「STS2030 Revision」2030年度売上収益目標を8000億円に引き上げ 塩野義製薬手代木功会長兼社長CEO

 塩野義製薬は1日、東京都内で2020年6月1日に公表した中期計画「STS2030」を改定した「STS2030 Revision」に関する説明会を開催した。会見した手代木功会長兼社長CEOは、「中計の最終年度となる2030年度の売上収益目標を6000億円から8000億円に引き上げる」と発表した。
 業績目標の上方修正は、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」や、HIVパイプラインの成長・積極的投資による事業成長などによるもの。
 また、「STS2030 Revision」の最重要課題として「海外での自力販売能力の向上」を指摘し、「海外で自力中心に販売をかけて2030年8000億円を達成したい」と意気込んだ。
 海外売上高 CAGR(年平均成長率)は、2025年度50%(2022度を起点)、2030年度15%(2025を起点)を目指す。
 「STS2030」 では、2020年度を起点とする2024年度までの5年間をSTSPhase1、以降2030年度までをSTS Phase2と位置付けていた。だが、STS2030で2024年度の数値目標としていたコア営業利益(1500億円以上)、コア営業利益率(30%以上)、自社創薬比率(60%以上)、EPS(480円以上)、ROE(15%以上)は、売上目標を除いて2022年度に2年前倒しで達成された。
 そこで、STS2030を改訂したSTS2030 Revisionでは、STS Phase1を2022年度で終了。2023年度から2025年度の3ヵ年を新たにSTS Phase2 、2026年度から2030年度までをSTS Phase3と2つのPhaseに分け、STS Phase2 では変革による成長を加速し、2025年度には売上収益5500億円、利払い・税引き・償却前利益2000億円を目指す。
 STS Phase3では、今後のビジネスの進展や環境変化を踏まえた新たな計画の策定し、2030年度売上収益8000億円を達成する。
 HIVフランチャイズについて手代木氏は、「STS2030策定時には、2027年・28年における経口剤ドルテグラビルの特許切れによるパテントクリフが心配されたが、Cabenuva などの長時間作用型製剤の拡大がそれを補て強く成長する見込みにある」と強調した。
 そのため、ドルテグラビルのパテントクリフは、STS2030 公表時の想定より大きく縮小し、速やかな再成長が予測されるため、「2040年まで安定的にHIVロイヤリティが続く」見通しだ。
 手代木氏は、グラム陰性感染症治療薬「セフィデロコル」にも言及し、「米欧で100億円を売り上げた。最近では、100億円を超える抗菌剤はグローバルで誕生していない」と同剤の実力を改めて誇示した。
 新型コロナについては、「今なお世界中の多くの人々の健康や生活に影響を与え続けており、今後も変異を繰り返しながら免疫を回避し、流行が継続する」と予想。その上で、ゾコーバの販売戦略として、「今年度は日本と中国・韓国を中心とするアジアで、来年度は米国・欧州を含めた販売を拡大していく」考えを明かした。
 塩野義製薬では、ゾコーバの新たなエビデンスを集積してグローバルで提供するとともに、より多くの人が使用できる優れた新規コロナ治療薬(S-992216)の創出にも引き続き注力する。ワクチン事業は、実績を積み上げ、競争力を獲得しながらグローバル展開を目指す。
 新製品・新規事業の拡大では、医療用医薬品事業における新製品として現在の開発パイプラインの中から2030年度までに10製品以上の上市を見込んでおり、既存アセットの成長や製品導入等を通じてグローバルでの成長を図る。
 STS Phase2の主な注力品目には、Resiniferatoxin(GRT7039、変形性関節症に伴う疼痛)、Zuranolone(S-812217、うつ・うつ状態)、 Zatolmilast(BPN14770、︓脆弱X症候群)、Daridorexant(不眠症)、Symproic/Rizmoic(オピオイド誘発性便秘症)、デジタルアプリ・デバイス等(︓不眠障害用アプリ)などがある。研究開発費は、3年間で3000億円。
 手代木氏は、「ゾコーバで達成した研究開発のタイムラインをどれだけ他の薬剤に適応できるか、スピード感を持って進められるのかが、研究開発において最も重要なテーマになる」と断言し、検討中の取り組むべき疾患例として、「認知症」、「肥満」、「子供の疾患」、「睡眠障害」、「難聴」、「小児適応製剤」を挙げた。
 「研究開発では、競争力のある化合物をアンメットメディカルニーズに基づいて選んでいる。不眠症治療も当社のCNSのバックグラウンドの中で一定の見識がある。抗がん剤(固型癌)は、パートナーシップも視野に入れている」と説明する。
 さらに、「小児の一部分は、これからの少子化の中で、安心して子育てするにはより充実した薬剤が重要となるので、収益中心に開発を行わないケースもある」とした上で、「小児以外の薬剤については、グローバルに競争力のあるものを選んでそこに集中特化していきたい」と力を込めた。

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