早期ステージ乳がん患者のペイシェント・ジャーニー現状評価白書公開 MSD

 MSDは8日、英国経済紙EconomistのシンクタンクであるEconomist Impact社(EI社)と協働し、早期ステージで発見される乳がん患者さんのペイシェント・ジャーニー(疾患理解、がん検診と診断、治療、サバイバーシップ)の現状を評価した白書をEI社のウェブサイト(英語)に公開したと発表した。
 白書名は、「日本における早期乳がんのケアに繋げるための患者さんを中心とした最適なアプローチ構築に向けて:現状の課題と解決策の提言」。
 MSDとEI社は、2022年9月に、乳がん患者さんのより良いケアに繋げるために、医学専門家、患者団体代表者、経済学専門家、医療政策専門家の参加のもと、「日本における乳がん患者さんのアウトカム向上を目指したカントリー・ワークショップ」を共催した。
 EI社は、ワークショップで示された提言と乳がん関連制度や論文の調査・分析結果を合わせて考察し、早期ステージで発見される乳がん患者さんのペイシェント・ジャーニー(疾患理解、がん検診と診断、治療、サバイバーシップ)の現状について評価し、白書として公表した。
 乳がんは、日本人女性に最も多く診断されるがんで、がん関連死の死因の第5位である。乳がんを早期のステージで発見できれば予後は良好である一方、進行した状態で見つかると患者さんの生命が脅かされるだけでなく、QOLの低下、経済的負担、家族や社会の負担なども大きくなる。
 早期ステージで発見される乳がん(早期乳がん)について、患者を中心とする診断と治療の流れを理解し、乳がん管理におけるアンメットニーズを調査することによって、日本における早期乳がんのケアを改善できる余地があると考えられた。
 ワークショップで示された提言と乳がん関連制度や論文の調査・分析結果を合わせて考察するアプローチを用い、フォースフィールド分析(目標達成のために働く推進力と抑止力を分析する手法)をデザインした。ペイシェント・ジャーニー上の4つの領域である、疾患理解、がん検診と診断、治療、サバイバーシップについて、既存の医療政策とがんに関連する制度上のパフォーマンスの評価を行った。主な調査結果は次の通り。

◆疾患理解:早期乳がんケアを最適化するためには、ヘルスリテラシーとブレストアウェアネス(乳房を意識する生活習慣)の向上が基本ですが、日本では乳がんの徴候や症状についての知識が乏しい状況であることがわかった。

◆がん検診と診断:現在の国民生活基礎調査による分析では、がん検診の実態の把握は困難であり問題視されている。特に、職域におけるがん検診の正確な実態が把握できていない。がん検診の受診率も低いままであり、乳がんの早期発見、診断につながっていないことが明らかになった。

◆治療:日本は革新的な治療法や個別化医療に注力し、患者さん中心の治療を向上させることを目指している。国民皆保険で医療機関へのフリーアクセスが確保され、がん患者さんをサポートする制度も準備されている一方で、制度の理解や活用が十分ではなく、経済的負担に悩む患者の存在も判明した。

◆サバイバーシップ:患者中心のケアを実現するためには、乳がんサバイバーに対するフォローアップケアと継続的な支援が重要だと考えられるが、日本では注力されていない。特に、心理的なサポートは、必要性が認識されているものの、アンメットニーズとして残っていることが判った。

◆白書が公開されているウェブサイト(英語のみ):
https://impact.economist.com/perspectives/health/enhancing-patient-centred-approaches-optimise-early-breast-cancer-care-review-current-practice-and

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