大阪大学蛋白質研究所とAIによるタンパク質熱安定性予測アルゴリズム構築で共同研究契約締結 テクノプロ・R&D社

診断薬やタンパク質固定化バイオセンサー等の研究開発に大きく寄与

 テクノプロ・R&D社は19日、創薬バイオインフォマティクス及び計算生物学研究を行なう大阪大学 蛋白質研究所計算生物学研究室(水口賢司教授)と、AI技術を用いたタンパク質熱安定性予測アルゴリズムの構築に関する共同研究契約を締結したと発表した。
 タンパク質は一般的に熱に弱く、長期保存等の観点から創薬・バイオロジー分野では熱安定なタンパク質が求められている。だが、タンパク質にどのような改変を加えれば熱安定性が上がるのかを予測するために利用される学習データセットは既報論文に依拠しており、文献ごとに実験方法が異なる点やデータにバイアスが存在する可能性があるなど、正確な予測が困難であるという課題がある。
 こうした中、同共同研究では、AI技術による予測とハイスループットな実験実証系の組み合わせを用いて予測の精度を高め、タンパク質熱安定性向上に役立てることを目指す。
 テクノプロ・グループは、日本および中国、東南アジア、インド、英国などの拠点に2万3944人(国内2万1054人、海外2890人)の技術者・研究者を擁する日本最大規模の技術系人材サービスグループ。機械、電気・電子、情報システム、化学、バイオ、医薬、建築など産業界が必要とするすべての技術領域をカバーする専門領域の広さと高度な技術力が評価され、国内外で常時約2500以上の企業・研究機関・公共団体・大学に対し、技術を軸とした各種サービスを提供している。テクノプロ・グループのテクノプロ・R&D社は、1300名超の研究者を正社員として擁し、大手製薬企業や化学企業を中心に大学研究室・官民の研究機関など、常時約500の顧客にサービスを提供している。
 一方、計算生物学研究室では、計算科学的手法を用いて、疾患や生命現象の解明と創薬などへの応用を目指した研究を行なっている。様々な分野で人工知能(AI)への期待が高まる中、コンピュータ解析に適した形に整理されたデータをどれだけ利用できるかが、AI開発の成否に大きな影響を与えるとの認識から、遺伝子、タンパク質を中心とする分子レベルのデータから、疾患、化合物などに至る幅広いデータの統合、データベース開発に力を入れている。
 また、タンパク質の構造、機能、相互作用などを予測する手法の開発と、具体的なデータ解析への応用も推進している。
 今回の共同研究では、条件や方法の揃った実験データセットから予測に用いるデータベースを作成するために、多くのタンパク質実験の手法を熟知し豊富な経験を持つテクノプロ・R&D社のバイオリサーチセンターが、短期間で多数のタンパク質を製造して熱安定性を調査することが可能なハイスループット系を構築する。
 大阪大学 蛋白質研究所 計算生物学研究室(水口賢司教授)では、前述のプロセスを経て得られたデータベースを元に予測アルゴリズムを構築し、熱安定性の向上につながる可能性が高い改変の候補を絞り込んだ上で、テクノプロ・R&D社のハイスループット系で作製して評価を行うことにより、熱安定性予測の精度向上を実現する。
 この共同研究による予測精度の向上により熱安定性の高いタンパク質製造が可能になることで、タンパク質の安定性が製品の品質保持期間や使用条件範囲に大きな影響を与える診断薬や、タンパク質を固定化したバイオセンサー等の研究開発に大きなメリットが生まれるものと期待される。
 また、今回の共同研究で得られた知見を活用し、「工業生産プロセスで用いる酵素の耐熱性の向上を図りたい」「タンパク質が安定な条件を探したい」「pH安定性を変えたい」といった実際にテクノプロ・R&D社に寄せられている要望に応えるサービスの提供も予定してる。
 テクノプロ・R&D社は、今後もタンパク質の発現・精製から各種解析まで数多くのデータ・課題探索で培った技術と経験を産業界で活用し、社会的に大きな意義を持つ研究の推進を支援していく。

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