ベーリンガーインゲルハイムアニマルヘルスジャパンは1日、 猫の慢性腎臓病と高血圧症に対する新たな治療薬として「セミントラ経口液猫」を同日より全国で発売すると発表した。 同剤は、テルミサルタンを有効成分とし、 効能は、 猫の慢性腎臓病(慢性腎不全)における尿蛋白の漏出抑制と、全身性高血圧症の治療薬である。
慢性腎臓病とは、数ヶ月から数年にわたって進行する、 腎機能が低下する疾患で、猫は、高齢になるにしたがって慢性腎臓病の罹患率が高くなり、10歳以上の猫の30~40%以上が罹患し、 死因の13%を占めるといわれている。
慢性腎臓病を患うと、 腎臓の状態は進行性に悪化していく。一度壊れた腎臓は元に戻ることはなく、 残された腎臓に過剰な負荷がかかるようになり、 腎臓の臓器障害がさらに助長されてしまう。そのため、慢性腎臓病は早期発見・治療がとても重要である。
また、猫の正常な収縮期血圧は140mmHg未満で、 血圧が高くなるほど組織・臓器障害のリスクが上昇する。だが、高血圧症は病状が進行するまで気づくことが難しく、 気づかないうちに複数の臓器に様々な影響を及ぼす。
影響を受けた臓器での重篤な障害が起きてから分かることが多いため、 高血圧症は「サイレントキラー」と言われている。影響が出やすい臓器は、 脳(沈鬱、 混乱、 異常発生、 発作)、 眼(失明、 眼内出血、 網膜剥離)、 心臓(心臓肥大、 心音異常、 心不全)、 さらには腎臓(慢性腎臓病)が挙げられる。
また、 最近の研究結果を基にした国際的なガイドラインにおいて、 高血圧症が腎臓に障害をもたらす可能性が示されている。 慢性腎臓病に罹患している猫の65%で高血圧症が、高血圧症の猫の74%で慢性腎臓病が認められることが報告されている(いずれの比率も最大数値)。
だが、 猫オーナーにおける「猫の高血圧症」の認知率はわずか13.3%と、 「猫の慢性腎臓病」の36.3%に比べて決して高くはない。
慢性腎臓病と高血圧症は高い関連性があり、両疾患を適切に管理することが重要である。
「セミントラ経口液猫」は、テルミサルタンを有効成分とするアンジオテンシンII受容体阻害薬で、 慢性腎臓病と高血圧症に関与するRAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)を効果的に抑制し、慢性腎臓病と高血圧症を同時にコントロールする。
また、人間や犬に比べて、摂取物の食道における通過速度が遅い猫に飲ませやすい液剤になっている。液剤なので、 投与量を調整しやすく、 猫に合った最適な量を投与できる。
さらに、無味無臭で食事の影響も受けないため、フードに混ぜたりかけての投与も可能である。専用のシリンジを使って、猫の口に直接投与することも、食事にかけて投与することもでき、フレキシブルに投与方法を選択できる。
こうした特徴により、国際的な猫の医学界であるInternational Cat Careが認定する「easy to giveアワード」を受賞している。
◆長谷部裕之ベーリンガーインゲルハイムアニマルヘルスジャパン代表取締役社長のコメント
セミントラ経口液猫は、動物用として認められた国内唯一の高血圧症治療薬である。
高血圧と併発しやすい慢性腎臓病も同時にコントロールでき、猫オーナーさんと猫の絆を維持しながら長期にわたる健康な生活の実現に寄与できることを大変誇りに思う。
今後、猫の高血圧症の認知度向上や血圧測定の普及にも務め、 獣医師さんおよび猫オーナーさんをご支援していきたい。