Fate社とiPS細胞由来CAR-T細胞とCAR-NK細胞療法による固型がん治療で提携拡大 小野薬品

 小野薬品は28日、Fate 社(米国)と、2018年9月に締結したiPS細胞由来のキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療薬の創製を目的とする創薬提携を拡大する契約を締結したと発表した。
 今回の契約締結により、小野薬品は固形がんに対するiPS細胞由来CAR-T細胞に加えて、CAR-NK細胞療法の選択肢を追加する。また、固形がんに対する二つ目の標的を新たに追加し、同社から当該標的に結合する抗体をFate社に提供する。
 Fate社は、引き続き同社から研究資金を受領し、事前に設定した基準を満たすiPS細胞由来のCAR-T細胞およびCAR-NK細胞の製品候補を創製する。小野薬品は、その製品候補を全世界で開発・商業化する権利を保有し、Fate社は欧米における共同開発・共同販売のオプション権を保有する。 小野薬品は、Fate社に対して臨床開発の進捗に応じたマイルストン、上市後の売上高の目標達成に応じたマイルストン、および上市後の売上高に応じてロイヤルティを支払う。
 なお、Fate社は同提携から創製される製品の全世界でのすべての製造権を保有する。
 Fate社独自の人工多能性幹細胞(iPSC)製品プラットフォームにより、他のがん治療との併用を含め、より有効な薬理活性を発揮するために複数回投与するように設計、改変され、汎用性が高く、均質なoff-the-shelf 製剤として細胞製品の大量生産が可能になる。
 ヒトiPSCは、自己増殖能と全ての細胞への分化能を持ち合わせた多能性幹細胞だ。Fate社の最初の取り組みは、1回の遺伝子改変でヒトiPSCを設計し、遺伝子改変iPSCをクローン化したマスターiPSC株として選択するというもの。
 モノクローナル抗体などのバイオ医薬品の製造に使用されるマスター細胞株と同様に、クローン化したマスターiPSC株は、組成が均一で、明確に定義された細胞で、費用対効果の高い方法で患者の治療ためのoff-the-shelf製剤として大量生産することができる細胞療法製品を製造するための供給源となる。
 患者またはドナー由来の細胞を用いた細胞療法製品の生産においては、バッチ間および細胞間のばらつきなど、臨床での安全性および有効性に影響を及ぼす多くの制限がある。さらに、サプライチェーンも複雑でその分費用も高額になることが課題であった。
 Fate社のプラットフォームでは、そのような多くの制限を克服するよう独自に設計されている。Fate社のiPSC製品プラットフォームは、350件以上の既承認特許と150件の出願中特許からなる知的財産ポートフォリオによって支えられている。

◆滝野十一小野薬品取締役専務執行役員研究本部長のコメント
 Fate社との創薬提携に基づき、固形がんに有効性を発揮するようデザインされた複数の作用機序を組み入れたiPS細胞由来CAR-T細胞治療薬の製品候補での臨床開発に向けて取り組んでいる。
 当社は、Fate社との提携の進捗と革新的な製品候補を創製するFate社の実績を高く評価しており、今回、創薬提携を拡大し、固形がんに対する二つ目の標的を追加するとともに、iPS細胞由来CAR-T細胞に加えてCAR-NK細胞を追加し、がん患者さんにとってファーストインクラスの新たな細胞治療法を開発するよう引き続きFate社と協働していくことを嬉しう思う。

◆Scott Wolchko Fate社社長兼最高執行責任者のコメント
 小野薬品との創薬提携では、固形がんの細胞療法分野におけるイノベーションの推進に重点を置いて開発を進めており、最初のiPS細胞由来CAR-T細胞製品候補でこれまでに得られた非臨床データに期待を寄せている。
 Fate社は、その細胞製品候補に組み込むためのがん特異的抗体の提供をはじめ、本契約におけるこれまでの小野薬品の貢献に感謝している。
 今回、小野薬品との創薬提携をさらに拡大し、固形がんに対して二つ目の抗原を標的とする新たな製品候補の非臨床開発を開始することをうれしく思う。

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