初期DNAコロナワクチン開発を中止し、改良型DNAワクチン及びその経鼻投与製剤の研究開始 アンジェス

 アンジェスは7日、これまで開発を進めていた新型コロナ(武漢型)DNA ワクチン(初期のワクチン)の開発を中止し、新型コロナ変異株(オミクロン BA.5 等)にも有効な改良型 DNA ワクチン及びその経鼻投与製剤の研究を開始すると発表した。
 アンジェスは、2020年3月に同社が保有する DNA プラスミド技術を用いた新型コロナ(武漢型)DNA ワクチンの非臨床試験を開始し、P1/2相臨床試験、P2/3相臨床試験と開発を進めてきた。だが、2021年11月に初期のワクチンでは期待どおりの効果を上げることが難しいとの判断に至った。
 また、同社は、2021年8月より、初期のワクチンの薬剤濃度を上げた高用量製剤を用いたP1/2I相臨床試験も併せて進めてきた。現在、高用量製剤でのP1/2相試験の投与を完了し、データの整理、分析を行っている。
 この高用量製剤の最終的な臨床試験結果の確定にはさらに時間が必要であるが、臨床試験の速報データにより、安全性については確認されている。だが、 高用量製剤は当初開発した初期のワクチンよりも免疫原性は増強したものの、筋肉内接種群と皮内接種群いずれにおいても、主要評価項目である、12 週後の SARS-CoV-2 のシュードウイルスに対する中和活性及び12週後の SARS-CoV-2 スパイク(S)糖タンパク質特異的抗体価が期待する水準には至らなかった。この結果に基づき、同社は、新型コロナウイルス感染症(武漢型)に対する高用量製剤を含む初期のワクチンの開発中止を決定したもの。
 こうした状況に対し、アンジェスは、これまでの研究開発の知見を活かし、プラスミドの発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、並行して、将来発生する可能性のある新たな変異株を視野に入れ、当面、オミクロン株の最新変異株(BA.5 等)に対しても有効な、改良型 DNAワクチン研究を開始する。
 さらに、ウイルス性肺疾患に対し、広範な免疫応答を刺激し、ウイルスの増殖防止、拡散の阻止が期待される、ワクチンの経鼻投与製剤の研究も開始する。改良型 DNA ワクチンとその経鼻投与製剤の研究開発により、安全で予防効果の高い DNA ワクチン及び投与方法の実現を目指す。
 これまで、同社の初期のワクチンの開発については、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」、ワクチン開発推進事業、並びに、厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」として、補助金を受領しており、入金時に貸借対照表負債の部「前受金」として計上。2022 年12月期第2四半期末時点で前受金は 57億6400万円となっている。
 同社からワクチン開発に使用した費用明細を申告し、申告内容について年度毎の調査が実施され、適正と認められたワクチン開発費を営業外収益の補助金収入に振替を行っている。アンジェスに支給されるワクチン開発に関する補助金は既に入金が完了しており、前受金に計上している補助金については、今後の申告、調査の結果、適正と認められるワクチン開発費を調査年度毎に補助金収入として計上する予定である。
 なお、今回の初期のワクチンの開発中止により、共同研究に参画した大阪大学及びタカラバイオ、ダイセル、EPS グループ、ファンペップ、ペプチド研究所、新日本科学、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、フューチャー、スリー・ディー・マトリックス、AGC Biologics 社、Cytiva 社、シオノギファーマ、Kaneka Eurogentec社、Brikell Biotech社との初期のワクチンに関する共同研究も終了するた。
 一方、改良型 DNA ワクチンとその経鼻投与製剤の研究費用は、初期の段階のため、当面は手元資金からの捻出を予定しているが、研究開発の進捗を見極めながら資金の検討を行っていく。今回の初期のワクチン開発中止及び改良型 DNA ワクチンとその経鼻投与製剤の研究に伴う同社の連結会計年度における連結業績、財政状態への影響については、前述の通り前受金として計上している補助金のうち、どの範囲のワクチン開発費が当連結会計年度中に認められるかなどの詳細が未確定であり、現時点でその影響を見通すことが難しい状況となっている。
 今後の進捗を踏まえ、合理的な算出が可能になり次第速やかに開示する。

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