大鵬薬品は、カリナンオンコロジーとカリナンパール買収契約および開発中のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤CLN-081/TAS6417の米国での共同開発・共同販売契約を締結した。同買収は、今後必要な審査および手続きを経て、2022年第2四半期中に完了する予定。
CLN-081/TAS6417は、がんドライバーである上皮成長因子受容体(EGFR)変異をターゲットに設計した低分子化合物である。同剤は、エクソン20挿入変異に高い阻害活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤であり、野生型EGFRよりもEGFRエクソン20挿入変異に対して選択的に作用する。
アンメット・メディカル・ニーズの高いEGFR遺伝子変異エクソン20挿入変異の肺がんに対して新たな治療選択肢の一つになる可能性が期待されている。
カリナンオンコロジーの子会社であるカリナンパールは、CLN-081/TAS6417の独占的権利(日本以外)を保有していた。大鵬薬品は買収の対価として、カリナンオンコロジーに対して契約一時金2.75億米ドル、さらにEFGRエクソン20挿入変異を有する非小細胞肺がんの各承認マイルストーンとして最大で合計1.3億米ドルを支払う。
カリナンオンコロジーは、米国においてCLN-081/TAS6417を共同開発する権利および共同販売するオプション権を取得し、大鵬薬品とはその米国子会社である大鵬オンコロジーを通して協働する。
米国と中国を除く地域では、大鵬薬品が販売を担う。今後CLN-081/TAS6417の米国での臨床開発費は大鵬薬品とカリナンオンコロジーの両社で折半し、承認後には米国での利益を両社で等分する。
カリナンオンコロジーは、今回の契約一時金の受け取りおよび開発費、販売前費用の削減により、現在の事業計画を元に算出した自社の資金繰りが2026年まで延長すると見込んでいる。この見込みには、各承認マイルストーンや米国での利益等分の受け取りは含まない。
世界で毎年新たに肺がんと診断される患者の約85%を占める約188万人が非小細胞肺がんであるとされ、その中でさらにエクソン20挿入変異の患者さんは約2%、およそ3.8万人と考えられている。
米国では、非小細胞肺がんの約16%にEGFR変異が発現し、その中の12%がエクソン20挿入変異を有するといわれている。
EGFRエクソン20挿入変異を持つ患者は、エクソン19欠損など発生頻度が高いEGFR変異の患者に比べて予後が悪いことが分かっている。これらのエクソン20挿入変異を有する非小細胞肺がんの患者を対象に、CLN-081/TAS6417のP1/2a試験を現在実施している。
◆小林将之大鵬薬品 代表取締役社長のコメント
大鵬薬品で創製したCLN-081/TAS6417を改めて社内のパイプラインに加え、販売に向けてカリナンオンコロジーと力を合わせることを嬉しく思っている。
カリナンオンコロジーは、わずか3年でCLN-081/TAS6417をIND申請前から現在計画している臨床試験まで進めており、その間にFDAからブレークスルーセラピー(画期的治療薬)指定を受けている。カリナンオンコロジーのユニークなビジネスモデルを活用するこの戦略的提携により、CLN-081/TAS6417の最大化および開発の加速を目指す。この薬剤を待ち望む患者さんに一日も早くお届けできるようカリナンオンコロジーとともに大鵬グループとして全力を尽くしたい。
◆Nadim AhmedカリナンオンコロジーChief Executive Officerのコメント
大鵬薬品とともにこのコラボレーションを始めることを楽しみにしている。大鵬薬品は、化合物自体に対する深い理解があることに加え、戦略的に選択的治療開発への取り組み、子会社カリナンパールの共同保有、米国におけるがん領域での高い販売能力の保有から、今後のCLN-081/TAS6417の臨床開発および販売を進めるにあたり、理想的なパートナーである。
また、今回の契約形態は米国における我々の販売体制を十分に確立する機会を提供してくれる。これは自社の次の開発品を販売する際にも役立つという点で重要である。
さらには、今回の契約による対価の受け取り、開発費の共同負担、そして販売時に将来得うる継続的収入源ができたことで、それぞれがファーストもしくはベストインクラスとなり得る幅広いモダリティで構成されているカリナンオンコロジーの強固なパイプラインにより多くの資源を費やすことができる。
このことは、がん患者さんに新たな治療法を届けるという私たちの約束を果たすことにつながる。