第一三共は20日、パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)について、転移性非小細胞肺がんを対象としたグローバルP1試験およびHER3発現を有する転移性乳がんを対象とした日米P1/2試験で好結果を得たと発表した。
非小細胞肺がんを対象としたP1試験では、客観的奏効率、全生存期間の中央値などにおいて、一貫した有効性が示された。また、HER3発現を有する転移性乳がんを対象とした日米P1/2試験でも、奏効期間の中央値、無増悪生存期間の中央値、全生存期間の中央値などにおいて有用性が示された。なお、これらの試験結果は、日本臨床腫瘍学会(JSMO 2023)で報告された。
非小細胞肺がんを対象としたP1試験では、多くの治療歴があるEGFR遺伝子変異を有する進行・転移性の非小細胞肺がん患者102名において、客観的奏効率は40.2%、病勢コントロール率は78.4%、奏効期間の中央値は7.6ヵ月、無増悪生存期間の中央値は6.4ヵ月、全生存期間の中央値は15.8ヵ月であった。
また、102名のうち、第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤およびプラチナ製剤併用療法による治療歴のある患者78名においても、客観的奏効率41.0%、全生存期間の中央値16.2ヵ月など一貫した有効性が示された。
安全性については、新たな懸念は認められませんでした。グレード3以上の有害事象は58名(56.9%)に認められ、主なものは、血小板数減少(26%)、好中球数減少(21%)、疲労(10%)等であった。
間質性肺疾患(ILD)については、8名(7.8%)がILD外部判定委員会により同剤と関連のあるILDと判定され、その内訳は、グレード1が2名、グレード2が3名、グレード3が1名、グレード5(死亡)は2名であった。
一方、HER3発現を有する転移性乳がんを対象としたP1/2試験では、多くの治療歴があるHER3発現を有する転移性乳がん患者に対し、新たにHER2発現に関する探索的サブグループ解析を行い、同剤の有効性が次の通り示された。
ホルモン受容体陽性乳がんについては、HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)患者58名における客観的奏効率は36.2%、奏効期間の中央値は7.2ヵ月、無増悪生存期間の中央値は5.8ヵ月、全生存期間の中央値は13.7ヵ月であった。
また、HER2-zero(IHC 0)を示す患者39名において、客観的奏効率は28.2%、奏効期間の中央値は7.0ヵ月、無増悪生存期間の中央値は8.2ヵ月、全生存期間の中央値は14.6ヵ月であった。
トリプルネガティブ乳がんについては、HER2低発現患者29名における客観的奏効率は20.7%、奏効期間の中央値は4.1ヵ月、無増悪生存期間の中央値は4.4ヵ月、全生存期間の中央値は12.7ヵ月であった。
また、HER2-zeroを示す患者19名においては、客観的奏効率は26.3%、奏効期間の中央値は8.4ヵ月、無増悪生存期間の中央値は8.4ヵ月、全生存期間の中央値は16.6ヵ月であった。
安全性については、用量(4.8mg/kg, 6.4mg/kg)および実施国別(日本142名、米国40名)の解析が実施された。グレード3以上の有害事象は、日本で99名(69.7%)、米国で21名(52.5%)に認められた。
ILDについては、日本で12名(8.5%)がILD外部判定委員会により本剤と関連のあるILDと判定され、その内訳は、グレード1が3名(2.1%)、グレード2が5名(3.5%)、グレード3が3名(2.1%)、グレード5(死亡)は1名(0.7%)であった。米国でILDと判定された症例はなかった。
第一三共では、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんおよびHER3発現を有する乳がん患者に新しい治療の選択肢を提供できるよう、両試験のデータを精査し、今後の開発計画を検討していく。