免疫抑制作用刺激タイプの抗PD-1抗体を発見 神戸医療産業都市推進機構

過剰な免疫反応による炎症性疾患の新規免疫抑制薬開発に期待

太田氏

 神戸医療産業都市推進機構は16日、同機構先端医療研究センター免疫機構研究部の太田明夫部長らの研究グループが、新規免疫抑制薬の開発につながる抗PD-1抗体を発見したと発表した。
 Meiji Seikaファルマより出向の鈴木健介研究員、 医薬基盤・健康・栄養研究所永田諭志リーダー、理化学研究所木原美帆技術員、中野浩平技術員、京都大学本庶佑特別教授(神戸医療産業都市推進機構理事長)らとの共同研究により、がんの免疫治療に用いられているこれまでのものとは全く別種の抗PD-1抗体の中に、PD-1の免疫抑制活性を誘導できるアゴニスト抗体を見出したもの。
 この発見は、自己免疫疾患など過剰な免疫反応が原因となっている炎症性疾患の新規治療法に結びつく可能性がある。同研究成果は、米国東部時間1月13日付けの米国科学誌『Science Immunology』に掲載された。
 太田氏らの実験結果は、この新規抗体がT細胞によって誘発される炎症性疾患に対して効果的であることを示している。さらには抗PD-1アゴニスト抗体のFcレセプターへの親和性が免疫抑制効果増強の鍵であることを突き止め、ヒト免疫細胞に対してより実効性のある抗体への改良にも成功した。 これらの知見は、過剰な免疫反応が原因で起こる炎症性疾患の新規治療法への応用が期待される。同研究のポイントは、次の通り。

・免疫抑制作用を刺激するタイプの抗PD-1抗体を発見した。

・PD-1とは、免疫反応を抑制する分子であり、本庶佑理事長のノーベル賞受賞はPD-1の機能を阻害する抗体を利用した新しいがんの治療法に対するものであった(下図A)

 それに対して、がん治療に利用されるものとは全く別種の抗PD-1抗体が真逆の作用、すなわちPD-1による免疫抑制作用を誘導するメカニズムを、今回解明した(下図B)

・この発見は、自己免疫疾患など過剰な免疫反応が原因となっている炎症性疾患の新規治療法に結びつく可能性がある。

 がん治療に利用されている抗PD-1抗体(ブロッキング抗体)が免疫反応を強化するのに対し、今回発見されたアゴニスト抗体は結合部位が異なっており、積極的に免疫抑制を誘導する機能を有する。 
 先端医療研究センター 免疫機構研究部では、この研究においてMeiji Seikaファルマとの創薬・バイオ分野における共同研究「PD-1の免疫抑制活性による自己免疫疾患を含む炎症性疾患の治療」(HBIイノベーションプログラム)を進めている。
免疫系の不調は非常に多岐にわたる疾患を引き起こす。太田氏らの研究目的は、免疫系の活性を適切なレベルに是正して、多種多様な疾患の治療に結びつけることだ。
 免疫のシステムの中には免疫反応の強度を抑制するメカニズムが備わっており、その働きを人為的に向上させることができれば、過剰な免疫反応を抑制して数々の炎症性疾患の症状を改善できるものと期待される。
 また、炎症性疾患を発症するリスクについて早い段階で把握することができれば、治療方針の決定において重要な情報をもたらすことができる。そのために太田氏らは、炎症性の変化を早期に検知するのに役立つマーカーの探索も行っている。

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