく。
同研究会では、血圧計発売50周年記念特設サイトを開設し、オムロンヘルスケアが電子血圧計の第一号機「HEP-1」を発売した1973年から50年間の歩みと「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」の実現に向けた新たな取り組みを紹介する。主な内容は、次の通り。
・血圧計発売50周年記念動画
・オムロンの血圧計が目指す測定精度と使いやすさの説明
・医療関係者と共に歩んだ家庭血圧普及までの取り組み
・脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)を目指したチャレンジの紹介
<サイトURL>
◆久代登志男ライフ・プランニング・センター理事長のコメント
35年前に血圧管理研究会が発足した当時は、参加者が少なく苦労したこともあった。だが、年ごとに注目するテーマを決めて討議するテーマセッションを設けるなど、世話人の方々のアイデアとご尽力、さらにオムロン ヘルスケアによる啓発活動のおかげで、応募演題数と参加者は徐々に増え、現在一般演題は選考委員会で選択するようになっている。
今日では、家庭血圧を測ることが当たり前の時代となっている。病院やクリニックでの診察室血圧と共に家庭血圧の良好な管理が将来の心不全や脳卒中などの予防に有用なことは明らかにされている。
また、健康診断などでの血圧が120~139/80~89mmHgの方々は、正常高値~高値血圧と呼ばれ生活習慣の改善により高血圧を予防することが望まれる。日本は世界で最も健康診断が普及しており、医療へのアクセスも容易な国である。
だが、残念なことに世界の高所得12ヶ国を比較した報告では、日本における高血圧患者さんの診察室血圧の降圧目標達成率は最も低いグループに入っている。
高血圧患者さんのみならず、健康診断などで血圧が高めの方々が、家庭血圧を測ることは、ご自身の血圧を知ることを通じて医療に参加することになる。
さらに、医師、薬剤師、看護師などの医療者がチームとなり支援できれば、より良い高血圧治療と高血圧の予防に役立つはずである。そのために、血圧管理研究会が多くの医療関係者で血圧と血圧管理について考え、討議する場であり続けることを通じて、より良い血圧管理に役立つことを願っている。