アストラゼネカは14日、免疫療法を受けている肺がんおよび消化器がん患者さんの免疫介在性有害事象(imAE)の早期発見・治療介入を促進し、医療従事者と患者とのコミュニケーションをサポートするツール「つたわる君」を作成し、医療従事者に提供を開始したと発表した。
同ツールの提供は、がん治療継続の支援を目的としたもの。がん免疫療法の登場により、従来の治療では十分な効果が期待できなかった進行期のがんにおいても、一部の患者で長期の奏効・長期生存が得られるようになった。
だが、免疫療法は、患者自身の免疫を高めるため、自己免疫疾患様の症状が生じる imAE が起こるケースがある。imAE は、治療期間中あるいは治療終了後のあらゆる時点で発現する可能性があり、重篤化した場合、時に致死的な経過をたどることがある。imAE がどの臓器に発現するかを事前に予測することは難しく、また、適切な管理方法も確立していないのが現状だ。
imAEマネジメントでは早期発見・治療介入が重要であるが、そのためには患者と医療従事者とのコミュニケーションは欠かせない。がん免疫療法を受ける患者においては、「有害事象を言葉で説明しにくい」、「些細な初期症状を伝えにくい」といった困りごとがインタビューより明らかとなっている。医療従事者は、免疫療法の治療開始から治療終了後まで、診療科を超えて連携し、常に imAE に迅速に対応できるようにしておくことも重要だ。
同ツールは、「説明用ボード」・「問診票」さらには臨床的に重要度の高い症状から発現が疑われる有害事象を推測する「逆引きマニュアル」の3種類から構成されており、同ツールの活用により、患者は自身の症状を医療従事者に伝えやすくなり、医療従事者はimAE の早期発見・治療介入といった効果的な imAE マネジメントが期待できる。
同社は、「患者を第一に考える」を企業バリューのひとつとし、患者の診断から治療後といったペイシェントジャーニーにおけるアンメットニーズへの取り組みに注力している。同ツールの提供は、患者を中心とした治療支援であり、その企業バリューを実現するためのアクションのひとつである。
◆野口哲男同ツール監修者(市立長浜病院呼吸器内科責任部長)のコメント
免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴い imAE の早期発見はより重要になってきた。だが、症状をどのように伝えてよいか分からなかったり、医療従事者に遠慮したり、治療変更を危惧して症状が出ていることを伝えづらい患者さんもおられる。
是非このツールを活用して、患者さんに気になることがないか、お声掛けいただきたいと思う。「つたわる君」が、imAEの早期発見・早期治療介入につながることを期待している。
◆田中倫夫アストラゼネカ執行役員メディカル本部長のコメント
当社では、メディカルプラクティスの変革により患者さんの人生を持続的に変化させることを目指している。「つたわる君」が患者さんと医療従事者間のコミュニケーションに行動変容をもたらすきっかけとなり、患者さんがより納得した治療を受けられることを期待している。引き続き、がん免疫療法の適正使用のために、領域横断的な取り組みを続けていく。
【コミュニケーションサポートツール「つたわる君」】
<説明ボード>
<問診票>
<逆引きマニュアル>
・説明ボード:患者さんの伝えにくい症状を全身イラストや症状アイコン、より平易な表現で説明。症状の程度も気のせいかもしれないものまで確認ができる
・問診票:患者さんへ問診ページを取り外して渡すことが可能。医療従事者間の申し送りにも活用可能
・逆引きマニュアル:確認した症状から逆引きマニュアルを基に、どのような imAE が発現しているか推測できる