脳発生機構解明による様々な疾患の発症原因追究に期待
早稲田大学人間科学学術院榊原伸一教授らの研究グループは、正常な脳発生に2つのプリン合成経路(de novoとsalvage)の厳密な制御が重要であることを明らかにした。
このプリン代謝制御による脳発生機構を解明することで、様々な疾患の発症原因追究への寄与が期待される。
哺乳類は、進化の過程において大脳皮質の容積の割合を飛躍的に増加させ、記憶等の高次脳機能を獲得してきた。同研究グループが着目したプリンはDNAやRNAの重要な構成要素であり、生物が活動するためのエネルギー供給源(ATP/GTP)でもある。
プリン代謝の異常は痛風のみならず、てんかんをはじめとする精神疾患や神経発達障害など、様々な疾患と関連することが知られている。だが、プリン代謝が脳発生にどのように関係しているかは未だ不明な点が多くあった。
同研究グループは、脳発生の進行に伴い駆動するプリン合成経路が切り替わり、初期の大脳皮質形成にはde novo経路の活性化が非常に重要であることを発見した。
また、胎生期にプリン合成を阻害するとmTORシグナル経路の低下を介した前脳特異的な脳奇形を引き起こすことを明らかにした(図1)。
これらの研究成果は、米国のオープンアクセスジャーナル『eNeuro』のオンライン版に2023年10月11日(水)に掲載された。なお、当該論文は「Editor’s pick」に選出されている。