MSDは24日、開発中の経口PCSK9阻害剤「MK-0616」について、P2b相試験で高コレステロール血症患者のLDL-Cを有意に低下したと発表した。
MK-0616は、高コレステロール血症の成人患者を対象に1日1回経口投与のプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤として開発中の化合物。
同試験の主要評価項目では、MK-0616を4種類の異なる用量(6、12、18、30 mg)で投与したとき、8週時における低比重リポタンパク質コレステロ―ル(LDL-C)のベースラインからの変化率をプラセボと比較。 その結果、MK-0616はいずれの用量とも、8週時においてプラセボよりLDL-Cが有意に低下し、プラセボ調整後のベースラインからの低下率は41.2%(6 mg, CI 95%, -47.8 to -34.7; p <0.001)から60.9% (30 mg, 95% CI, -67.6 to -54.3; p<0.001)であった。
MK-0616の忍容性は検討した4用量すべてで概ね良好であった。このデータは、American College of Cardiologyの第72回Annual Scientific Session together with World Congress of Cardiology(ACC.23/WCC)で発表され、同時にJournal of The American College of Cardiologyにも掲載された。
PCSK9を阻害すれば、循環する血液中からのLDL-Cの取り込みが促進される。現在承認されている注射用のPCSK9阻害剤と同様の生物学的機序を介してLDL-Cを低下させるが、環状ペプチドのMK-0616は1日1回の経口薬として開発されている。
LDL-Cの値が高いまま治療せずに放置すると、心臓発作や脳卒中などアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高くなる。
◆同試験治験責任医師のChristie M. Ballantyne博士(Baylor College of Medicine医学部教授)のコメント
スタチン系の薬剤は広く使われているが、何百万人もの患者さんが依然としてガイドラインで推奨される水準にコレステロールを下げることができず、アテローム性動脈硬化に伴う重篤な心血管合併症のリスクに直面している。
現在使用できるPCSK9阻害剤は、高コレステロール血症の治療薬として効果的であるが、注射による投与が必要となる。MK-0616がLDL-Cを最大60.9%低下させることを示す有望なデータが得られたことを受け、同剤を1日1回の経口薬として使用できる可能性について、さらに研究を継続する必要がある。
◆Joerg KoglinMSD研究開発本部グローバル臨床開発担当バイスプレジデント(博士)のコメント
今回のデータにより、MK-0616が初の経口PCSK9阻害剤となり得ることが改めて示され、LDL-Cのさらなる低下が必要な高コレステロール血症患者さんの治療に変革をもたらすものと期待される。より多くの患者さんがLDL-Cの治療目標を達成できる可能性がある。今年後半にこのプログラムをP3相臨床開発試験に移行したいと考えている。