ベドリズマブ 慢性回腸嚢炎のP4試験で主要評価項目達成 武田薬品

 武田薬品は3月31日、ベドリズマブについて、慢性回腸嚢炎(UC)を対象としたP4相EARNEST試験において、有効性の主要評価項目である14週時点における慢性または再発性回腸嚢炎の寛解を達成したと発表した。
 寛解率は、プラセボ投与群の10%に対してベドリズマブ投与群では31%であった。さらに、34週時点でのプラセボに対する優越性も実証し、寛解率はプラセボ投与群の18%に対してベドリズマブ投与群では35%であった。
 これらの結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された。NEJMの論文の表題は、“Vedolizumab for the Treatment of Chronic Pouchitis”(慢性回腸嚢炎の治療薬。
 UC患者は、結腸および直腸の切除(大腸全摘術)と排便機能を保持するために手術による回腸嚢の作製(回腸嚢肛門吻合術またはIPAA)を必要とする場合がある。新たな回腸嚢の内膜で炎症や刺激が認められる回腸嚢炎は、回腸嚢肛門吻合術の最もよくみられる合併症であり、UCもしくは家族性大腸腺腫症(FAP)患者の約50%が罹患する。
 UC患者にとって治癒の可能性のある手術選択肢は、大腸全摘術と、それに続く排便機能を保持するための回腸嚢の作製(IPAA)である。
 回腸嚢の炎症である回腸嚢炎は、便失禁、腹部不快感および出血を生じさせる可能性がある。慢性回腸嚢炎(症状の持続期間が4週間超と定義)はこれらの患者の最大5分の1に発生する可能性がある。
 今回公表した結果では、P4相EARNEST試験がmodified Pouchitis Disease Activity Index(mPDAI)を用いた臨床的および内視鏡的寛解である有効性の主要評価項目を達成し、14週時点において、プラセボ投与群では10%(51名中5名)に対して、ベドリズマブ投与群では31%(51名中16名)であったことが示された(95%信頼区間:5-38パーセンテージポイント[p.p.]差、p=0.01)。
 プラセボとの比較におけるこのような転帰の改善は、34週時点における有効性の副次評価項目でも認められました(mPDAIによる寛解達成率はプラセボ投与群では18%[51名中9名]に対して、ベドリズマブ投与群では35%[51名中18名]であった[95%信頼区間:0-35 p.p.差])。
 mPDAIによる寛解以外にも、ベドリズマブ投与群は14週時点および34週時点においてプラセボ投与群を上回る臨床的な改善を示し、14週時点の差は30 p.p.(95%信頼区間:8-48)、34週時点の差は22 p.p.(95%信頼区間:2-40)であった。
 重篤な有害事象は、ベドリズマブ群の6%(51名中3名)、プラセボ群の8%(51名中4名)で発生した。
 安全性に関して新たなシグナルはみられなかった。同論文では、ベドリズマブがプラセボよりも潰瘍性大腸炎患者のIPAA後の慢性回腸嚢炎の寛解誘導に有効であることが示された。
 ベドリズマブは、欧州連合(EU)においてのみ、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術および回腸嚢肛門吻合術(IPAA)を受け、抗菌剤治療で効果不十分または効果減弱がみられた中等症から重症の活動性の慢性回腸嚢炎の成人患者の治療に適応とされている。
 米国においては、中等症から重症の活動性の潰瘍性大腸炎およびクローン病(CD)の成人患者の治療に適応とされている。

◆サイモン・トラヴィス オックスフォード大学Translational Gastroenterology UnitおよびKennedy Institute教授のコメント
 回腸嚢炎は、潰瘍性大腸炎患者さんの回腸嚢手術後に比較的よくみられる。この炎症性疾患に対する生物学的な治療薬の有効性を示すことは、抗菌剤の効果が得られなくなり、これまで治療選択肢がなかった方々にとって重要である。

◆マルセロ・フレイレ武田薬品グローバル メディカル アフェアーズ部門ヴァイス・プレジデント、消化器系疾患領域ヘッドのコメント
 当社は、活動性の慢性回腸嚢炎など炎症性消化器疾患と共に生きる患者さんの治療とケアを前進させることに取り組んでいる。New England Journal of MedicineにEARNEST試験の最新の結果が公表されたことで、この疾患による患者さんの負担を減らすための当社の取り組みが広く認められることになる。

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