ヘルスケア事業の収益向上を図り成長できるビジネスに 三菱ケミカルグループギルソン代表執行役社長CEO

ギルソン氏

 三菱ケミカルグループは12日、Webによる2023年3月期決算説明会を開催し、ジョンマーク・ギルソン代表執行役社長CEOがヘルスケア事業について、「4年前に田辺三菱製薬を獲得し、再び収益を上げて成長できるビジネスにしようと懸命に取り組んでいる」と強調。
 さらに、「2022年度は、米国でのラジカヴァ経口剤(ALS治療薬)の強い立ち上がりに加えて、免疫炎症領域のステラーラを中心とした国内売上が好調で、メディカゴの経費を控除すれば、非常に好業績であった」と高評価し、「田辺三菱製薬は、我々の会社の一部である。特に、研究開発に対して今後も継続して投資していく」と期待を寄せた。
 三菱ケミカルグループの2023年3月期業績は、売上収益4兆6345億円(対前年比17%増)、コア営業利益3256億円(20%増)、営業利益1827億円(40%減)、税引前利益1680億円(42%減)当期利益1352億円(35%減)となった。
 その内、田辺三菱製薬が中軸となるヘルスケア部門は、売上収益5471億円(36%増)、コア営業利益1418億円(前期は70億円の赤字)を計上した。
 2022年度には、ヘルスケア部門において、新型コロナ予防ワクチン「COVIFENZ」の商用化断念及びメディカゴ社の事業撤退および清算(574億円)を決定。
 さらに、Muse細胞を用いた再生医療等製品「CL2020」の開発を中止した。
 ノバルティス社に導出した多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤリティ収入の仲裁手続きに関して、2023年2月に仲裁判断を受領。これに伴い、仲裁手続き中に売上収益として認識していなかったロイヤリティ1259億円を2022年度第4四半期で一括して売上収益として計上し、3期ぶりの黒字となった。
 医薬品事業の売上収益は5354億円(38.8%増)、コア営業利益1442億円(前期は30億円の赤字)、営業利益843億円(前期は157億円の赤字)。
 国内医療用医薬品では、乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」662億円(28.5%増)が大きく伸長。関節リウマチなどの治療剤「シンポニー」436億円(0.5%)増、2型糖尿病治療剤のDPP4阻害剤「テネリア」154億円(1.3%増)、SGLT2阻害剤「カナグル」116億円(2.8%増)、DPP4とSGLT2の合剤「カナリア」97億円(6.5%減)となった。
 海外医療用医薬品の筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカヴァ」は462億円(87.8%増)と大幅に拡大した。
 ヘルスケアの研究開発分野について、小林義広ファーマビジネスグループ戦略本部長は、「従来の中枢神経、免疫・炎症、ワクチン以外にも、抗がん剤のMT-2111(大細胞型B細胞リンパ腫)がP2段階にある」と報告し、「この辺りを中心とした領域を強化したい」と述べた。
 小林氏は、ワクチン事業にも言及し、「グローバルでは撤退したが、国内では阪大ビケンとタイアップしたNO1企業として注力していく」考えを強調した。
 2023年度のヘルスケア部門の業績予想は、売上収益3890億円(27.3%減)、コア営業利益200億円(86.1%減)。
 売上収益は、薬価改定や一部導入品の契約変更によるマイナスを、新型コロナワクチン事業撤退のコスト削減効果や、国内での糖尿病治療注射剤「マンジャロ」およびALS経口懸濁剤の上市などでカバー。前年度のジレニアロイヤリティ収入一括計上を除けば、17億円の増益を見込んでいる。
 2023年度医薬品事業業績予想は、売上収益3885億円(27.4%減)、コア営業利益200億円(86.1%減)、営業利益230億円(72.7%減)。
   

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