新型コロナワクチンのブースター接種 副反応に備える心得と副反応対策“7つ道具” 谷口英喜氏(かくれ脱水委員会副委員長・麻酔科医)が解説

  新型コロナワクチンのブースター接種が大々的に実施され始めた。また、子どもたちへのワクチン接種も検討されはじめ、再び多くの人がワクチン接種を行う局面を迎えた。
 こうした中、ワクチン接種の際に現れる副反応に苦しんだ人も多い。副反応に備え、頭痛薬や食糧、飲料などを備えるナレッジを身につけ、なるべく副反応の辛さを軽減させ、健康を維持して乗り切りたいものだ。
 そこで、かくれ脱水委員会副委員長で麻酔科医の谷口英喜氏が、「ワクチン接種に向けてどう体調を整えるべきか、備えておくべき“7つ道具”」について解説した。
 新型コロナウイルスのワクチン接種による副反応の起きる・起きない、重い・軽い、は人による。3回目のブースターワクチンは、もしかすれば、従来の2回と異なる銘柄のものを接種するという人もいるかもしれない。
 従来の銘柄のものと異なる場合は、体質とのマッチングにより、前回と異なる反応が出る可能性もある。また、その時の免疫の状態によっても、副反応の度合いが異なる場合も考えられる。体調を整え、万が一の備えを完璧にしてなるべく健やかにブースターワクチンを乗り切ろう。

ワクチンの副反応はどうして起こるのか?

 ワクチンの副反応には、接種直後におこるアナフィラキシーショックと遅発性に起きる発熱、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などがある。アナフィラキシーショックは、もともとの体質によって起こるもので防ぎようがないが、万が一ワクチン接種後に起きても、医師が適切な対応をするので医師の判断に従って頂きたい。
 一方、多くの人が経験する発熱、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などは、そのときの体力の状態によって症状の度合いが変わってくる。ワクチン接種の日には、これから山にも登れる、100mくらいは走れる、それくらいの体力を蓄えておくのが理想である。
 また、ワクチン接種前には、汗をかくような激しい運動、寝不足、過度のアルコール摂取を避けるようにしよう。

ワクチン接種後、どう副反応に備える?

 ワクチン接種後は、注射した方の腕を使用する作業や運転なども控えるようにして、激しい運動も避けるようにしよう。ワクチン接種後に発熱、筋肉・関節痛・全身倦怠感が起こるリスクに備え、その日には集中力が必要な業務や運転の予定は入れないように注意を要する。もしも接種後に副反応が現れたときは、原則、医師の指示・処方に従うことが必須である。

さあ来い、ワクチン副反応! 備えるべき“7つ道具”とは?

 ①体温計 知らない間に危険な状態にならないように…
 ワクチン接種後には、自覚がないのに体温を測ったら高熱だったと言うこともある。高熱を出している場合は、体温を下げ、汗による脱水を回避する必要がある。自分の体調を把握するために体温計は必ず備えておこう。

②氷枕
③氷 

 熱は速やかに冷まそう。高熱が続くのをそのまま放置してしまうと、脳や内臓などの器官へダメージを与える危険もある。予想外の高熱の際にきちんと頭部を冷却できるよう、氷枕、氷は備えておくと安心だ。
 おでこに載せる冷却シートは、快適なだけで体温を下げる効果はないので、注意してほしい。

④解熱鎮痛剤 アセトアミノフェンを成分とするものを
 また、ワクチン接種後に発熱した場合の解熱鎮痛薬は、副作用の少ないアセトアミノフェンを成分とするものを選ぶと良い。ただし、肝機能が悪い、アセトアミノフェンにアレルギーがある場合などは使えないので必ず薬剤師に相談してから購入するようにして頂きたい。
 もしもあまりに高熱が続くなど、症状が重いという場合は、必ず医師の診断を受けてほしい。

⑤飲料水 脱水を起こすリスクに備え、普段より多めに!

 水は生きていくために絶対に必要なものだ。副反応が出ると高熱に起因する脱水を起こしやすくなり、普段よりもより多くの水が必要になる可能性がある。1日2リットル分を3日分程度は買い置きしておこう。

⑥食料 カロリーがあるものが必須。特にビタミンB、Cを意識的に。
 
 通常の食事も、買い出しに行けなくなってしまうリスクがあるので、3食を3日分程度は買っておこう。
 食欲が落ちてもまずエネルギーを摂ることが重要なので、エネルギーが摂れるゼリー飲料なども手軽に栄養を摂れて良いだろう。
 また、食事量が減る場合は栄養を効率よくエネルギーに代謝してくれるビタミンB群や、高熱で起こる炎症を抑えるビタミンCなどの栄養素は特に重要になる。
 ビタミンB群は豚肉、鶏肉、サバ、卵などを摂れるインスタント食品や、ビタミンCのためには柑橘系のフルーツジュースなどを準備しておくと良い。

⑦経口補水液
 副反応で起こる「痛み」「倦怠感」を緩和する経口補水液。発熱で大量に汗をかいたり、欠食(食事を抜くこと)してしまうことから脱水を起こすリスクがある。脱水は、水分が不足しているだけではなく、塩分、カリウムも足りていない状態である。脱水の緩和には、真水や糖分が多量に入った飲料ではなく、塩分、カリウムが最も効率的に腸から吸収される濃度で含まれた経口補水液を飲むことがおすすめである。
 実は、巷で噂になっている「経口補水液を飲むと副反応がマシになる」という現象は、当てはまる場合があると思われる。副反応の時の頭痛、筋肉痛などの痛みや全身倦怠感は、ワクチンの影響のみならず、脱水を起こしているがゆえに増幅している可能性がある。
 脱水を起こすと、全身の血液量が減ってしまい、脳に巡る血流量も減ってしまう。脳の血流が減って、最後まで血流が残るのが脳の中でも“痛み”を感じる部分である。
 従って、脱水症になると、新たな痛みが生じたり、もともとあった痛みが増強されたりする。これは、我々麻酔科医の間では常識的で、手術後の痛みや慢性痛に対しても常に脱水症のケアを怠らない。
 もともと起こっている炎症箇所により激しい痛みを感じるのは脱水が原因である可能性も高い。症状の緩和のために脱水症に適している経口補水液が役に立つと思われる。

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