再生医療等製品「ビズノバ」 製造販売承認取得 合同会社オーリオンバイオテック・ジャパン

培養ヒト角膜内皮細胞移植概念図 出典:医学のあゆみ vol.274 no.13 p.1305

 合同会社オーリオンバイオテック・ジャパンは23日、再生医療等製品の培養ヒト角膜内皮細胞「ビズノバ」について、17日に製造販売承認を取得したと発表した。
 ビズノバは、「水疱性角膜症」を効能、効果又は性能とし世界で初めて製造販売承認を取得したドナー角膜組織由来の培養ヒト角膜内皮細胞を含む細胞懸濁液の再生医療等製品だ。
 水疱性角膜症患者の前房内(角膜と虹彩と水晶体に囲まれた部分)に移植することで、障害された角膜内皮組織を再建し、角膜の透明性回復を目的に使用される。
 角膜内皮細胞は生体内では再生しないため、水疱性角膜症の治療としては従来ドナー角膜組織を用いた角膜移植術(角膜内皮移植等の部分移植を含む)が行われてきた。だが、ドナー角膜の供給は慢性的に不足している。1名分のドナー角膜から複数患者分のビズノバを製造できるため、ビズノバはドナー角膜不足に対する解決の糸口になることが期待されている。さらに、角膜移植術自体にも課題が多く残されており、ビズノバはそれらを克服する新たな治療選択肢となり得る。
 なお、ビズノバは、2022年2月28日に厚生労働省より水疱性角膜症を対象疾患とした希少疾病用再生医療等製品の指定を受けている。
 オーリオン・バイオテックは、米国ワシントン州シアトル市(本社)、マサチューセッツ州ケンブリッジ市、東京都千代田区および京都市に拠点を置く眼科領域において革新的な再生医療技術により視力の低下で悩む患者の視力回復を目指すバイオテック企業だ。同社は、木下茂京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学教授などから培養ヒト角膜内皮細胞の再生医療製品の基本技術に関わるライセンスを取得しており、100%子会社である合同会社オーリオンバイオテック・ジャパンの日本での製造販売承認取得に続き、米国でも臨床試験の準備を進めている。
 京都府立医科大学は、角膜移植に代わる新規治療法としてドナー由来の角膜内皮細胞を生体外で培養拡大後、高機能な培養ヒト角膜内皮細胞の懸濁液を水疱性角膜症患者の前房内に移植する革新的な再生医療技術である培養ヒト角膜内皮細胞移植を開発してきた。
 2013年12月10日に京都府立医科大学附属病院で水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞移植の臨床研究を世界で初めて開始し、2年間の観察期間を終了した最初の11例の成果をまとめた論文がThe New England Journal of Medicine(2018年3月15日版)にOriginal Articleとして掲載された。
 2017年から京都府立医科大学附属病院、京都大学医学部附属病院と国立長寿医療研究センター病院の3施設で水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞移植の多施設共同医師主導治験を実施し、その有効性と安全性を確認した。
 京都府立医科大学感覚器未来医療学(木下茂教授)、同学視覚機能再生外科学(外園千恵教授、上野盛夫講師)などを中心とした成果である。
 同技術開発は日本医療研究開発機構「再生医療実現拠点ネットワークプログラム(再生医療の実現化ハイウェイ、技術開発個別課題)」、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」「再生医療実用化研究事業」の支援を受けて実施した。
 オーリオン・バイオテックは、2020年に木下茂教授などから同製品の基本技術に関わるライセンスを取得し、ビズノバとして製品化することを開始した。2020年10月8日に本製品の製造販売承認を目標とした契約を住友ファーマと締結。2021年4月1日にS-RACMO(住友化学と住友ファーマにより2020年9月に設立された合弁会社)に同製品の製造を委託した。オーリオン・バイオテックは、2022年6月21日に再生医療等製品として、厚生労働省へビズノバの製造販売承認申請を行い、2023年3月17日に製造販売承認を取得した。
 Aurion Biotech社および合同会社オーリオンバイオテック・ジャパン(Aurion Biotech社の100%子会社)は著しい視力低下から失明のおそれのある患者に新しい治療法をお届けできるよう眼科領域の再生医療の研究開発を通じ日本のみならずグローバルで臨床試験の実施や実用化に取り組んでいく。

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