ジルコニウムと可視光に着目した触媒開発
早稲田大学理工学術院の太田英介講師、山口潤一郎教授らの研究グループは、世界初のジルコノセン/可視光レドックス触媒系を構築し、エポキシドの環を開き、ラジカルを生成する「還元的開環反応」の開発に成功した。
エポキシドは反応性が高く、容易に合成可能なため、その有用化合物への化学変換は盛んに研究されてきた。一般的にエポキシドは他の分子の攻撃を受けて開環するが、還元的開環反応ではエポキシドが開環した後、他の分子を攻撃することができる。
この還元的開環反応には、チタノセン触媒が古くから利用され、数々の反応がこの30年に渡って生み出されてきた。チタノセン触媒を用いる開環反応では、エポキシドの二つの炭素–酸素結合のうち、一方の結合が開裂する。
今回、研究チームはジルコノセン触媒により、チタノセン触媒では開裂しなかったエポキシドのもうひとつの炭素–酸素結合を開裂することに成功した。
チタノセン触媒と相補的に利用可能な触媒系の世界初の発見は、還元的開裂反応の進展に大きな役割を果たすと期待される。
今回の研究では、ジルコノセンと可視光レドックス触媒存在下、エポキシドに可視光を照射することで、炭素–酸素結合が開裂し、アルコールを合成することに成功した。また、同触媒系を利用したアセタール形成反応や分子内環化反応も達成し、糖やテルペンなどの天然由来分子を含む40種類以上のエポキシドを様々なアルコールへと変換できた。
これらの研究成果は、Cell Press 社『Chem』のオンライン版に5月3日（現地時間）に掲載された。
