先日三師会で合同の講演会を開催しました。いろいろな三師会がありますが、この三師会は医師会、歯科医師会、薬剤師会の組み合わせです。2011年から講演会を開催しており、今回は第9回でした。共有できるテーマを考え、各師会がそのテーマに基づき講演をしています。
今回のテーマは、「デジタル化及び最近の動向における師会の取り組み」で、基調講演の演題は「医療DXの推進」でした。各師会の演題は、薬剤師会が「堺市薬剤師会が取り組む医薬品適正使用推進~さかい地域フォーミュラリをみすえて~」、医師会が「カルテをつなぐ、多職種をつなぐICTネットワークシステム」、歯科医師会が「堺市歯科医師会・デジタル化への取り組み例」でした。
薬剤師会の「堺市薬剤師会が取り組む医薬品適正使用推進~さかい地域フォーミュラリをみすえて~」の講演の中では、『どたすけ通信第1号』の紹介がありました。堺という漢字を土・田・介の3つに分けて土田介(どたすけ)と呼びます。
発行は、堺市薬剤師会さかい医薬品適正使用推進会がおこなっており、堺市薬剤師会・堺市地域支援病院5病院の薬剤部(科)・大阪大谷大学薬学部の協力のもと、堺市医療圏における医薬品情報をもとに有効性・安全性・経済性の観点から分析し、高齢者への薬物治療や生活習慣病の治療に役立つ情報を掲載しています。堺市民の医薬品適正使用の推進の一助になればという目的です。
第1号では、堺市におけるジェネリック医薬品の現状分析(スタチン製剤)が載っていました。スタチン製剤の使用は数量ベースでロスバスタチン、アトルバスタチンの2製剤が30%以上、ピタバスタチン、プラバスタチンの2製剤が13%以上を示し、4製剤合計で95%以上の使用実績で治療の中心となっています。
薬剤比較をするにあたっては大阪大谷大学薬学部実践医療薬学講座の協力を得ており、各種ジェネリック医薬品と先発医薬品のパラメータ比を、X軸にはCmax(最高血中濃度)、Y軸にはAUC(血中濃度曲線面積)を示しており、軸の中央ほど先発品に近似していることを示しています。
生物学的同等試験の許容域は、ジェネリック医薬品と先発医薬品の血中濃度の比の幅を示しているのであって、治療効果そのものの差の幅を示しているわけではなく、服用する人の服用時の体調や代謝等の状態によって起こる血中濃度のバラツキ等を考慮したうえで、ジェネリック医薬品の医療効果が同等と評価できる幅について安全域を含めて設定されています。
他にも有害事象事例についての掲載もあり、今後の薬剤の方向性についても大いに参考になると考えられます。このような通信を三師会や他職種、行政と共有することによる連携は地域の医療の向上につながり、地域に貢献できる事業となるひとつであると思います。医療現場での疑問から生まれた考えを実現している「さかい医薬品適正使用推進会」に声援を贈るとともに、第2号の発行を待ち遠しく思います。
薬剤師 宮奥善恵