米国3新製品の拡大に注力し、ラツーダ特許切れ後の再成長路線目指す 住友ファーマ野村社長

野村氏

 住友ファーマの野村博社長は13日、2021年3月期決算説明会で会見し、昨年公表した2025年度の目標数値(売上収益7500億円・コア営業利益1200億円)に言及。「現状の米国での新製品売上動向を鑑みれば、2023年2月のラツーダ特許切れ後の再成長はそんなに容易な道ではない」との見解を示した。
 さらに、米国でのオルゴビクス(前立腺がん)、マイフェンブリー(子宮筋腫)、ジェムテサ(過活動膀胱)の3新製品の伸長が伸び悩んだ大きな要因として「コロナ禍によるダイレクトなディテール活動ができなかった」ことを挙げた。
 その上で、「現在は、これまでほど社会生活が制限されていないので、セールス力を活発化して新製品の売上拡大スピードを上げていく」と強調した。
 また、コスト低減についても、「これまでのラツーダの収益依存を改め、研究開発費や販管費の適正な縮小にも尽力して利益確保にも努める」
 住友ファーマの2021年度決算は、売上収益5600億円(対前年比8.5%増)、コア営業利益585億円(同15.9%減)、営業利益602億円(同15.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益564億円(0.3%増)。
 中期経営計画2022の最終年度となる2022年度業績予想は、売上収益5500億円、コア営業利益300億円、営業利益240億円、親会社の所有者に帰属する当期利益220億円を見込んでおり、コア営業利益は、昨年5月に改定した2022年度中計目標(600億円)の半分となる。
 その理由について野村氏は、「コロナの影響などで、新製品の市場浸透が改定中計の想定より時間を要しているところが大きい」と説明した。
 北米での2021年度主要製品売上収益実績は、ラツーダ2041億円、アプティオム271億円、オルゴビクス93億円、マイフェンブリー13億円、ジェムテサ71億円、その他554億円。なお、その他554億円の中には、大塚製薬とのCNS領域提携一時金303億円が含まれている。
 2022年度予想は、ラツーダ2158億円、アプティオム318億円、オルゴビクス+マイフェンブリー+ジェムテサ+その他で752億円。
 前年度の同合計は731億円であったが、大塚製薬の一時金を差し引けば428億円となり、3新製品+その他の実質の伸びは、対前年比324億円となる。
 ラツーダは、「来年2月の特許切れ直前までプロモーション活動に注力し、最大限の利益を捻出する」
 各新製品の状況は、2021年1月の発売されたオルゴビクスは、2021年度第4四半期に約3500人の幅広い新規投与患者を獲得した(対第3四半期で32%増)。数量でも同期比18%増を示しており、「1日1回1錠経口投与などが処方医から評価されている」
 マイフェンブリー(昨年6月発売)は、本年3月に子宮筋腫治療剤のGnRHアンタゴニストにおける新規処方シェア1位の59%を獲得。「売上収益はまだまだ小さいので、より一層の伸長に尽力する」
 ジェムテサは、2022年3月に月間処方箋枚数2万6145枚を獲得するなど、2021年度計画を上回って進捗している。とはいえ、β3作動薬処方箋枚数シェアは、2021年12月4.7%、2022年3月末6.4%と低く、競合品のミラベグロン(アステラス)が圧倒的シェアを占めている。
 ジェムテサについては、「ディスカウントを要求されるケースもあるが、利益を確保しつつシェアを増やしていく」方針だ。
 大塚製薬と共同開発中のウロタロントの進捗状況は、第1適応症の統合失調症は、ロシア・ウクライナ情勢が臨床試験リクルートに与える影響を考慮し、両国での新規リクルートは中止し、米国を含む他の国の施設に振り分け中だ。
 第2適応症の大うつ病補助療法(試験実施者大塚製薬)については、試験デザイン最終化に向けて検討しており、2022年度にINDを提出する予定。
 第3適応症は、大うつ病補助療法・統合失調症と相乗効果のある疾患を検討している。
 野村氏は、国内事業(2021年度実績1499億円、対前年比1.7%減)にも言及し、「糖尿病関連の薬剤が多くを占めており、我々が重点項目としている精神神経系は少ない。とはいえ、国内の精神神経系市場はそんなに大きくないためラツーダ、ロナセンテープだけで収益の柱を作るのは難しい」と分析。
 その上で、「精神神経系以外のところで提携をして新たな薬剤を導入したい」と述べた。

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