キイトルーダ・トラスツズマブ・化学療法の併用療法 胃腺がん・食道胃接合部腺がんP3試験で好結果 MSD

 MSDは17日、キイトルーダとトラスツズマブおよび化学療法との併用療法について、HER2陽性の進行胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんに対する一次治療を対象とするP3試験において、トラスツズマブ+化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したと発表した。
 HER2陽性の治癒切除不能な局所進行・再発の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんに対する一次治療において、抗PD-1抗体キイトルーダとトラスツズマブ、フッ化ピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法を評価する第3相KEYNOTE-811試験の結果を公表したもの。
 これらのデータは同日、2023年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会の一般演題の中から選ばれた演題セッションで発表され、世界中の規制当局と協議を進めている。
 KEYNOTE-811試験では、28.4カ月間(中央値)の追跡調査後、キイトルーダとトラスツズマブ、フッ化ピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法(キイトルーダ併用療法)は、HER2陽性進行胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんのITT解析対象集団において、プラセボとトラスツズマブおよび化学療法の併用療法(トラスツズマブ+化学療法)と比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善し、病勢進行または死亡のリスクが28%低下した(HR=0.72[95% CI, 0.60-0.87]; p=0.0002)。
 また、PD-L1陽性(Combined Positive Score[CPS]≧1)の患者においても、キイトルーダ併用療法はトラスツズマブ+化学療法と比較して臨床的に意義のあるPFSの改善がみられ、病勢進行または死亡のリスクが30%低下した(HR=0.70[95% CI, 0.58-0.85])。
 事前に規定されたサブグループ解析では、ITT解析対象集団におけるPFSの改善は、PD-L1陽性(CPS≧1)の患者さんのみで確認された。試験に参加した患者の80%以上がPD-L1陽性(CPS≧1)であった。
 その後の中間解析(追跡期間中央値38.5カ月)では、もう一つの主要評価項目である全生存期間(OS)についても、キイトルーダ併用療法はトラスツズマブ+化学療法と比較してITT解析対象集団(HR=0.84[95% CI, 0.70-1.01])およびPD-L1(CPS≧1)陽性のサブグループ(HR=0.81[95% CI, 0.67-0.98])で改善傾向が認められた。
 PD-L1陽性(CPS≧1)の患者では、OS中央値はキイトルーダ併用療法群で20.0カ月(95% CI, 17.9-22.7)、トラスツズマブ+化学療法群で15.7カ月(95% CI, 13.5-18.5)であった。
 これらのOSの結果は、中間解析では統計学的有意性の基準を満たさなかった。今後予定されているOSの解析のため追跡調査は継続中である。

◆KEYNOTE-811のグローバル首席治験責任医師のエレーナ・Y・ジャンジギアン博士(メモリアル・スローンケタリング癌センター消化器腫瘍科主任担当医)のコメント
 胃食道がんの患者さんの大部分は診断された時点で進行しており、これまでは、治療の経過が良くない場合が多くあった。KEYNOTE-811試験の結果は、キイトルーダとトラスツズマブおよび化学療法との併用療法の臨床上のベネフィットをさらに示すものであり、PD-L1陽性(CPS≧1)のHER2陽性進行がんの患者さんにおいて、病勢進行または死亡のリスクを低下させた。

◆マージョリー・グリーンMSD研究開発本部グローバル臨床開発部門進行がん担当シニアバイスプレジデントのコメント
 今回の無増悪生存期間の結果により、KEYNOTE-811試験で蓄積されたエビデンスはさらに充実したものとなる。
 これらのデータは、PD-L1陽性(CPS≧1)のHER2陽性進行胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんの患者さんの治療選択肢として、キイトルーダとトラスツズマブおよび化学療法との併用療法の重要性を強調するもので、治療が難しい消化器がんに対する有効な治療法を模索し続けるという当社の思いを強くするものである。

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