大阪府薬剤師会は8日、定例記者会を開催し、乾英夫会長が「オーバードーズ防止啓発楽曲『悲しき避難場所 オーバードーズ』が完成し、10月22日に難波で開かれた‟2023年度・薬と健康の週間府民のつどい”で披露した」と報告した。
沢井製薬の溶出試験不正には強い怒り 乾会長
また、先般の沢井製薬の胃炎・胃潰瘍治療剤の後発医薬品「テプレノンカプセル」が安定性モニタリング溶出試験で8年間に渡り不正が行われてきた事件発覚にも言及し、「別のカプセルに薬剤を詰め替えて溶出試験を実施することなどありえない。許せない」と怒りを露わに非難した。
さらに、「国内後発品メーカー最大手の沢井薬品の九州工場が行政処分により操業停止になった場合、医療現場での医薬品不足に拍車がかかる。何としても国は、一定の医療用医薬品供給が保持できるような手立てを企ててほしい」と訴求。その上で、「2023年度も薬局現場での医療用医薬品流通状況アンケートを実施する」考えを明らかにした。
オーバードーズ防止啓発楽曲「悲しき避難場所 オーバードーズ」は、「焼肉食べ放題」のヒット曲などで知られる神戸市出身のリピート山中氏が作詞・作曲したもの。
大阪府薬が同曲作成に踏み切ったのは、近年10代の若者を中心に市販薬の乱用による依存症や中毒で、身体を壊したり死亡する事例が増加している背景がある。市販薬は、身近で比較的安く購入可能で、しかも使用が法律に反しておらず、SNSでの情報交換なども相まって若者に広まる要因となっている。
乾氏は、「従来は、咳止めや鎮咳袪痰薬など、エフェドリン、ブソイドエフェドリン、メチルエフェドリン等の6成分を含む医薬品の乱用のみが規制されていたが、本年4月より総合感冒薬を含めた乱用の恐れのある医薬品に規制が拡大された」と指摘。それに伴って、「大阪府薬では府民向けの市販薬乱用防止啓発資材をホームページに掲載し、大阪府のホームページともリンクして啓発活動を展開している。オーバードーズ防止啓発楽曲「悲しき避難場所 オーバードーズは、さらなる啓発強化を目的に作成した」と経緯を語った。
杉本幸枝常務理事は、同曲を作詞・作曲したリーピーと山中氏について「医療に関係する歌を作っておられ、僻地の医師の往診にも同行経験の持ち主である」と紹介し、「歌に合わせてダンス的にアレンジされた吉中康子元京都先端大学教授創作の‟ストップ・ザ・オーバードーズ体操”を踊ることで、音楽・体操の力によって市販薬の乱用防止を訴求していきたい」と抱負を述べた。体操は、その字が表すように「からだをあやつる」、すなわち自ら体を動かすことを意味する。さらに、音楽は、我々の心を豊かにしてくれる。音楽に合わせて体操することで、心も体も解放され、すっきりとし、活力も沸いてくる狙いがある。
堀越博一常務理事は、「米国では、2000年頃から医薬品の乱用防止について厳格に対応している。日本では医薬品を手に入れるハードルがまだまだ低い。地域薬剤師会にも、本会の市販薬乱用防止啓発資材を是非活用して頂きたい」と呼びかけた。乾氏も、「オーバードーズのプロジェクトでは、なによりも‟オーバードーズ”について多くの府民に知って頂き、健康な生活が明るい笑顔あふれる未来に繋がるように導くことを願っている」と訴えかけた。
2023年度医療安全・在宅医療推進のための研修会については、羽尻昌功常務理事が「これまでの研修会は、適切な薬物治療を在宅で行うために、薬局薬剤師と病院薬剤師が双方向で研修を行ってきた」と振り返り、「今年度は、それに加えて、訪問看護師、ヘルパーなど多職種の気づきから薬の副作用を見抜く研修も加わった」と説明した。
堀越氏は、前衆議院議員とかしきなおみの7区会員薬局訪問スケジュールにも言及。「衆議院解散の先が見えない現況において、10月5日から11月10日までの期間に11回、とかしき前議員の選挙区である吹田、摂津の薬局を回るスケジュールを敢行している」と報告し、「とかしき先生を是非もう一度国政の場に送り出したい」と強調した。