冬本番を迎え、いよいよ本格的な風邪シーズンが到来した。気温の低下とともにリスクが増大する風邪、新型コロナ感染症、インフルエンザを全方位で予防してたいものだ。
そこで、ユーグレナが本年12月に、全国の20~60代の男女1000名に実施した「免疫対策として気をつけている食生活・生活習慣に関するアンケート」結果をもとに、 医師であり、栄養に詳しい谷口英喜氏(済生会横浜市東部病院患者支援センター長/栄養部部長、教えて!「かくれ脱水」委員会副委員長)が 風邪・新型コロナ・インフルエンザ防止ポイントとなる免疫対策について解説した。
風邪・新型コロナ・インフルエンザの防止において、マスク、手洗い、うがいなど、ウイルスを身体に入れない対策ももちろん重要である。だが、それらを行うことによる感染症予防ではまだまだ十分とは言えない。
「免疫対策として気をつけている食生活・生活習慣に関するアンケート」結果は、食生活では、「野菜を食べるようにする」(434人/1000人・以下同じ)、「ヨーグルトを飲む、食べるようにする」(311人)、「納豆を食べる」(286人)、「コーヒーを飲むようにする」(265人)、「果物を食べるようにする」(222人)と続いた。
生活習慣では、「規則正しい生活をする」(454人)、「よく寝る」(436人)、「ストレスを貯めないようにする」(396人)、「食事は栄養を考えてバランスよく食べる」(367人)と続いた。
規則正しい生活に栄養バランスの良い食事を心がけることは大正解であるが、ウイルスはどこにでもいるもので、感染する人、しない人の差が出るのは、そもそもの免疫力の違いである。
多忙な日々の中で生活リズムが崩れたり、食事をすることすらままならないような人は、免疫バランスを整える効果のある食品を知って積極的に取り入れると良い。近年、昔よりもさらに、免疫バランスに良い影響をもたらす食品が発見されている。
そもそもウイルスが身体に侵入しないように防ぐのは不可能である。マスクや手洗いは、侵入してしまうウイルスの量を減らす対策にはなるが、どんな人もウイルスは常日頃、口や鼻などから体内に取り込んでしまっている。だが、感染する人、しない人の差が出るのは、そもそもの免疫力の違いからである。抜本的な免疫対策をする必要がある。
今年の冬も風邪・新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ、全方位予防を
風邪の症状で診察に来る患者は増えており、都度、風邪か新型コロナウイルス感染症かインフルエンザかの検査が必要になる。特に最近は、重い風邪症状だとオミクロン株 BA-5系統に感染している患者が多くを占める。比較的症状が軽い人が多いのが幸いであるが、咳、咽の痛み、淡の症状の訴えが多い。
オミクロン株 BA-5系統に感染している患者では、年齢による差や個人差はあるものの、39度を超える高熱を1回は出すという人が大半だ。中高年以上の人、疲労がたまっていて免疫力が下がっている人はやはりそれだけ高熱が続くと身体へのダメージが重なり、重症化してしまうリスクがあるので、免疫対策をそれぞれが心がけることが最重要である。
感染症は、ウイルスが一定量体内に入り、細胞に感染することで起こる。従って、体内に侵入するウイルス量を最小限に抑えることが感染症予防の第一歩になる。
そのためにはまず、「人混みに近寄らない」これは非常に有効である。また、マスクも、「吸い込んでしまうウイルスを減らせる」のでもちろん有効である。うがいは、喉や手に付着したウイルスを洗い流す行為であるが、どんなにガードしていても喉には多少のウイルスは付着してしまうし、既に付着してしまっているものを時間が経過してから流すという行為に、高い感染症予防効果が期待できるかと言えば、若干疑問である。
また、空気は鼻からも入っているので、鼻洗いまでしないと完璧とは言えないだろう。人混みで感染している人と接触があるかもしれないが、うがいをすれば大丈夫、とは考えず、なるべく大量のウイルスに接触する可能性のある機会を減らすことが予防の観点ではおすすめである。
免疫細胞を“つくる、はたらく、まもる”栄養素を意識してバランスの良い食事を
風邪などのウイルスは実は毎日身体に入ってきている。それでも症状が出ないのは、免疫機能が順調に働いているからだ。ウイルスや細菌が入ってきたときに戦う免疫細胞が、きちんと作られ、そのメカニズムがきちんと働き、破壊されにくくするために積極的に取り入れるべき栄養素や成分が重要となる。
免疫細胞自体をつくるタンパク質はたっぷりと
肉、魚、卵、大豆などに含まれるタンパク質は、筋肉を作る栄養素として有名だが、そもそも生き物の身体を作る細胞はタンパク質を主成分としている。ウイルスなどと戦う免疫細胞もタンパク質からできているので、豊富な免疫細胞を維持するにはタンパク質が必須になる。
補酵素と呼ばれるビタミン群
食べたものを分解・消化・吸収・排泄、代謝させることで健全な生体活動がなされるが、摂取した栄養素にこれらの働きをさせるには「補酵素(英語では「コエンザイム」)と言われる成分たちが必要だ。それにあたるのがビタミン類である。
なかでも免疫細胞を“つくる、はたらく、まもる”上で注目したい栄養素は次の通り。
・ビタミンC
身体の様々な細胞同士をつなげる結合タンパク質であるコラーゲンの生成に必須の栄養素。攻撃された細胞の炎症を抑え、免疫機能の抵抗力を上げる。
・ビタミンB
食べ物をエネルギーとして代謝し、活動のためのエネルギーを作る栄養素である。また、免疫細胞のもとになる免疫グロブリン(IgEやIgMなどと呼ばれるタンパク成分)はビタミンBがないと作れない。ウイルスなどが侵入し、抗原刺激を受けた際にウイルスや細菌と戦う兵隊となり、戦ってくれる血液中のタンパク成分が免疫グロブリンである。
・ビタミンA
皮膚や粘膜を作り、維持するのに役立つ栄養素です。皮膚や粘膜が健康であることで、ウイルスの第一関門である体表面におけるウイルス侵入を防ぐことにもつながる。侵入するウイルスの量が減ると、ウイルスと戦う免疫機能への負担も減る。
・ビタミンE
血管を丈夫にしなやかにすることに一役買う。血管が元気であることで、血流がスムーズになり、全身の臓器に栄養や酸素が豊富に行き渡り、正常に働くことになる。すると、免疫細胞を作る肝臓や骨髄などの臓器も活性化し、免疫機能の正常化につながる。
細胞の破壊からまもるフィトケミカル
・ポリフェノール
緑茶に入っている「エピガロカテキン(EGC)」、「エピガロカテキンガレート(EGCG)」やコーヒーに入っている「クロロゲン酸」などのポリフェノールは、果実を紫外線から守る栄養素で、抗酸化作用を持ち、身体の中で日々作られ、細胞を破壊してしまう活性酸素を不活化する働きがあるものがある。活性酸素が過剰になると免疫細胞にも障害が出るので、ポリフェノールの摂取による活性酸素の抑制は、免疫に多少なりとも寄与すると言えよう。
免疫機能を正常にはたらかせる栄養素
・ユーグレナの食物繊維「パラミロン」
ユーグレナは、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両方の特徴を持つ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素をバランスよく含んだ食品だ。このユーグレナ特有の成分でβ-グルカンの一種である「パラミロン」は、近年機能性についての研究が進んでいて、さまざまな効果がわかっているが、今年この「パラミロン」が免疫細胞を活性化するということがわかった。
21歳から82歳までの健常な日本人成人男女213名を対象に2022年1月から8週間に渡ってユーグレナ1日1000mgを8週間、毎朝継続摂取した人と摂取していない人とを比較したところ感冒症状(かぜ様症状)に及ぼす影響に差が出た。
ユーグレナを摂取していた人は、8週間中に感冒症状があらわれた日の累積日数が有意に少なくなった。
また、感冒症状の中でも特に鼻閉、のどの痛み、疲労などの個別の症状の摂取5週目から摂取8週目の4週間中の重症度も、ユーグレナを摂取していた人のほうが有意に低くなるという結果が出ている。
この症状の抑制に影響を与えているのが、ユーグレナが自身のエネルギー源として蓄えている「パラミロン」だということが判明している。その理由は、「パラミロン」が免疫応答を担うリンパ球の一種、T細胞やB細胞を活性化するが、独自のゲノム編集技術により作出した「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」では、この反応が起こらないためだ。
・ヨーグルトなどの乳酸菌
免疫細胞が正常につくられ続け、正常にはたらく一連のメカニズムを制御するのに、腸内細菌叢のバランスが保たれていることは重要だが、疲労や不規則な生活、不摂生によって腸内環境が乱れると、腸内細菌叢のバランスが崩れ、免疫機能も正常に働かなくなってしまう。乳酸菌も、腸内細菌叢のバランスを整えるので、免疫バランスには寄与すると考えられる。
規則正しい生活と質の良い睡眠を。疲労を溜めないことが重要
栄養のほかに、休息をきちんととり、疲労していない十分な体力を蓄えておくことも重要だ。そのためには、規則正しい生活と質の良い睡眠が必須となる。たとえ睡眠時間が短くても、翌日に疲れの残らないような質のいい睡眠がとれるのが理想的である。最初の3時間のレム睡眠時にしっかり眠れると、翌朝の疲労感につながりにくいといわれる。
疲労感は、様々な体調不良の初期に現れやすい症状である。細胞に十分な栄養素と酸素が行き届かなかったり、老廃物が排泄されなかったりすると疲労感を感じる。従って、疲労を回復させることは、新陳代謝が良くなった徴候と考えられ、免疫対策としても重要である。
また、ユーグレナの「パラミロン」は、睡眠の質の改善、ストレスの緩和にも寄与するため、免疫対策にぜひ取り入れたい食品といえる。
軽めの運動で免疫機能をアップする
免疫対策には軽めの運動を習慣にするのもおすすめだ。身体を動かすことで血行が促進され、免疫細胞を作る肝臓、骨髄などに新鮮な酸素、栄養素が送られ、免疫細胞が盛んに作られるようになる。だが、あまり強度の高い運動は免疫力を低下させるリスクがあるので注意しよう。
水分をきちんと摂り、かくれ脱水をおこさない
冬は喉が渇きづらく、うっかり水分摂取を忘れがちですが、喉が渇いた時点で、もう軽い脱水、かくれ脱水を起こしているといえる。水分不足は血流の不足につながるので、臓器への栄養・酸素の運搬効率が悪くなってしまい、免疫機能を低下させる。
粘膜を覆う唾液などの粘液も、水分を十分摂らないと作られない。粘膜がきちんと湿っていると、粘膜の表面上にある線毛が粘液の中で動き、付着したウイルスを外に掻き出す機能が働き、ウイルスが体内に入りにくくなる。
お酒は体力十分のときにしか飲まない
過度なアルコール摂取は肝臓に負担をかける。肝臓では、消化器官からやってきた栄養を身体の各器官が必要とする形に変えたり、エネルギーとしてつくり出したりする働き=“代謝”が行われている。だが、過度の飲酒をしてしまうと、肝臓の代謝酵素の誘導が促進され、薬物や栄養素の代謝にも悪影響を与える。
また、自律神経のアンバランスを引き起こし、血流障害が起きるために免疫産生細胞が十分に機能しなくなる。その結果として、過度な飲酒は全身の免疫機能のバランスを崩してしまう。過度な飲酒は控えよう。
まずは、「侵入するウイルスの数を減らす」ことが重要だ。だが、必ず侵入してしまうウイルスに対抗する免疫細胞を作り、正常に働かせる仕組みを理解して、より効果的な免疫対策に取り組んで頂きたい。