近隣に既に地域フォーミュラリーを行なっているY市薬剤師会があり、先日私たちの薬剤師会にお迎えして講演していただきました。
フォーミュラリーとは、医薬品マネジメントの手法で、医療機関において患者さんに対する最も有効・安全で経済的な医薬品の使用方針とされます。ファーマシューティカルケア理念に基づいていて、患者さんに対しての責任をとる勇敢な行動であるといえます。
フォーミュラリーは、欧米では30年程前から導入されてきました。英国では1990年代には各医療機関と地域ごとのフォーミュラリー作成が始まり、今は地域フォーミュラリーとして定着しています。米国でも医療機関や保険会社が独自にフォーミュラリーを作成し、最適な医療提供と支出の削減が実現しています。日本でも病院で調査を始めるなど、医療の効率化をはかる目的で、本格的導入に向けて動き始めています。
日本では少子高齢化が進み、今後も医療費が増大し続けることが予想されています。団塊世代の後期高齢者入りとなる2025年に向けて、医療費削減をどのようにしていくかはずっと問題となっていて、医療費削減のひとつとしてフォーミュラリーの導入は必然となるのかもしれません。
「骨太の方針2017」でも謳われていて、財政制度等審議会ではARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を例として説明されました。
採用する医薬品はエビデンスを基本として選択し、安全、安定、合理的な治療の実践につながります。フォーミュラリーの作成メリットとしては、ジェネリック医薬品の有効活用につながる等の経済メリットに加え、採用医薬品が整理されることもあります。
今回のご講演では、PPIについて薬剤名やメーカー名の例もお示しいただき、内容を容易に理解することができました。
Y市では、プロジェクトチームを作成し、準備に十分な時間をかけて調査を行い、ここまでくじけずに諦めずに進めて来られました。最初は話も難航し、医療機関から門前払いをされることもあったということです。チームは薬剤師が中心となり、医師会、歯科医師会、病院薬剤師で構成されています。諦めずに進めて来た結果、形ができてきたそうです。
地域単位での医薬品の使用指針として、地域フォーミュラリーを作成することが効果的です。使用量の多い生活習慣病等の内服薬は、医療機関の多くが外来で処方されていて、そこでキーマンになるのは薬局薬剤師です。
重要なことは、患者さんのために、いかに有効で安全で経済的な薬物治療を目指すのかに尽きます。その目的を持つことで、ぶれずにフォーミュラリーを進めることができるということでした。さあ私の所属薬剤師会でも始めてみましょうか。
薬剤師 宮奥善恵