中外製薬は23日、リツキサンについて、「既存治療で効果不十分なループス腎炎」に対する適応追加の承認を、同日、全薬工業が厚労省より取得したと発表した。同剤は、中外製薬と全薬工業が共同販売を行っているもの。
造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体であるリツキサンは、標的となるB細胞をヒトの体内に備わった免疫系を用いて攻撃し、細胞を傷害する。
本年2月15日に開催された第54回 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、日本リウマチ学会(理事長:田中良哉氏)より要望があった「既存治療で効果不十分なループス腎炎」に対するリツキサンの効能追加について、公知申請に該当すると評価された。
その後、同年3月3日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、「同適応拡大申請を行って差し支えない」と正式に決定された。これを受け、全薬工業および中外製薬は3月31日に効能追加申請を行い、今回の承認取得に至った。
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う腎臓病変である。主要な臓器病変の中でも高頻度で発現し、SLEの予後を左右する臓器合併症の1つだ。
SLEは、国の指定難病であり、国内の患者数は約6~10万人と推定され、そのうちループス腎炎の発症頻度は45~86%と報告されている。ループス腎炎は、免疫調節機構の異常により、免疫応答の障害が持続して腎障害が引き起こされると考えられている。
リツキサンは、ループス腎炎の病態の中心となる自己抗体産生や免疫複合体の形成に関与するB細胞を傷害することにより、腎症状を改善する。
日本リウマチ学会、日本腎臓学会、日本小児リウマチ学会及び日本小児腎臓病学会により、国内47施設を対象に実施されたループス腎炎に対するリツキサンの国内使用実態調査では、リツキサンのループス腎炎に対する使用実態が確認され、当該調査結果を踏まえた「ループス腎炎に対するリツキシマブ(遺伝子組換え)使用に関するステートメント」が公表されている。