ヒシエキス+ルテインによる糖尿病網膜症発症予防の可能性発見 日大板橋病院、明治薬大、参天製薬

 日本大学医学部附属板橋病院眼科(長岡泰司診療教授)、明治薬科大学薬学部(櫛山暁史教授)、参天製薬の研究グループは7日、ヒシエキスとルテインが、糖尿病網膜症・黄斑浮腫の主要責任分子である血管内皮増殖因子(VEGF)の網膜内における発現亢進を抑制することを発見したと発表した。
 これまで有効な予防法がなかった糖尿病網膜症早期の低侵襲予防法や食品成分による新規予防法確立、新規治療薬開発への同研究成果の応用が期待される。
 研究グループは、2型糖尿病モデルマウスにおいて早期から引き起こされる網膜血流調節障害を評価指標として、食品成分による糖尿病網膜症予防の可能性を検討した。
 その結果、抗糖化作用を有するヒシエキスと抗酸化作用を有するルテインが早期網膜血流障害を抑制し、さらに糖尿病網膜症・黄斑浮腫の主要責任分子である血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor: )の網膜内における発現亢進を抑制することを明らかにした。
 これまで有効な予防法がなかった糖尿病網膜症早期の低侵襲予防法と成り得る可能性がある発見として注目されている。同研究は、日本大学、明治薬科大学および参天製薬の共同研究の成果であり、研究結果を報告した論文は、2月24日(欧州時間)に「Frontier in Physiology」誌に掲載された。
 我が国の失明原因の主因である糖尿病網膜症は糖尿病発症から少なくとも 5-10 年の経過を経て発症・進展するため、発症予防には内科的な血糖コントロールが最も重要と考えられている。
 一方、眼科ではある程度糖尿病網膜症が進行した病期から、重篤な視覚障害を防ぐために光凝固や手術などで治療を行うが、一度低下した視機能を回復させるのは容易ではない。
 そこで、同研究グループは糖尿病網膜症を予防して糖尿病患者の視覚を守るため、網膜症発症前からでも摂取可能な食品成分のうち、ヒシエキス+ルテインに着目し、糖尿病モデル動物を用いてその長期投与の網膜症予防作用を検討した。
 糖尿病では、持続する慢性高血糖により微小血管が早期から障害されることが知られている。
 研究グループは、これまでの研究で、糖尿病網膜症発症前から網膜血流障害の程度が糖尿病による網膜機能障害の定量的指標になることを確認しており、今回もこの網膜血流に着目してヒシエキス+ルテインの作用判定を行った。
 特に、フリッカー刺激(点滅光)に対する網膜血流増加反応には神経細胞やグリアが密接に関与しており、この現象は神経血管連関(neurovascular coupling)(注 1)として広く認知され、糖尿病ではこの神経血管連関が糖尿病発症早期から障害されていると考えられている。
 我々は、フリッカー刺激と高酸素吸入の2つの負荷に対する網膜血流反応を用いて、網膜神経、網膜グリア、網膜血流の中でも、特にこれまで評価が困難であった網膜グリア機能を評価することに成功した。
 その評価法を用いて研究グループは、 2型糖尿病モデルマウスにおいて早期からこれらの負荷に対する網膜血流反応が障害されていることを以前に明らかにしており、これらを背景にヒシエキス+ルテインが糖尿病網膜症・黄斑浮腫の早期障害を抑制させるか否かを検討した。
 同研究では、6週齢の2 型糖尿病マウスを非介入対照群とヒシエキス+ルテインを摂取した介入群とに分けて8週齢から14週齢まで隔週で網膜血流測定を行った結果、ヒシエキス+ルテイン介入群では、安静時の網膜血流に影響を与えなかったにもかかわらず、フリッカー刺激および高酸素吸入に対する網膜血流反応障害をいずれも8週齢から抑制し、この反応は14週齢まで持続していたことが判った。
 さらに、同一個体の免疫組織学的検討では、介入群は非介入対照群で活性化された GFAP(Glial Fibrillary acidic protein)の抑制を認め、加えて糖尿病網膜症・黄斑浮腫の責任因子である VEGF の発現も減少させることを初めて明らかにしました。
 これらの結果から我々はヒシエキス+ルテインの長期投与が2型糖尿病マウスの網膜血流反応障害を抑制し、グリア機能障害と VEGF 発現を抑制することを発見。
 同研究成果から、ヒシエキス+ルテインが糖尿病網膜症の発症予防に繋がる可能性を見出した。今後、ヒシエキスおよびルテインの作用の詳細なメカニズムの解明に関するさらなる検討を経て、将来的に新規治療薬の開発が期待される。

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