塩野義製薬は18日、日本電気(NEC)とB型肝炎に対する新たな治療ワクチンの創製に関する共同研究契約を締結したと発表した。同共同研究には、AIを用いたバイオテクノロジー開発を手掛けるNECのグループ会社NECオンコイミュニティ(本社:ノルウェー)も参画する。
B型肝炎は、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝疾患で、慢性感染症を引き起こし、最終的に肝硬変や肝臓がんに至るリスクが高まる。
世界で約3億人が感染しており、2019年のB型肝炎による死亡者は82万人と推定されている。乳児のB型肝炎予防ワクチンの普及により、5歳未満の感染率は劇的に減少しているが、その一方で、他の経路による新規感染者は増え続けている。
現在、B型肝炎の治療にはインターフェロン(IFN)と核酸アナログ製剤が用いられているが、IFNによる治療は副作用が発現する頻度が高く、また、核酸アナログ製剤は治療中断による肝炎の再発率が高いことから生涯にわたり服薬が必要となるなど、アンメット・メディカルニーズが高い疾患の1つである。そのため、安全でかつ有効性が高く、最終的には根治できる治療法が求められている。
同共同研究では、感染症を重点疾患領域とする塩野義製薬の創薬力と、NECグループの得意とするAI技術の強みを融合し、B型肝炎の新たな治療選択肢となる治療ワクチンを早期に創出し、患者に届けらえるように尽力していく。
今後、両社は他の感染症においても積極的な共同研究の展開により、アンメットニーズが高い感染症領域における新たなイノベーションの創出に取り組んでいく。
◆手代木功塩野義製薬代表取締役社長のコメント
塩野義製薬は、60年以上にわたり感染症の研究開発に取り組んできた。感染症のリーディングカンパニーとして、人々の感染症に対する脅威からの解放、トータルケアの実現に向けた挑戦を進めている。
とはいえ、今回の新型コロナウイルス感染症のような地球規模の感染症の課題に対処していくためには、1社単独あるいは製薬業界のみで行えることには限界がある。自社の強みを最大限活かしつつ、NECの有するAI技術を融合させることで、グローバルヘルスへの貢献を一層高めていきたい。
◆遠藤信博NEC取締役会長のコメント
NECは、”Orchestrating a brighter world”というビジョンを掲げており、今般の塩野義製薬とのコラボレーションは、新薬の開発を通じてそのビジョンを体現するものになる。
通常、薬の開発は時間と労力がかかるものだが、我々はAI技術の活用により、このような課題の解決と新たなバリューチェーンの構築に取り組む。感染症分野の創薬をけん引される塩野義製薬との連携の中で、我々のAI技術が迅速な創薬開発を可能にし、社会に貢献することを目指したい。