小野薬品の相良暁社長は1日、2024年3月期第2四半期の決算説明会で会見し、2026年から2031年までの間に各国で徐々に切れていくオプジーボの特許切れを見据えた欧米での自社開発・販売戦略に言及した。
現在のパイプラインについて、「米国第1号製品として2026年上市を見込んでいるベレキシブル(中枢神経系原発リンパ腫治療薬)のように、ユニークでイノベイティブかつニッチな化合物が多く、欧米でも我々の規模で自社開発・販売できる」と強調。
その上で、「日本で100億円クラスの薬剤でもマーケットシェアの大きな米国では10倍程度の売上高が期待できる。ベレキシブルに続いてもう二つくらいの化合物を米国で自販して、オプジーボの特許切れを乗り越えてさらなる成長を目指したい」と抱負を述べた。
2024年3月期第2四半期の業績は、売上収益2587億1300万円(前年同期比19.4%増)、営業利益970億3600万円(同20.9%増)、税引前利益992億9600万円(同22.6%増)、四半期利益744億9100万円(同19.5%増)。
売上収益の内訳は、製品商品売上1599億円(同10.3%増)、ロイヤリティ・その他988億円(同37.6%増)。製品売上では、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」や糖尿病、慢性心不全および慢性腎不全治療剤「フォシーガ」が順調に拡大した。
フォシーガの売上高は359億円で対前年同期比95億円増となった。その要因として「競合品にはない腎臓病の適応追加」が大きく、通期売上予想は650億円から700億円に引き上げられた。
ロイヤリティ収入では、ブリストルマイヤーズスクイブ474億円、メルク256億円に加えて、アストラゼネカ社との特許関連訴訟の和解に伴う一時収入170億円が計上された。
欧米での自社開発・販売戦略について相良氏は、まず「医療用医薬品のグローバルマーケットのシェアは、日本5%、米国50%、欧州15%である。これまで当社は、日本で自販、それ以外はライセンスアウトでロイヤリティ収入を得る手法を取ってきた」と指摘。
加えて、「オプジーボの特許切れを補ってさらに成長していくには、国内の5%で勝負していたマーケットシェアを日欧米の70%に拡大して勝負していく必要がある」と力説し、「欧米で併せて10個の化合物の開発試験をスタートしている」ことを明かした。
ベレキシブルは、2026年上市、発売時のスタッフ150名程度を見込んでおり、「小野薬品のパイプラインには、ベレキシブルのようなユニークでイノベイティブかつニッチな化合物がたくさんある」
相良氏は、「オプジーボクラスの大型製品の欧米での自社開発・自社販売は難しいが、ニッチな製品は当社の規模できる」と強調した。
新製品の売上規模についても、「日本で100億円クラスの薬剤でもマーケットシェアの高い米国ではその10倍程度に拡大する可能性がある。ベレキシブルに続いてもう二製品くらい上市すれば、2000億円、3000憶円の売上が期待でき、それに応じた利益が確保できる」と分析。
その上で、「ここ数年過去最高の売上高・利益を更新してきたが、今後も更新しなければならない。オプジーボの特許切れのマイナス影響を埋めて、さらなる成長を遂げたい」と力を込めた。
相良氏は、オプジーボの特許切れによる減収時と欧米での新製品上市の時期がずれたケースにも言及し、「その場合は、これまでのライセンス活動の実績を活かして導入品のグローバルでの権利をしっかりと確保し、ベンチャーのM&Aで埋める方法に積極的投資を行って海外戦略を進めて行く」考えを強調した。
オプジーボの特許切れは各国で異なり、2026年から2031年までの間に徐々に切れていく。米国では2028年、欧州では2030年に特許切れし、海外のロイヤリティ収入は段階的に減少する。
同社業績に大きな影響を及ぼす日本での特許切れは8年後の2031年に控えており、同年3月にメラノーマ、5月には多くの適応症で特許が満了する見込みである。